歓声もなく、拍手もなく……無観客で人気力士・炎鵬が感じたこと~ビジネスパーソンの言語学86

最近、説明や謝罪時の、違和感のある言葉遣いが話題になりがちだ。当コラムでは、実際の発言を例にとり、公私の場で失敗しない言葉の用い方を考える。ビジネスパーソンのための実践言語学講座86、いざ開講!  

「何のために戦うのか、今日は見つけられなかった」―――無観客開催となった大相撲春場所。初日の取り組みに敗れた炎鵬

大相撲史上初めて無観客で行なわれることになった春場所。新型コロナウイルスの感染対策のためのやむを得ない決断だったとはいえ、テレビで観戦していても大きな違和感があった。力士の息づかいや四股の音まで聞こえてくるのは興味深かったが、やはり歓声や拍手がないと、見ていても盛り上がらない。テレビ観戦している人間ですらそうなのだ。土俵の上で戦った力士たちが戸惑ったのも無理はない。

「いつもと違う雰囲気で闘争心が湧かなかった。何のために戦うのか、今日は見つけられなかった。当たり前のように感じていたけど、どれだけお客さんから力をいただいているかわかった」(炎鵬)

「神社に来たような感じ。神聖なる場所」(琴奨菊)

「頭の中でお客さんがいるイメージで、あの歓声を想像した」(朝乃山)

スポーツ界、とりわけ観客を集め興行を行うプロスポーツの世界は、新型コロナウイルス対策に頭を悩めている。プロ野球は開幕を延期し、Jリーグもリーグ戦の中断を続けている。春の風物詩、選抜高校野球も無観客で行う方針だ。このままの状態が続くとするならば、もし試合を行っても観客数は激減するだろう。選手たちは否応なく“いつもと違う”雰囲気のなかで戦うことになる。

ビジネスパーソンも同じだ。リモートワークになったり、子どもの休校にあわせて仕事を休まなければならなかったり、“いつもと違う”状況が続いているし、それがいつ終わるのかもわからない。だが、きっとそこにも発見があるはずだ。リモートワークをしてみて、会社を休んでみて、そこから何かを掴める人間は、どんな時代になっても生き残ることができるだろう。

初日に敗れた炎鵬は、自分の相撲を反省し、「何をしているんだろう」と自らに怒りを感じたという。そして2日目には開き直りの白星をあげた。

「自分は一日一番、土俵に命を懸けてやっている。やる以上は恥ずかしくない相撲を取れたら」

嘆いても愚痴ってもウイルスはいなくなってくれない。いまこそ、自分自身を、仕事への向き合い方を見直すいいチャンスなのかもしれない。

Text=星野三千雄