ノーベル賞の本庶教授に学ぶ! 老害と呼ばれないための心構え ~実践的言語学⑬

最近、説明や謝罪時の、違和感のある言葉遣いが話題になりがちだ。当コラムでは、実際の発言を例にとり、公私の場で失敗しない言葉の用い方を考える。ビジネスパーソンのための実践言語学講座、いざ開講!


「真実を追究するのに厳しいのは当たり前。厳しくないと世界とは戦えない」ーーーノーベル医学生理学賞を受賞した本庶佑・京都大学特別教授

ノーベル賞受賞の記者会見で、「学生に厳しいと思われているようですが」という記者の問いかけに、「それがどうした」といわんばかりの回答をした本庶佑・京都大学特別教授。その発言には同意する。何かを成し遂げようと思ったら、ときには厳しさも必要だろう。

もし同じような発言を某アメフト部監督や某ボクシング協会会長などが行っていたら、どうだろうか。パワハラだとか老害だとか言われて総たたきにあっていたのではないだろうか。だが、本庶氏に対して、そんなことを言う人間はいない。同じくノーベル賞受賞者であるあの山中伸弥教授ですら、「会うたびに最敬礼したくなる」と語るほど、受賞以前から彼を尊敬する人はかなり多かったようだ。

未来の自分に対する警告として書くが、精神的な老いとはどんどん視野が狭くなり、自分しか見えなくなる、考えられなくなる状態ではないかと思う。自分の利益、自分の名誉、自分の過去の栄光。老害と呼ばれる人たちは、みな一様に「国のため」「会社のため」「若い人のため」と言いながら、その言動から「自分がいちばん大事」という心根が透けて見えるため、恐れられることはあっても尊敬されることは少ない。

76歳の本庶氏は会見でも「自分は幸運な人間」とさらっと片付け、自分以外のことについて多くの時間を割いて語った。

「今後この免疫療法がこれまで以上に多くのがん患者を救うことになるように、わたくし自身も、もうしばらく研究を続けたいと思います」

「基礎医学分野に関わる多くの研究者を勇気づけることになれば、わたしとしてはまさに望外の喜び」

「ゴルフ場に来るメンバーがある日突然やって来て、『自分は肺がんで、これが最後のラウンドだと思っていたのが、あんたの薬のおかげで良くなり、またゴルフできるんや』と聞いた。これ以上の幸せはない。それで十分だ」(ノーベル賞の受賞を待っていたかを問われ)

本庶氏の目は、人類すべてと未来に向けられている。視野の広さは、抜群だ。

そしてもうひとつ彼が老害といわれない理由は、研究に対する謙虚かつ真摯な姿勢だろう。

「簡単に信じない。ネイチャー、サイエンスに出ているものの9割はうそで、残るのは1割というふうにいっている。まず論文とか書いてあることを信じない。自分の目で確信できるまで、自分の頭で考えて納得いくまでやる」

時代が変われば、テクノロジーが変わり、テクノロジーが変われば常識が変わる。「自分の常識」「自分の哲学」を振りかざすことなく、手間ひまを惜しまず、自らの仕事に正面から向かい続ける。そんな上司や先輩がいたら、みな黙ってついていくはずだ。

少子高齢化が止まらない。企業においても定年の延長や定年制度の廃止などが議論されている。60歳を超えても、70歳を超えても、働き続けなければならない時代になりつつある。自らがその立場になったときに、老害と呼ばれるか否か。視野を広く保ち、そして謙虚に。76歳のノーベル賞学者の姿勢には学ぶべき点が多い。

第14回に続く

Text=星野三千雄 Photograph=朝日新聞社/Getty Images


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