世界のコンクールで賞を獲った女性醸造家が語る日本ワイン。「山梨は世界が認めた産地です」

海外でも年々その評価が高まる日本のワイン。手がけた甲州ワインが世界最大級のコンクール「Decanter World Wine Awards」で4年連続金賞を受賞。さらにカテゴリー最優秀賞という名誉を得たのが、グレイスワイン栽培醸造責任者の三澤彩奈さんだ。世界が認めた醸造家は日本ワインの可能性についてこう語る。

日本人らしいワイン造りを追求していく

「受賞した“甲州”は日本固有のブドウ品種。アルコールは低めで味も繊細です。甲州が認められてきたのは、日本ワインのオリジナリティに世界が注目している証だと思います」

薄いピンク色に染まった収穫前の”甲州”。2010年には国際ブドウ・ワイン機構(OIV)に、日本のブドウで初めて品種登録された。

ボルドーを始め海外のワイン生産地で経験を積んだ三澤さん。その経験から、改めて日本人のまじめさや手先の器用さが世界に誇れるものだと感じたそう。

「日本では、収穫時のブドウに葉っぱが混じっていたり、手荒に投げ入れたりすることはありません。だから、海外の友人が日本で私たちの収穫を見て『ひと粒ひと粒摘む貴腐ワインみたいな収穫だ! 』とびっくりする。でもそのぐらいの丁寧さは日本では当たり前なんです」

さらに感じたのが、日本人が持つ自然観の特異性だ。

「ワインの味の80%はブドウの出来で決まるといわれています。だから、海外だと自然を支配しようと考える。でも日本人って自然を畏怖し、自然の恵みを敬う気持ちがありますよね。結果的にそれは、穏やかで控えめな日本ワインの個性に表れている気がします」

栽培技術向上のため自社農園比率を上げるなど、課題ももちろん多いという三澤さん。

「Decanter World Wine Awards」で金賞を受賞した「キュヴェ三澤 明野甲州2016」(左)。フラッグシップワイン「キュヴェ三澤」(中・右)は自社農場「三澤農場」のブドウを100%使用。価格はすべてオープン価格。

「山梨はワイン産地の地理的表示(GI)を認められましたが、ボルドーやブルゴーニュのように“産地”として世界に認められていくことが必要だと思います。そのためには、ひとつのワイナリーだけが有名になっても意味がない。産地の生産者たちみんなが一心同体となって、協力することがとても大事。その意識を持ちながら、今後も高いクオリティのワインを追求していきたいと思います」

Ayana Misawa
グレイスワイン栽培醸造責任者。2006年ボルドー大学ワイン醸造学部卒業。ブルゴーニュでの研修を経て南アフリカ・ステレンボッシュ大学大学院へ留学。’07年に帰国後、4代目の父の下でグレイスワインの栽培醸造責任者に就任。

Text=牛丸由紀子 Photograph=太田隆生