パリを席巻した「ジャポニスム2018」を知っているか?【増田事務局長インタビュー】

日仏友好160年の記念イベント「ジャポニスム2018:響きあう魂」が、2018年7月から開催され、すごい盛り上がりだという。日本文化の原点、縄文から若冲、琳派、最新メディアアート、マンガ、アニメまでパリ内外の100近くの会場で、さまざまな文化芸術を紹介。なぜ過去最大規模の海外文化事業が今、フランスを舞台に展開されているのか。事務局長の増田是人氏の言葉を聞こう。


かつて日本がそうだったように、今フランス人は日本に憧れ、訪日したいと思っている

日本の文化・伝統をどう保存し継承していくか――。

ここ数年来、官邸主導の有識者会議「『日本の美』総合プロジェクト懇談会」などで話し合われてきたテーマです。

その議論が形を成して2016年、オリンピック・パラリンピックへの機運を盛り上げるため、「日本博」のような催しをしようとの決定がなされます。

開催地は、パリがいいということとなりました。フランス人は最もよく日本文化を理解してくれているし、日本人もフランス文化が大好きであって、稀な二国間関係が成立しているからです。

2018年には晴れて「ジャポニスム2018」として実を結んだ催しは、質の高い「本物」ばかりを見せようという方針が掲げられました。能、歌舞伎といった日本文化の定番から、伊藤若冲の展示やチームラボの展覧会、2.5次元ミュージカルに初音ミクの公演。パリ郊外の公園内では五所川原(青森)のたちねぷたをはじめ、日本の代表的な祭りも催しました。総計約70に及ぶ企画が用意され、いずれも盛況と喝采を得ることができたのは、古いものも新しいものもレプリカなどで済ますことなく、真の日本文化を丸ごと持っていって見ていただくことを貫いたからだと思います。

企画立案から実施に至るまで、日仏共同のプロジェクトだったこともよかった。先方には日本文化のイメージがすでにあって、たとえば人気の高い浮世絵、特に葛飾北斎を見せてほしいといった意見は当然ありました。ですがこちらとしては、日本文化のさらなる多様性を示したいという意図もあり、若冲や琳派の作品などを見せることを推しました。互いの意見をぶつかり合わせて建設的な議論を重ね、豊かなプログラムを実現することができました。

どの催しも観客動員は非常に好調で、全体的に当初予測を上回っています。こうして見ると、フランスは長い「日本ブーム」に入っているのだとはっきり言えるかと思います。公式企画の集客が順調だっただけでなく、「ジャポニスム2018」の趣旨に賛同した有志がフランスで企画・実施した「参加企画」が200を超えて開催され、盛り上がっていました。

「ジャポニスム2018」を機に、来日したフランス人観光客数もかなりアップしており、インバウンド観光促進につながっています。

かつては日本人がフランスの地や文化に飽くなき憧れを抱いてきたものですが、現在ではフランス人が日本に憧れて「行ってみたい」と思ってくれるようになっているのです。

ジャポニスム2018のロゴマークは、日本の文化が堂々と海を渡って海外へ出ていくことを表現したもの。グラフィックデザイナーの服部一成氏が手掛けた。

フランスと日本は互いに惹かれ合っている関係だとも言えますね。両国はなぜこんなに親和性が高いのか。19世紀後半にも日本の芸術文化がフランスでブームとなり、「ジャポニスム」という言葉が生まれました。今も変わらず日本文化が愛されているのは、フランス人の美的感覚と日本人のそれには共通するところが多いからではないでしょうか。芸術作品から料理、ライフスタイル、さらには知的好奇心の高さに至るまで、響き合うポイントがたくさんあるのです。

そう考えると、日本のコンテンツ力は世界に誇るべきものだと改めて思います。フランスをはじめ世界中の人の心に訴えかけるものがあるのですから、これは強烈な外交力であり国力だと考えるべきでしょう。それだけ日本の文化はオリジナリティにあふれているのです。つねに自然とともにあり、すべてが善悪で二分できず、調和を求めていく日本人の考え方は、混迷している国際社会を包摂できるような価値観なのかもしれません。

「断絶」ではなくすべてを「つなぐ」役割が、日本には担えるんじゃないか。「ジャポニスム2018」の成功は、そんな期待まで抱かせるものとなりました。


Korehito Masuda
国際交流基金 ジャポニスム事務局長。1990年外務省入省。2003~'06年、在フランス日本国大使館一等書記官として従事したのち、在チュニジア日本国大使館一等書記官('06-'08)、在フランス日本国大使館一等書記官('08-'12)、在マリ日本国大使館参事官('12-'16)、外務省文化交流・海外広報課上席専門官('16-'17)を歴任し、2017年4月より現職。


Text=山内宏泰 Photograph=太田隆生