全英女子優勝! 渋野日向子の笑顔が世界をホームに変えた ~ビジネスパーソンの言語学56

最近、説明や謝罪時の、違和感のある言葉遣いが話題になりがちだ。当コラムでは、実際の発言を例にとり、公私の場で失敗しない言葉の用い方を考える。ビジネスパーソンのための実践言語学講座56、いざ開講!


「18番のパット前もこれを入れたら優勝するのは、分かっていた。どういうガッツポーズをするか考えていた」―――全英女子オープンで日本勢42年ぶりのメジャー制覇を果たした渋野日向子プロ

新しいヒロインが誕生した。海外初挑戦ながら世界中の強豪が集まる全英女子オープンで見事優勝を果たした20歳の渋野日向子。昨年プロになったばかりの新星が日本勢では42年ぶりにメジャーを制覇。その強さの理由は、42年前に快挙を遂げた樋口久子が「新人類」とまで評したメンタルの強さだろう。

グリーン上でも常に笑顔。ときには駄菓子を食べながら、カメラに向かってスマイル。“スマイルシンデレラ”というキャッチーなニックネームは、海外マスコミが名付けたものだ。決して“優等生”ではないそのコメントもスターの要素満載だ。

「18番のパット前もこれを入れたら優勝するのは、分かっていた。どういうガッツポーズをするか考えていた」

「(18番ホールでの大歓声について)誰に言ってるのかな~って思って、とりあえず手を振っておきました。うえ~いって」

「(スマイルシンデレラと呼ばれることについて)シンデレラは違うだろって……。スマイルなに? オバケでいいよっ」

プレー中も記者会見中も常にマイペース。メジャーだから海外だからと気後れしている様子はまるでない。歴史的快挙を遂げたことを素直に喜びつつも、今後の海外挑戦については、即座に否定した。

「海外意識、本当にないです。今回はサロンパス(5月のサロンパスカップ)で優勝して、出られるかも、ということだったので出てみたいと思った。(中略)移動もそうだし、まだ英語も話せない。絶対にそういうところでストレスになるし、日本でもっとレベルアップして、活躍したいのはこれからも変わらない」

「日本人のギャラリーさんって、グリーンに乗っただけで『うお~~!』って言ってくれるのがうれしい。まあ、ここもそうですけど。今回優勝してうれしかったですけど、日本が好きだなって改めて思いました」

ゴルフはもちろん、野球でもサッカーでも、多くの日本人アスリートは、日本での活躍を足がかりに世界に“挑戦”してきた。ずっと憧れてきたから、気負いもあるし、プレッシャーもある。しかし彼女はちがう。国内と同じような感覚で全英に挑戦し、まるでそこがホームであるかのように笑顔でプレーし、目の肥えた観客やマスコミをも味方につけた。

インターネットの登場で世界は驚くほどに狭くなった。物理的な移動時間はさほど変わらないかもしれないが、情報はほぼリアルタイムに伝わってくるし、コミュニケーションの手段にも事欠かない。それが当たり前という時代に生まれ育った渋野の世代にとっては、“世界”はそれほど遠いものではないのかもしれない。スポーツだけでなく、ビジネスやカルチャーでも同じように世界をホームとして戦える“新人類”が現れるのではないかと思うと、その活躍が楽しみになってくる。

Text=星野三千雄 Photograph=Getty Images