【オフィス探訪】まるでハワイ! クリエイター集団ノースショアの楽園オフィス

2008年に石井龍氏が創業した広告制作会社のノースショア。広告のニーズに合わせて映像からグラフィックやWEB、UI・UXデザインなど、クリエイティブ領域の幅を広くし、業務を拡大。社員数は現在約150名(業務委託含む)まで増加、日本有数のクリエイター集団となった。ここはハワイ? と思わせるオフィスには、人を集め高め合う仕組みがあった。


なぜハワイがコンセプトなのか?

訪問者が通される9階のカフェスペース。壁やインテリア、天井に至るまでここはハワイ? と思う驚きの空間だ。

あらゆる媒体に対応した広告制作はもとより、企業のブランディングやサービス開発やコンサルティングなど活躍のフィールドを広げているノースショア。「世界一大きな波を起こして、世界中からトップサーファー(クリエイター)が来るような、唯一無二の場所にしたい」――そんな代表取締役社長の石井龍氏の思いから、ハワイ オアフ島北岸に位置するサーフポイントを社名にした。

「共に働く仲間がワクワクして会社に行きたくなる場所をつくり、モチベーションアップにつながるオフィスにしたい」。そう考えていた石井社長は、自身がサーフィンをライフワークにしていることもあって、オフィスのデザインコンセプトを「ハワイ」にした。ちなみにノースショアでは、クリエイターや社員は互いに働く人のことをサーファーと呼び、オフィスをビーチと呼んでいる。

そのオフィスは麻布十番にあり、各種クリエイターやコンサルティングプロデューサー、クリエイティブストラテジストなど、さまざまな職種の人が働いている。

サポート ディビジョン チームリーダー 人事 広報 門脇 麗佳氏

ノースショアのオフィスで最も驚かされるのは、8階の執務室エリア入口付近にある、ハワイの砂を実際に混ぜたという砂浜が広がるエリアだ。そこには、レストランのソファ席のようなミーティングスペースやハンモックがある。また、部屋の中央にはハワイで見かける移動販売車のようなフォルクスワーゲンのワゴンを模したスペースが設置されている。

「ワゴンには、『現状に満足せずに常に前進していこう』というメッセージも込められています。また、部屋の真ん中にあることで自然と人が集まるため、コミュニケーションのハブにしたいという思いもあります」と、サポート ディビジョン チームリーダーの門脇 麗佳さん。なによりも大切にしているのが「クリエイティブなイマジネーションが湧く場所」ということだ。

他にも執務エリアの奥には青く塗られたハワイの海をイメージしたエリアがあり、ホワイトボードとスタンディングテーブルでいつでも相談ができる。「腰を据えると長引いてしまう打ち合わせも、立ちながらだと効率的に進められます」と門脇さん。

相談のしやすい打合せエリア。壁はそのまま書き込めるホワイトボートになっている。ハワイの海をイメージし青で統一されている。

さらに9階には、最新設備や気分転換ができる場所が配されている。例えばリラックスしながら仕事ができるカフェスペースや、映像の試写にも利用する座り心地の良いソファを設置した応接室、世界基準の色校正用ライトを取り付けた校正室、大小さまざまな会議室など、パフォーマンスを上げるための工夫が施されている。

個性的なクリエイターを高め合う環境づくり

個性あるひとりひとりのクオリティーやパフォーマンスを上げるだけではなく、「チーム力を高める仕組み」にこそ、ノースショアが、広告業界で注目される理由がある。クリエイティブな領域で「個性」は重要だが、しばしば集団ではぶつかり合いマイナス要因を生み出しかねない。複数の媒体をまたぐクロスメディアのような大型のプロジェクトでは、さまざまな個性あるクリエイターが集まりチームとして取り組むことが欠かせない。そこで同社では、互いを理解し、チームを意識できる環境づくりに力を注いでいる。

執務エリアは仕切りがなく、開放的な印象を与える。明るい光が差し込むオフィスだ。

「8階の執務エリアは、ワンフロアで壁や間仕切りをなくし、お互いの顔を見やすくしています。また、職種によってエリアを分けるのではなく、席をあえて混在させています。例えば、映像プロデューサーの隣にWEBディレクターの席を設け、グラフィックに強いクリエイターの隣にコーダーの席を設けるなど職種の違う者同士が隣り合う配置です。そうすることで、映像の知識しかなかった人が自然とWEBの知見を得られたり、コーディングを踏まえたアウトプットができるようになったり、と個々のスキルアップにもつながるだけでなく、教え合い、影響し合うことで、自然とお互いを理解し、リスペクトし合えるチームを意識できるようになります」

個と個がぶつかるのではなく相乗効果を生む環境は刺激的であり、お互いをリスペクトできる環境である。それが才能豊かなクリエイターが集まる理由の一つなっているのだ。

リラックスしながらの仕事や気分転換に利用する人も多い9階のカフェスペースにはもう一つの機能がある。

「9階のカフェスペースは、コ・ワーキングスペースとして外部のクリエイターの方にも使っていただいています。この機能を持たせることで、社内外の交流が生まれ、次のプロジェクトでチームメンバーになるなど新しい才能との出合いにつながっています」

訪れた人にハワイだと思われる大きなポイントになるカフェスペース。気分転換や打合せに利用されている。

コ・ワーキングスペースには、レンタルスペースとして貸し出している個室や、小規模な会社が間借りできるスペースもある。個人では持つことの難しい最新設備や会議室も外部クリエイターは使用可能だ。スペースを開放することで個人の成長や新しいコラボレーションが生まれる場所になっているという。

ボトムアップの取り組みでビジョンを共有

ノースショアには、コミュニケーションを生むボトムアップによる取り組みも充実している。その一つが、月1回のペースで開催する全社ミーティングで行っている「Work × Waku(ワクワク)」だ。

「仕事のワーク(Work)と心が躍るワクワクを合わせたもので、考えていることや興味があることを自己アピールします。例えば、最新の映画から得た気付きを共有するなど、クリエイティブに関係していればなんでもよいことにしています。サーファーからの提案であり、サーファー全員をリスペクトしたいと採用したものですが、意外な一面が見られるなど、コミュニケーションのきっかけづくりになっています」

心理的・物理的な垣根を取り払ったワーキングスペースやこうした仕組みが、社内外を問わず才能豊かなクリエイターを呼び込み、その出力を最大化している。「個」以上の能力やアイデアを発揮する「チーム力」がノースショアの強みだ。

「世界で唯一のクリエイターが働く楽園をつくりたい」ーー経営理念のひとつの実現に向けて、ノースショアは働きたくなるオフィスと高め合うチームづくりに今後も取り組んでいくという。

northshoreInc.
2008年2月に創業。社名は、ハワイ オアフ島北岸に位置するサーフポイントに由来。30m級のほとんど「壁」とも言えるBig Waveに挑むサーファーが集まる聖地のごとく、コミュニケーション領域でのクリエイティブ及びコンテンツ開発で、No.1 Only1を目指す、クリエイティブブティックになることを事業理念に掲げている。あらゆるメディアに対応したクリエイティブ戦略立案、企画、制作を行うほか、コ・ワーキング事業や自社コンテンツ開発などへ、ビジネスの領域を広げている。
https://www.north-s.co.jp/

Text=稲垣 章(MGT) Photograph=松川智一


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