【才能の正体③】ビリギャル著者・坪田信貴が解説する、「才能」のマネジメント

『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』、通称「ビリギャル」で広く知られる坪田信貴さんの新著は『才能の正体』という。才能とはたしかによく使う言葉だし、「自分には才能がない……」などと、知らずその意味に囚われてしまうが、坪田さんは 「才能は、誰にでもある」と断言する。 才能とは、どういう存在なのか。同書の内容に則しながら、改めて聞いた。


いかに人を伸ばすか

『才能の正体』の第3章は「『才能』のマネジメント」と題される。

坪田さんは経営者向けや企業研修の場で人材育成の講演を数多く手がけるとともに、自身でも塾を経営し続けてきた。生徒、その親、そしてスタッフをいかに人として伸ばすかというテーマを、ずっと追求してきたのである。

「僕の塾では、経営者をはじめさまざまな方をお呼びして生徒へ向けてお話をしてもらう機会を以前から設けています。早いうちから、いわゆる一流と呼ばれる人と接したほうが子どもの成長にいいと思っているので。

内容はいつもたいへんおもしろく、聴いた人の満足度も高いのですが、親御さんからは複雑な気持ちを吐露されることもあります。いわく、塾に行かせているのは定期テストや受験でしっかり点を取ってほしいから。人生勉強もいいが勉強をさせてくれというのです。お金を払っている張本人の親御さんからすれば、試験の点数に対して支払いをしているという感覚なんですね。

でも僕は、目先の点数よりも大事なことがあると考えています。実際のところ、定期テストや受験の点数が伸びて難易度の高い大学へ行っても、それだけでは結局不満が出るのです。

子どもの母親と面談すると、『先生聞いてくださいよ』と、わが子のダメなところを滔々と述べる方がよくいらっしゃいます。家で全然勉強はしないしだらしがないし、やる気もとんと見せないし、と。聞いてほしいという気持ちはよくわかります。が、それではなんの発展性もありません。

僕はそこで言います。お母さんは本当にこの子のことをよく考えているのですね。それはわかったのですが、じゃあわが子にどうなってほしいのですか。すると、みなさん決まって最後には言います。

『この子に幸せになってほしい』

と。そうですか、では初対面の僕の前で子どものことを非難し続けるのは、わが子の幸せにつながりますか? そう問うと、たいていハッと何かに気づいた顔をしますね。

一方的にガミガミ言ってばかりだと、それで多少は点が上がっても将来、実家に寄り付かない子になるだけ。子どもはある程度の年齢になって独立して住むようになると、実家に帰らないパターンが多いではないですか。それはそうです、何をしてもいろいろ説教をされるようでは、足が遠のいてしまうのはしかたがない。

じゃあどうすればいいか。子どものことは信じて褒める。それでいいのです。社会に出たら、イヤでもいろんな場面で批判されます。せめて親子関係は、安心して帰れる場所であったほうがいい。そういう場所が確保されていれば、人は自然に伸びるものです。

『ビリギャル』の主人公・さやかちゃんのお母さんはその点、すごいです。さやかちゃんが小学校から帰ったとき、お母さんは第一声で必ず『安全に帰ってきてくれてありがとう』と言っていたのだそうです。今日もまた私の目の前にいてありがとうと、口に出して毎日言うのです。

なんでそんなに子どもを信じられるのかと聞いたことがあります。すると、『疑うほうがたいへんじゃないですか。イエスと言ってもノーと言っても疑わないといけなくなりますから。信じると決めてしまえば、そのほうが楽ですよ』

とのこと。そもそも、自分が失敗したとき、しまった、ダメだったな……というのは本人がいちばんわかっているもの。周りがさらに責めてもあまり意味はなく、逆に庇ってあげるくらいでちょうどいい。庇われるほど自分で深く反省しますからね」

【才能の正体④】に続く


『才能の正体』
坪田信貴
幻冬舎 ¥1,500+税


Nobutaka Tsubota
坪田塾塾長。心理学を駆使した学習法により、これまでに1300人以上の子どもたちを「子別指導」、多くの生徒の偏差値を球に上げてきた。一方で、起業家としての顔も持ち、人材育成、チームビルディングの能力を多くの企業から求められてマネージャー研修、新人研修を行うほか、テレビ、ラジオ、後援会等でも活躍中、『どんな人でも頭が良くなる 世界に一つだけの勉強法』など著書多数。



Text=山内宏泰 Photograph=太田隆生


【才能の正体①】