本田圭佑の教育論「人生のプログラムを自分で見つけるための道づくりこそ教育だ」【本田思考。②】

サッカー選手兼監督兼投資家兼起業家・本田圭佑は、言葉を使うことで、自らをインスパイアし、 世界にサプライズを起こす。その脳にはどんな 言葉=「本田思考。」が隠されているだろうか。  

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僕にとっての一番の英雄は『三國志』の曹操孟徳だった

現在の本田圭佑ができあがるまでには、たくさんの方々の教育がありました。学校の先生、サッカーの指導者などのご指導、教育も大きかったと思いますが、やはり一番影響を受けたのは家族、特に父だったと思います。

父がいつも僕に言っていたのは、「2番はベッタと一緒やで」ということです。ベッタというのは、ビリという意味。常にナンバー1を目指さなければならないということは、小さなころから意識していました。

父の教育でありがたかったのは、さまざまな"英雄"の話をたくさんしてくれたことです。ローマ時代の英雄から戦国武将、さらにはチェ・ゲバラや田中角栄、アイルトン・セナやマイケル・ジャクソン、ジョン・レノンの時もありました。話の始まりは、いつも同じです。「こいつの何がカッコええかというとな……」。そこから彼らのさまざまな英雄的なエピソードが語られていきます。僕は心躍るような父の話がすごく好きでした。そして話の最後には必ず同じ言葉を投げかけられるのです。

「で、圭佑。お前は誰のようになりたいねん?」

答えさせることが目的ではありません。考えさせるための問いかけです。さまざまな英雄の生き様を教え、そして結論は僕自身にわたす。僕はいつもいろいろな英雄を思い浮かべながら、「自分はどんなふうに生きたいのか」を考えていました。

今思えば、これは人生のイメージトレーニングとしてとても優れた教育でした。誰を選んだとしても、英雄のように生きることになるわけです。僕は、小さい時から英雄になるように洗脳されていたのです(笑)。

2日の豪Aリーグ・ニューカッスル戦では、フル出場。試合は0−2で敗れたが、キャプテンマークを巻いてチームをまとめた。

ちなみに僕にとっての一番の英雄は、『三國志』の曹操孟徳でした。三國志マニアの間では、あまり人気のないキャラクターのようですが、武にも知にもたけた万能選手である彼に僕はカリスマを感じます。彼のようになりたい、でもなれない。自分とまったく違う性質の人物だから憧れるのかもしれません。

父の教育法の優れているところは、人生を長期的に考え、設計する考え方ができることです。どんな英雄も順風満帆な人生は歩んでいません。負けることもあれば、苦難の時期もある。でもそこから何かを学び、摑み、自分の道を突き進んでいく。

人生設計とは、自分自身が人生の台本を考えるようなもの。僕はいつも自分が「50歳になったら」、「70歳になったら」と長期的に物事を考えるようにしています。台本を書くのは自分だから、いつでも修正できる。そんなふうに考えれば、目の前に多少の苦労があっても、あまり気にならない。人生を長期的に考える習性が今の僕を形づくってくれていると思います。

教育に教科書や机は必要ありません。人生のプログラムを自分自身で見つけることができれば、人間は前に進める。もちろん大人になっても自分で学び続けることができるのです。

2017年、アフリカのウガンダを訪問した本田圭佑。世界中の子供にその目を向けている。

本田思考。③に続く

Composition=川上康介 Photograph=HONDA ESTILO



本田圭佑
本田圭佑
1986年大阪府生まれ。J リーグ名古屋グランパスエイトでプロデビュー。W杯に3大会連続で出場し、全大会でアシストと得点を記録。2020年2月、ブラジル1部ボタフォゴに入団。カンボジア代表の監督も兼務する。
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