【小山薫堂×小池アミイゴ】羽田空港で見たあの言葉の意味は? 旅する日本語⑪「寸景」

今から飛行機に乗ろうと、羽田空港の出発チェックインロビーで頭上を見上げると、 壁面に巨大なアートギャラリーが広がっているのに気づくはず。それは、旅と日本語をテーマにした「旅する日本語」展。放送作家・脚本家の小山薫堂さんが耳慣れないけれど美しい日本語をもとに、旅にまつわる小さな物語を執筆し、 イラストレーターの小池アミイゴさんが絵画を描いたアートプロジェクトだ。このシリーズは、ふたりが作品に込めた想いを綴ったアナザーストーリー全11集。


寸景

カメラのことは全部
祖父から教わった。
初めて祖父と長崎を旅したあの日、
観光地の写真は一枚も無くて
初めから終わりまで
猫の写真ばかり。
ピントを合わせる練習は
猫の髭が一番なんだよ・・・
と教えてくれた
祖父が写っていない
祖父との思い出写真。

【すんけい】
日常生活に見える風景、人物の姿態などを撮った写真。


Kundo's Another Story
昔、どのカメラを買えばいいか迷っていた時に、友人が「いいカメラの見分け方は、猫のヒゲを撮るといいんだよ。猫のヒゲが綺麗に鮮明に写るほどいいカメラなんだ」と教えてくれました。それから、猫を見るとヒゲにピントを合わせる習慣がつきました。

カメラのことは全部祖父から教わったというのも実話で、ピントの合わせ方は友人が教えてくれた。この2つのエピソードを合体させました。

寸景 (=日常風景に見える風景を撮った写真)という言葉を見て、猫のことが思い浮かびました。旅先で猫というテーマから、初めて旅した長崎を思い出しました。長崎は階段が多い街。でも、文章のどこにも階段とは書かれていないのに、アミイゴさんが階段をちゃんと描いてくれたので、すごく嬉しかったんです。


Amigo's Another Story
猫というのは、猫を愛する人の分だけ「深い思い入れ」があるもので、どう描いても答えに至らない……。

妙に可愛くなってしまって、それを消してまた描くなんてことを繰り返すなか、「ピントを合わせる練習」というストーリーを受け、猫よりカメラを意識して描いてみたら、目力の強い猫になりました。

長崎で撮影した写真をもとに、ヨーロッパを意識した絵作りを意識しつつ、横浜の外人墓地で出会った猫ちゃんをモデルにしています。


旅する日本語展 2018
国内線第1旅客ターミナル2階南北出発チェックインロビーにて「11」の日本語をテーマにした放送作家・脚本家の小山薫堂による旅の物語と、イラストレーターの小池アミイゴが色鮮やかな絵画を展示中(2019年の3月31日まで)。旅の物語と写真を全国から募集する「旅する日本語投稿キャンペーン」も、7月2日から開始予定。詳しくは公式HPまで。
https://event.tokyo-airport-bldg.co.jp/tabisuru/

Text=加藤久美子(ゲーテWEB編集部)

小山薫堂
小山薫堂
放送作家、脚本家。1964年熊本県生まれ。『料理の鉄人』など多くのTV番組を企画。脚本を手がけた映画『おくりびと』では、アカデミー賞外国語映画賞受賞。名レストランの経営手腕にも注目が集まる。
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