強すぎるテニス界の"老害"たちが若手の壁となり見本となる~ビジネスパーソンの言語学81

最近、説明や謝罪時の、違和感のある言葉遣いが話題になりがちだ。当コラムでは、実際の発言を例にとり、公私の場で失敗しない言葉の用い方を考える。ビジネスパーソンのための実践言語学講座81、いざ開講!   


「ナダル、フェデラー、そして僕がそれ(世代交代)をなんとか阻止しようと頑張っているんだ」―――全豪オープン男子シングルスで2年連続8度目の優勝を果たしたノバク・ジョコビッチ
  

この2年間、テニスのグランドスラムでは、33歳のラファエル・ナダル、38歳のロジャー・フェデラー、32歳のノバク・ジョコビッチの3選手、いわゆるBIG3しか優勝していない。過去12年間を振り返っても48大会中、3選手が40大会を制覇。2020年の幕開けとなる全豪オープンでもナダルを破って決勝に勝ち上がってきた26歳のドミニク・ティエムに苦しみながらも勝利したジョコビッチが全豪の通算勝利数を8までのばした。

「ティエムはベストプレーヤーの1人だとここ数年感じていた。彼はもはや次世代ではない。ダニール・メドベージェフもそうだ。彼も実力があり、もうすぐグランドスラムを手にするぞというところまで来ている。近い将来、誰かがやり遂げるだろう」

優勝後のインタビューで、いつものように敗者をたたえたジョコビッチ。だが、そのあとにこう続けた。

「しかし、ラファエル・ナダル、ロジャー・フェデラー、そして僕がそれをなんとか阻止しようと頑張っているんだ」

激闘の末、初のビッグタイトルを逃したティエムも栄冠がすぐ目の前まできている手応えは感じている。

「必要なのはほんの少しの幸運と、いろいろな部分のディテールだ」

「第4セットのあのブレークポイントを取れていれば、僕はここに勝者として座っていたかもしれない」

ほんの少しの「幸運とディテール」、たったひとつの「ブレークポイント」。確かに勝者と敗者をわけたのは小さな差だった。それを許さないのがBIG3だ。若手選手がグランドスラムで優勝するには少なくともBIG3のうち2選手に勝たなければならない。1試合なら幸運が味方し、小さな差を覆すこともできる可能性は小さくない。だが、それを2試合続けるのは至難の業だ。

明らかに年齢的なピークを過ぎているにもかかわらず、絶対的な強さでテニス界の頂点に立ち続けるBIG3。ジョコビッチのインタビューからは若手の壁になろうとする明確な意志が伝わってくる。準決勝でジョコビッチに敗れた38歳のフェデラーですら、「トレーニングのメニューもしっかり、きちんとこなせている。引退する予定はまったくない」と明言している。

若手はこの強すぎる“老害”たちにどう立ち向かうべきか。敗れたティエムが教えてくれた。

「3人はテニスを新たなレベルに引き上げてくれた。彼らがいるうちに四大大会初優勝をしたい」

そう壁がなくなるのを待っていても自分たちの時代はやってこない。自分で打ち破らなければならないのだ。超えなければならない壁があるのは、ありがたいことだ。その思いを持ち続けなければ老害を打破することはできないだろう。

Text=星野三千雄