ライアン小川と上原の共通点 球道 即(すなわち)仕事道 宮本慎也


ライアン小川と上原の共通点

新人での最多勝というのは、本当にすごいことだと思う。16勝(4敗)で今シーズンを終えたヤクルトの小川泰弘投手だ。ただ、チームメートとして見ていて、こいつはすでにプロのピッチャーだ、と感じたことは一度や二度ではなかった。1年目だが、チームのピッチャーでは誰よりもプロだった。みんな見習ったほうがいいと思っていたほどだ。
 何より印象的だったのは、ずっと野球のことを考えていたこと。だから、練習から違った。キャッチボールひとつとっても、ちゃんと意味を持たせて取り組む。ランニングも、チームから与えられたものだけではなく、自分で考えて量を調整していた。
 もちろん、アマチュアで積み重ねてきた経験と力もそれなりにあったのだとは思う。だが、最初にこれはちょっと明らかに違うぞ、と思ったのは、春先にポンポンと勝ったあとのことである。
「夏は強いのか」と尋ねてみると、こんな答えが返ってきたのだ。「あまり強くないので、不安です」と。続けて「プロは、けっこうしんどいだろう」と尋ねてみたら、「はい」と素直に言う。新人でいきなりポンポンと勝ったりすると、勘違いしてしまうものだ。ところが、「しんどいです。だから夏場が心配です」と言うのである。ああ、これは夏場もバテることはないな、と思った。わかっていれば、準備をするからだ。案の定、夏場も調子は落ちなかった。

野球のことだけを考えていれば、自分のやるべきことがわかる。あとで担当スカウトに聞いた話がある。スカウトが見に来ると、張り切って練習する選手がいる。だから、スカウトは次にはこっそり見に行く。そうやって選手を見抜いていくわけだが、小川投手はいつ行っても一切変わらなかったという。ブレることなく、やるべきことをやっていた。だから、活躍ができるのだ。
 身体が小さいだけに、故障が出ないかということだけが心配だが、そんなことは自分でよくわかっていると思う。僕が彼に言ったのは、好成績を続けること。3年から5年、成績を残せば、周りが認めてくれる。そうすることで、初めてエースになれる。


 新人で最多勝といえば、レッドソックスの上原浩治投手もそうだった。彼も野球だけを考えている素晴らしいピッチャーだった。あれだけの記録を日本で作っただけに、自分のスタイルはこういうものだ、とこだわってもおかしくないところだが、彼は違う。
「あかんのやったら、次はこれやろう、これやったろう」という貪欲さがあるのだ。だからこそ、あの活躍がある。
 引退が決まったあと、電話をくれてこう言っていた。「僕、最近の真っ直ぐ、めちゃいいんですよ。もう一回、対戦したかったなぁ」。なんとも彼らしいコメントだと思った。

Composition=上阪 徹 Illustration=きたざわけんじ
*本記事の内容は13年11月取材のものに基づきます。価格、商品の有無などは時期により異なりますので予めご了承下さい