エンジェル投資家・島田 亨はどんな人に投資をするのか?(後編)

人を見る究極の「目利き」たる投資家に、はたして、どんな人に投資をしたくなるのか、を聞くシリーズ。今回はエンジェル投資家の島田亨さんに具体的にどんな起業家に投資をしているかを特別に教えてもらった。  

人の心を動かすセンスがあるかどうか

前回、ワクワクさせてもらえるかどうか。それが投資をしたくなるかどうかの基準だとお話しました。

だから事業計画の練度なんて、実はけっこうどうでもよかったりします。扱う分野や対象だって、いわば何だっていいんです。強いていうなら、サービスモデルの練度というか、考え抜かれているかどうかは指標になり得るでしょう。

製品やサービスを使う人に、どんな体験を提供できるのか。どのような感情を喚起できると考えているのか。そのあたりはチェックポイントになりますね。

例えば、僕も投資しているログバーは、翻訳専用のデバイス「ili」を出しています。翻訳といえば、いまはいつでも誰でもGoogle翻訳を使うことができる。機能だけを考えれば、たいていそれで事足りるかもしれない。

でも、「ili」を実際に使っているところを見ると、なんだかちょっとうらやましくて、ポケットに入れて旅行してみたいなと思わせる楽しさと遊び心がある。人の心を動かすしかけやセンスがあるかどうかが、事業の成功の秘訣となるんです。

ログバー
https://logbar.jp/ja/

人や事業に魅力的なストーリーがあればいい

人を惹きつけるストーリーがあるかどうかも、大切ですね。こちらも僕が投資している例ですが、ディライテッドの橋本真里子さんは、もともと長く受付業務をしてきました。新しい受付システムを開発して起業したいとの相談を受けたのですが、最初は受付業務がiPadの画面上に置き換わっただけで、このサービスならぜひ使いたいというエモーショナルなものが足りないように感じました。

率直にそう意見を伝えると、「宿題にします。解決したらまた見てください」と持ち帰り、すぐにまた改善したアイデアを持ってきてくれました。これならということで投資することに。そうしてiPad無人受付システム「RECEPTIONIST(レセプショニスト)」を展開する企業として、ディライテッドは生まれました。

橋本さんには起業にまつわる経験も実績もなかったけれど、受付の現場にしか得ることのできない気づきをたくさん持っていたし、それらを事業に発展させるアイデアと行動力が伴っていた。彼女が歩んできた道のりは、豊かなストーリーとして人の心に訴えかけるものがあったのです。

ディライテッド
https://www.d-lighted.jp/

ストーリーを聞いて楽しいなと思えたら、あとはやろうとしていることによほどの無理がないかぎり、お金を出してくれる理解者は出てくるものです。自身の言葉や行動で人をおもしろがらせることができるかどうか、ですね。これは起業にかぎらず商売全般のコツと言っていいことでしょうけれど。

他に現在、僕が投資をしている企業の一部を挙げておきます。いずれも僕をワクワクさせてくれた人たちのやっていることばかり。彼らと出会えたこと自体が財産だと、僕は心から思っています。

ビズリーチ
https://www.bizreach.jp/

ビースタイル
https://www.bstylegroup.co.jp/

モノミー
https://www.monomy.co/

タウンWiFi
https://townwifi.jp/

Voicy
https://voicy.jp/

Craftie
https://craftie.jp/

Aerial Lab Industries
https://ali.jp/

GVA TECH
gvatech.co.jp/

Cinnamon
http://cinnamon.is/

Toru Shimada
USEN-NEXT HOLDINGS 取締役副社長COO 1965年生まれ。リクルートを経て、 宇野康秀、鎌田和彦らとインテリジェンスを創業。楽天 代表取締役副社長、楽天野球団 代表取締役社長を歴任。2017年より現職。エンジェル投資家としても知られる。

Text=山内宏泰 Photograph=太田隆生