ビジネスパーソン必須! 今さら聞けない日本ワインの新常識【辰巳琢郎】

生産者、産地、品種、醸造方法など、近年アップデートが進む日本ワイン。 ビジネスツールとしても、知っておくべきその魅力とは。日本のワインを愛する会の会長も務める俳優の辰巳琢郎さんに聞いた。


日本ワインを知ることは、日本の文化を知ること

「日本人にはもっと日本ワインを飲んでほしいですね。今、ブームと言われていますが、まだまだ……」と、辰巳琢郎さんはしみじみと言う。

ワイン会やミニコンサートもできる自身のサロン地下には、3000本以上ものワインが揃う。その半数以上は日本のもの。辰巳さんと日本ワインの本格的な出合いは、15年前。改めて向き合ったところ、すっかり惚れこんでしまったそう。

「日本ワインの魅力は外国のワインとは異なる日本ならではの風土を感じられるところですね。例えばチーズもそう。桜の葉や炭を使って日本らしさを表現したり。海外文化を取りこんで独自に発展させるというのが日本人はうまいんですよ。国土が南北に長いから気候や土壌に多様性があるし、甲州やマスカット・べーリーA、ヤマブドウといった日本ならではのブドウ品種も豊富。世界一美味しいブドウを生みだす国で、美味しいワインがつくれないわけがない(笑)」

また、ワインは"ハレ"のものと捉えられがちだが、日本ワインは日常の"ケ"の場合にこそ飲んでほしいと語る。

「ワイン単体では控えめな印象でも、食事に合わせると俄然、力を発揮するのも日本ワインの特徴のひとつ。昔ながらの一升瓶ワインでもいい、日本酒や焼酎みたいに、構えることなく地酒として気軽に楽しんでほしい。数万円数十万円のフランスワインを飲むのも素晴らしい体験ですが、二千円三千円の秀逸な自国のワインにふれることも大人の嗜みではないでしょうか。日本ワインを知ることは自国の文化を知ること。文学や芸術と同じです」

若手の生産者が増え、ブルゴーニュの名門ワイナリー当主も北海道に進出。海外のコンクールでも賞を獲るようになった日本ワイン。ワインツーリズムも活気づいてきた。特に大きなニュースが、昨年10月に公的なワインの表示に関するルール「果実酒等の製法品質表示基準」の施行だ。これまで原料が輸入されたものでも国産ワインと表示されていたが、今後は国産ブドウを100%使用したもののみ"日本ワイン"と表示できる(その他は"国内製造ワイン")。各地で原産地呼称制度に向けた取り組みも始まっている。

「これはいわば日本初のワイン法。やっと第一歩が踏みだせた。日本ワイン元年と言ってもいいでしょう。これからです。とにかく飲んでみてください」


辰巳さんに聞く、日本ワインの新常識Q&A

Q.日本ワインづくりの起源は?
A.「日本初のワイナリーは1870年に山梨県甲府市で誕生。しかし、最近の研究で、縄文時代にヤマブドウを含む数種類の果実から果実酒がつくられていたことがわかりました。また、1628年に小倉藩でワインをつくっていたという文書が見つかっているんです」

Q.日本ワインの注目産地は?
A.「山梨県、長野県、北海道が日本の三大産地といえます。なかでも官民ファンドの連携で開設した千曲川ワインアカデミーで次世代の育成を行う長野県、国内外から新規参画者が増えつつある北海道は、ダイナミックな変化や進化が起きており、特に目が離せません」

Q.日本ワインを代表する品種は?
A.「1400年前に渡来した"甲州"と、1927年に川上善兵衛が交配で生んだ"マスカット・ベーリーA "が2 大品種として知られています。最近は日本のアイデンティティをより表す品種として、ヤマブドウを交配したヤマソーヴィニヨンや小公子などもお薦めですね」

Q.友人に振る舞いたい日本ワインは?
A.「錦城ワイン」は甲州とマスカット・ベーリーA をブレンドしたロゼ。ヤマブドウと甲州を用いたロゼ・スパークリング「今様」は、2011年の震災を機に日本らしさを再考し、辰巳がプロデュースしたもの。実験番号をそのままワイン名にした「4131 ブラッククイーン2006」と「3986 マスカット・ベーリーA2007」(現在は商品名が変更されている)。1890年に日本のワインブドウの父、川上善兵衛が開いた岩の原葡萄園でつくられたものだ。

Takuro Tatsumi
1958年生まれ。俳優。日本のワインを愛する会 会長。BSフジとBSテレ東にてワイン番組を企画、出演し13年間で200軒以上の国内ワイナリーを紹介。近著『日本ワイン礼讃』は必読。


Text=西田 恵 Photograph=筒井義昭 Hair & Make-up=江川千恵子