【大谷翔平から見る実践的行動学⑬】一時帰国が許されたなか大谷がアメリカにとどまる理由

幾多の試練を乗り越えながら、着実にスーパースターへの階段を上り続けているメジャーリーガー・大谷翔平。彼がアメリカ全土でも絶大なる人気を誇る理由は、その実力だけが要因ではない。ビジネスパーソンが見習うべき、大谷の実践的行動学とは? 日本ハム時代から"大谷番"として現場で取材するスポーツニッポン柳原直之記者が解き明かす。    

開幕までカリフォルニアの自宅で調整

新型コロナウイルス感染拡大の影響でメジャーリーグではキャンプ地、そして本拠地が閉鎖された。選手は練習場所の確保さえ困難に陥り、日本選手の中でもレイズ・筒香やブルージェイズ・山口のように一時帰国を余儀なくされた選手もいる。

そんななか、エンゼルス・大谷はツインズ・前田、マリナーズ・菊池らのように米国残留を選択した一人だ。オープン戦中止、そして開幕延期決定後も、キャンプ地のアリゾナ州テンピに留まった。この時点で周囲に「(キャンプ地に留まるか、自宅に戻るか)迷っている」と漏らしていたという。その後、日本への一時帰国も許可されながらも、本拠地があるカリフォルニア州アナハイム近郊の自宅に戻っている。

誤解なきよう願うが、メジャーリーグの日本選手の一時帰国、米国残留の判断について、どちらが良い、悪いはない。例えばツインズ・前田、マリナーズ・菊池などは家族とともに自宅を米国に構え、練習環境も問題ないと判断し、残留を選んでいる。では、なぜ、大谷は米国に留まり続けるのか。大谷も自宅を米国に構えるが、本拠地エンゼルススタジアムを使用できることが大きな理由に挙げられるだろう。同球場のあるカリフォルニア州では外出禁止措置が取られ、大半の選手は球場での練習を自粛。ただ、18年秋の右肘手術、昨秋の左膝手術から二刀流で復活を目指す大谷のように、医療的な必要性があれば球場での練習は可能。言わば"特例"で少なくとも5月中旬以降にずれ込んだ開幕へ向け、調整を重ねることができるのだ。

大谷は自炊できるので、食事面も大きな心配がない。現在、カリフォルニア州のレストランの営業はテイクアウトとデリバリーのみだが、昨秋の左膝手術後のリハビリ時は「Uber Eats(料理の配達アプリ)」をよく利用しており、たとえ自炊に飽きても問題なく活用できる。リハビリ当時は近くに住む水原一平通訳の父で和食料理人の英政さんが差し入れすることもあったといい、いざという時は心強いだろう。

2年ぶりの二刀流復活を目指すメジャー3年目。来るべきときに備え、大谷はカリフォルニアの太陽の下、力を蓄えることを選んだ。

Text=柳原 直之