チェルシーのファンは世界で5.1億人! ビジネス統括が語るグローバル戦略<前編>

イングランド、プレミアリーグのビッグクラブ、チェルシーFCが日本で2試合のプレシーズンマッチを行うべく来日。そこでチェルシーFCのコマーシャルディレクターとしてビジネス部門を統括するクリス・タウンゼント氏に、チェルシーFCの現在、未来を聞いた。


チェルシーは単なるサッカークラブではない

昨季、プレミアリーグを3位でフィニッシュし、5年ぶり2度目のヨーロッパリーグ優勝を成し遂げたチェルシーFCが、日本で2試合のプレシーズンマッチを行った。

1試合目は昨季のJリーグチャンピオンである川崎フロンターレの前に0-1で敗れたものの、2試合目はFCバルセロナを若手のタミー・アブラハムらの活躍で2-1と勝利した。

プレシーズンの間に日本で試合を行うことについて、2017年4月からすべての広告事業やグローバルマーケティングシップ、チケッティングなどを統括するクリス・タウンゼントコマーシャルディレクターは「日本は我々にとって非常に重要なマーケット」と話す。

「こうやってプレシーズンに来日して日本で試合をするということは、パートナーである『横浜ゴム』の協力があってのことです。日本のチェルシーファンはこの4年ですごく拡大しております。もともと230万人と思われるファンが、4年の間で23%増加して280万人以上に増えています。『横浜ゴム』とのスポンサーシップに関しては非常に手応えを感じています」

現在、チェルシーFCでは全世界で5.1億人のファンを抱えていると算出している。そのうちの実に半数がアジア圏のファンだという。アジア圏ではプレミアリーグ自体の視聴者数も飛躍的に伸びており、タウンゼント氏は横浜ゴムと協力して「さらにチェルシーファンの拡大に努めていきたいと考えております」という考えを示した。

そのために重要視しているのがデジタルコンテンツの活用だ。チェルシーFCではデジタルプラットフォームでの発信力を強めるためにSNSの運用に多額の資金を投じているという。

「具体的な数字は社外秘なので言うことはできません(笑)。しかし、いま我々は9つの言語でSNSを運営しています。それをすべて総合するとフォロワーの数は1億人にのぼります。コンテンツを見て「いいね!」やシェア、リツイートというアクションを起こしてくれた数は月間で5000万エンゲージメントに達します。昨季、我々が運営するチェルシー公式チャンネルの年間視聴数は5.5億回でした。単なるサッカークラブではなく、世界中のファンに対してコンテンツを発信するエンターテインメント企業に成長・発展していこうと考えています」

試合の中継はもちろんのこと、選手のインタビューや密着ドキュメンタリーなど、趣向を凝らしたコンテンツを揃えることでユーザーやファンとの関係性を強めようとしている。

「もちろん収益を伸ばすことも大事ですが、我々のクラブの最大の目標はファンの拡大です。我々が目指すのは『グローバル・エンターテインメント・パブリッシャー』。そのためにはファンがもっと観たいと思っているコンテンツを随時提供していきたいと思っています。試合はもちろんのこと、選手に密着したインタビューなど、オフィシャルSNSでしか発信できないコンテンツをタイムリーな形でファンに届け、そうすることでファン層を拡大できると考えています。我々はファンにとって非常に近い存在になることがいちばん大事だと思っています」
 
今季のUEFAチャンピオンズリーグはベスト4のうち3チームがプレミアリーグのチームだった(リバプール、トットナム、マンチェスターC)。プレミアリーグへの人材と資金の流入は目覚ましい。強豪クラブが数多く揃うため競争力が高く、白熱した試合が毎節行われることがイングランド国外での放映権料を支えていることは間違いないだろう。

CLに出場するクラブの入場料収入や放映権収入、スポンサー収入などは上昇し、1000億円に届こうとする規模にまでふくれ上がっている。Jリーグがいまだ100億を目指す段階にあるなかで、世界はその10倍に達しようとしている。

チェルシーもその拡大路線を目指すクラブの一つではあるが、まずはファン層の拡大を第一の目標に据える。新監督にチェルシーのレジェンドであるフランク・ランパードを指名したことからも、そうしたクラブの戦略がうかがわれる。

「フランク・ランパードはチェルシーの英雄であり、ファンからも愛されている存在です。ファンに対してどのような伝え方やコミュニケーションを取ればいいのかわかっています。我々のチームと密に連携を取りながら、ファンが求めるものをランパードと一緒に届けられると思っています」

自らをサッカークラブというだけでなく、エンターテイメント産業のいち企業と位置づけるチェルシーFCの戦略から目が離せない。

後編に続く

Chris Townsend
2017年4月、チェルシーFCコマーシャルディレクターに就任。それ以前にはロロンドンオリンピック・パラリンピック委員会でコマーシャルディレクターを務め、大会のために約3360億円の資金を調達。その功績が認められて’13年に大英帝国勲章を受章。バッキンガム宮殿で女王陛下から勲章を授与される。


Text=田中 滋 Photograph=太田隆生