地獄からの復活劇! 照ノ富士がスポーツの醍醐味を思い出させてくれた~ビジネスパーソンの言語学107

各界のトップランナーたちのコメントには、新時代をサバイブするヒントが隠れている。当コラムでは、ビジネスパーソンのための実践言語学講座と題して、注目の発言を独自に解釈していく。107回目、いざ開講!

「表彰式の時、土俵に上がったり降りたりするのはきつかった」ーーー大相撲7月場所で復活優勝を果たした照ノ富士が一夜明け会見にて

かつて横綱候補と呼ばれた照ノ富士が内臓疾患や両膝の負傷を乗り越え、見事に7月場所で5年ぶりの幕内優勝を果たした。だが、15日間の熱戦は、その体に大きなダメージを与えたようだ。

「(膝は)伸びなくなっていました。表彰式の時、土俵に上がったり降りたりするのはきつかった」

国技館の土俵の高さは、60センチ。その昇降すらつらいという状態で彼は戦っていたのだ。それでも照ノ富士は、諦めることなく相撲をとり続けた。

「(上位との対戦に)そこまでいったらやるしかないので。辛いのはなれているというか」

2015年に初の優勝を飾り、大関まで一気に駆け上がりながら、一時は番付を序二段まで落としていた。会社員にたとえるならば、社長候補として役員にまでなりながら、一気に平社員まで降格したようなものだ。普通の人間なら迷わず辞表を提出するだろう。膝の負傷と糖尿病で日常生活すらままならない状態だった照ノ富士も、何度も引退を口にしたという。だが、頑としてそれを受け入れない親方に励まされながら復活への道を歩み続けた。そんな「辛いのはなれている」男にとっては、コロナ禍で観客数を制限された場所という事実も関係なかった。

「自分は逆にどっちでもいいっていうか、土俵に上がったらお客さんがいてもいなくても全力を出す。(国技館に)来られなくても、テレビの前で見てくれると思ってましたから」

地獄から這い上がり、再び横綱候補となった力士の目は優勝を果たした翌日から次の場所に向けられていた。

「勢いに乗ったから勝っただけで、もうちょっと鍛えないと来場所は厳しいかなというのはあります」

「自分を信じてやってきたことをやるだけという。それだけですね。とりあえずは明後日からもう1回体を鍛えなおそうと思って。やれることを全力出していこうと思っています」

才能あふれる人間が落ちるところまで落ち、それでも努力を重ねて這い上がる。そんな隠れたストーリーに心を揺さぶられるのもスポーツの醍醐味だ。国技館で照ノ富士の優勝を見守った観客たちは、どれだけ大声で彼に声援を送りたかったことだろう。一日でも早く、何の心配もなくアスリートを応援できる日が来ることを誰もが願っている。


Text=星野三千雄