野田秀樹「アナログこそ"演劇のふるさと"。それは海外でも通用する」【ジャポニスム2018】

日仏友好160年の記念イベント「ジャポニスム2018:響きあう魂」が、2018年7月から開催され、すごい盛り上がりだったという。なかでも、パリ国立シャイヨー劇場で2018年9月に幕を開けた『贋作  桜の森の満開の下』は、「ジャポニスム2018」の目玉企画のひとつだった。作・演出・出演の野田秀樹氏にその反響と、昨今の活動の「核」となっているものを聞く。


アナログの手触りを強く打ち出す

パリで公演をするのは3回目なんですが、すべてシャイヨー劇場でやっているんです。同じアーティストと継続して仕事をしなければ、そのアーティストを本当に紹介したことにならないというのが、劇場の方針なんですね。

毎回まったくタイプの違った芝居をしているので、前の作品を気に入ってくださったパリのお客さんに今度は受け入れられるだろうかと、少々の不安を覚えていましたが、結果的には三たび受け入れてくれたみたいで、またパリで仕事ができそうなのでよかったです。

カーテンコールの時点で、たしかに割れんばかりの拍手をいただいたのですが、そういうのは半ば儀礼的なことも多いので、その時点では信用していない(笑)。私の顔はすこしこわばったままだったと思いますよ。

終演後、会場のロビーやパーティーの場で、実際に舞台を観た方々と直接に話をする機会が得られた。そこでナマの声を聞いて、大いに刺激を受けた、興奮している声や顔、コトバ、その反応を見て、ようやくうまくいったのだと確信しました。

シャイヨー劇場はダンス表現の殿堂なので、お客さんは「動き」に対してたいへん目が肥えており、高いレベルを求めます。私たちはダンサーとしてはプロではないけれど、人の身体の動きとしてお客さんを充分に楽しませ驚かせることができた。その点は満足しています。目の肥えた彼らにとっても、「見たことのない動き」だったようで、ひたすら新鮮に映ったようです。

パリのお客さんは総じてビジュアル的なものが好きですね。そのあたりは都市によって少々違いがあります。ロンドンなんかだと、言葉が強くなります。これはストレートプレーの芝居だなと見定めたら、あとは芝居の中の言葉がいいかどうかだけで判断してきます。

野田秀樹演出『贋作 桜の森の満開の下』 Photo:Nathalie Vu-Dinh

日本? う~ん、どちらの要素も均等に見ていこうというところかな。ややビジュアルのほうが反応は強めかな。

今回の公演では、ビジュアル的なインパクトもしっかりあったと言ってもらえましたし、何よりスピード感に圧倒されたとの声が多かった。その新しい息吹と桜が持つ日本の古典的なイメージとが相まって楽しめたと言われました。ああ、この演目を持って行ってよかったとつくづく感じ入りました。

デジタル全盛のこの時代に、紙やゴム、布など、人間が思うように動いてくれない素材を使い、アナログの手触りを強く打ち出した演出をしました。なかなかドキドキする挑発とも呼ぶべき挑戦でした。坂口安吾は「文学のふるさと」という言葉をつくりましたが、人が身体を使っておこなう「演劇のふるさと」は間違いなくアナログであって、それは海を越えても通用するのだと、はっきりと実感できたのも、自分にとって大きかったです。

「アナログからの反乱」とでもいうべき創作姿勢を、これからも貫いていきたいですね。


Hideki Noda
1955年長崎県生まれ。劇作家・演出家・役者。東京芸術劇場芸術監督。東京大学在学中に「劇団 夢の遊眠社」を結成し、数々の名作を生み出す。92年、劇団解散後、ロンドンに留学。帰国後の93年に演劇企画製作会社「NODA・MAP」を設立。次々と話題作を発表。演劇界の旗手として国内外、表現のジャンルを問わず、精力的な活動を展開する。


Text=山内宏泰 Photograph=太田隆生