モドリッチのMFとしての意地 〜ビジネスパーソンの実践的言語学22

最近、説明や謝罪時の、違和感のある言葉遣いが話題になりがちだ。当コラムでは、実際の発言を例にとり、公私の場で失敗しない言葉の用い方を考える。ビジネスパーソンのための実践言語学講座、いざ開講!


「いま人々は何か違うものを求めているのかもしれない。今夜はサッカーの勝利だと思う」ーーーバロンドールを受賞したレアル・マドリードMFルカ・モドリッチ


2007年から、リオネル・メッシとクリスティアーノ・ロナウドの2人で独占してきたバロンドール(世界最優秀選手賞)をレアル・マドリードのMFルカ・モドリッチが獲得した。クラブでは史上初のチャンピオンズリーグ3連覇を成し遂げ、さらにワールドカップロシア大会では母国クロアチアを主将として準優勝に導き、大会MVPを獲得。文句なしの受賞と言っていいだろう。

今回の受賞が大きな意味を持つのは、メッシやクリスティアーノ・ロナウドが衰えてからの受賞ではないということだ。実際、クリスティアーノ・ロナウドはバロンドールの投票で2位、メッシは5位にランキング。ワールドカップでは結果が出なかったものの、2人がいまだ世界トップクラスのストライカーであることは疑いようもない事実だ。モドリッチがバロンドール受賞のコメントで「いま人々は何か違うものを求めているのかもしれない」と語ったのは、MFとしての意地、プライドのあらわれと言ってもいいだろう。

「チャビ、イニエスタ、スナイデルなど、最近数年間でバロンドールを勝ち取ることのできた選手たちがいた。(中略)僕はとても幸せだけど、これはおそらく賞に相応しかったものの、そうならなかった選手たちのものでもある」

今年のワールドカップロシア大会を振り返ると、もっとも印象的だったのは、やはりクロアチアの奮闘だった。強豪国相手に粘り強く戦い、泥臭く勝つ。攻撃のときも、守備のときも、その中心にはモドリッチがいて、チームメイトを鼓舞しながら走り続けていた。身長172センチ、体重65キロと小柄でありながら、存在感は抜群。どんなに優れたストライカーがいても、11人が力をあわせなければ勝利にたどり着けないというサッカーの面白さを教えてくれた。

どんな組織でもモドリッチのような存在がいるだろう。前線で華やかに活躍するプレイヤーに比べれば、どうしても地味に見える。それでも組織が長く、確実に存続していくためには、地道に汗をかく彼らのような存在を欠かすことができない。彼らがいるからこそ、点取り屋が輝けるのだ。

地味な仕事ばかりで腐りそうになることもあるかもしれない。それでも必死に汗をかいている姿は、必ず誰かが見ている。モドリッチのバロンドール獲得を喜ぶべきは、チャビ、イニエスタ、スナイデルだけではない。世界中のすべての組織で、汗をかき続けているすべての人間たちへの喝采といってもいい。

次回に続く

Text=星野三千雄 Photograph= Getty Images


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