大阪桐蔭を春夏連覇に導いた“非エリート”西谷監督の明るさ ~ビジネスパーソンのための実践的言語学⑦

最近、説明や謝罪時の、違和感のある言葉遣いが話題になりがちだ。当コラムでは、実際の発言を例にとり、公私の場で失敗しない言葉の用い方を考える。ビジネスパーソンのための実践言語学講座、いざ開講!


「いい選手に恵まれた。私は体重が増えただけ」ーーー大阪桐蔭高校野球部 西谷浩一監督

若者を育て、チームを引っ張る。そんなリーダーの手本になりそうなのが夏の甲子園を制した大阪桐蔭高校の西谷浩一監督だ。春夏連覇で通算7回目の全国制覇で、監督個人としての最多記録を更新した。優勝後のコメントで「いい選手に恵まれた」というのは、型通りだが、そのあとに「私は体重が増えただけ」と付け加えるあたりに関西人らしいユーモアを感じる。

いまや全国屈指の強豪校であり、多数のプロを排出している大阪桐蔭。全国から有力選手が集まるのは間違いないが、それだけで勝てるほど高校野球は甘くない。毎年入学し卒業していく高校生を率い、負けたら終わりのトーナメントの世界で戦い続け、勝ち続けるのは、ある意味プロ野球で優勝するよりも難易度が高いといえるだろう。まだ精神的にも不安定な若者たちによるギリギリの戦い。だからこそ甲子園には“魔物が住む”といわれるように、考えられないようなミスが生まれたり、逆に想像以上に成長し活躍する選手が出てきたりするのだ。

そんな世界だからこそ、指揮官には明るさが求められるのではないだろうか。勝っているときはいい。だが思うような結果がでないとき、指揮官が悩んでいたら、選手は迷うだけ。かといって怒鳴り散らしたりすれば、ミレニアム世代の高校生は萎縮するだけだ。繊細に気を配りながら、どんなミスも笑い飛ばすくらいのキャラクターでないと高校生はついてこないだろう。

ベビースターラーメンが大好物で、体重は120キロを超える。甲子園のお膝元ともいえる兵庫県宝塚市出身の西谷監督は、野球の名門・報徳学園に進学。しかし3年生のときに下級生の不祥事で県大会の出場を辞退。進学した関西大学ではキャプテンでありながらレギュラーになれず、控え捕手として日の当たらない日々を送っている。こういった自身の苦労が現在のチーム作りにも反映されている。

「選手は9割不安と葛藤の中で毎日を過ごしている」
「部員全員をレギュラーにはできないが、全員をうまくすることはできる」
「打撃投手のように陰でチームを支える選手も、欠かせない大事な歯車。すべての歯車がかみ合えば、チームが塊になって大きな力が発揮できる」
「野球を通じて何を学べるかによって、そのチームの値打ちも決まる」

練習は自主性を重視し、監督は選手が実力を発揮できる環境を整える。ただ勝利だけを目指すなら、レギュラーだけに集中したほうが効率はいいだろうが、それではチーム全体の力が上がらない。全体の底上げをしながら、目先の勝利も目指す。西谷監督のチーム作りには、会社経営の参考になるところがかなり多く隠れていそうだ。


Text=星野三千雄

アマボクシング問題、鈴木長官の軽すぎる辞任勧告 ~ビジネスパーソンのための実践的言語学⑥


「護憲派は新興宗教」稲田朋美の自爆から学ぶこと ~ビジネスパーソンのための実践的言語学⑤