10回の会食よりも1回のゴルフが仕事を円滑にする【UUUM鎌田和樹×城彰二対談まとめ】

いまや、子どもたちの将来の夢ランキングで必ず上位に入るのが、ユーチューバー。数年前までなら、「何それ?」と言われたものだが、もうすっかり職業名として市民権を得ている。2013年、動画クリエイターをマネジメントする会社、UUUM(ウーム)を立ち上げ、現在、時価総額900億円を超える企業へと成長させたのが、社長の鎌田和樹氏だ。じつは鎌田氏、ゴルフが大好きで、UUUM GOLFというYouTubeチャンネルを立ち上げているほど。何より「ゴルフはわずか5時間ほどで、相手の人となりがわかるところが素晴らしい」という。そこで今回、「ゲーテWEB」がオファーしたのが、実際にラウンドしながらの対談連載。記念すべき1人目のゲストとして、日本代表のエースストライカーとして大活躍した、元サッカー選手の城彰二氏をお招きした。 短期連載3回分をまとめてお届け! 


会議室でも会食でもない、ラウンドだから話せた成功哲学とは? 

――お二人は今回が初体面で、さらに取材スタッフも見守っていることから、やや緊張した空気のなかでのティーオフとなったが、やはり、その雰囲気を和ませてくれたのは、ゴルフの話題。自然と、プレーを始めたころの話から、対談はスタートしていった。

鎌田和樹氏(以下、鎌田):城さんは、いつごろからゴルフを始められたんですか。

城彰二氏(以下、城):最初にやったのは、ずいぶん前なんですが、3~4年くらい前から、月に3~4ラウンドするようになって、どっぷりとハマっていきましたね。

鎌田:僕もちょうど3年前ですね。あるコンペに呼ばれまして、大丈夫かなと思っていたんですが、案の定、120ぐらい叩いてしまって。情けないなあというところから、ゴルフをちゃんとやろうということで、けっこう真剣に始めました。仕事の面で言えば、やっぱり人間関係をつくるうえで、ゴルフは最高ですね。

城:人が見えますよね、ゴルフって。

鎌田:出ますね。ああ、この人はこういう癖があるんだな、とか。

城:絶対、出ます。おもしろいですよね。飲みに行くよりも、おもしろい。

鎌田:僕も、よく言うんです。「10回の打ち合わせよりも、1回の会食。10回の会食よりも、1回のゴルフ」と。ゴルフをして、その後、打ち合わせとかすると、「あのときのドライバー、飛んでましたね!」とか、そういう話になるじゃないですか。めちゃくちゃ仕事がしやすいんです。「はじめまして」って、ご飯を食べにいっても、なかなか盛り上がらない。

城:話の切り口として、ゴルフから始められますからね。僕も基本的に、食事会が好きじゃないんですよ。お互いに気を遣いますからね。気を遣われるのも嫌だし、自分も気を遣うのが嫌なので。地方に行っても、よく誘われるんですけど、極力、行かないようにしています。でも、なぜだかゴルフだと、すぐ行くんですよね。「行きましょうか!」って。ゴルフなら、そういう壁がなくなっちゃうんです。

鎌田:まったく一緒です。

城:プレーは気を遣わなくていいし、いろんな方と話せるのも、おもしろいですね。食事会になると、よくしゃべるのは隣の人くらいになってしまいますから。しかも、ゴルフはすべて、自分のせいじゃないですか。人のせいにできないから。サッカーは人のせいにできたりするんです(笑)。ボールがちょっとずれた、とか。実際は自分がコントロールミスをしたとしても、ちょっと逃げ道があったりする。だから、サッカー選手もみんな、ゴルフをやったほうがいいと思うんです。もっと違う働きができるんじゃないかな、と。

鎌田:選手同士のコミュニケーション能力もつきそうですよね。城さんは、もう引退されてどれくらいになられますか。

城:31歳のときなので、13年ですね。もう充分やったという感じでした。それに、同じサイクルで生活しているのが、つらく感じてもいたんです。サッカーはずっと周期が同じで、1~2月に合宿をして、そこからシーズンが始まり、試合をこなしてと、同じことの繰り返しです。やっぱり人間って、ずっと同じサイクルで何年もやっていると、新しいものを求めたくなりますよね。だったら、サッカー選手はもういいんじゃないかな、と。

鎌田:僕も、以前は会社に勤めていたわけですが、30歳手前で人生を考えたときに、一生サラリーマンなのもどうか、と思ってしまったんです。そんなときにちょうど、HIKAKINに出会いました。彼からユーチューブのことを聞いて、なんだか面白そうだね、サポートするよ、となって。それで最初は、彼個人の会社のサポートをしていたわけですが、彼のような人間が世の中いっぱいいるということに気づいて、じゃあアーティストのマネジメント会社みたいなものをつくろうかということになって、いまの会社をつくったんです。でももちろん、うまくいくなんて誰も思ってなかったですし、いまのような、「子どもが憧れる職業、ユーチューバー」といったことも、まったく思い描いてはいませんでした。当然それは世の中もそうで、すごく暑い日にいろいろなクライアントさんのところにスーツで行っても、「なんでWEB動画に金を払うんだよ」とか、ボロクソに言われてましたね。

城:そんな時期があったんですか。

鎌田:なかなか理解してもらえないので、ユーチューバーには僕がお金を払って、クライアントさんには、「成功したら次、お願いしますね」と名前だけ使わせてもらったりしていました。そうしていたら、たまたまうまくいったという感じです。最初に会社をつくったときは、15万円の家賃の事務所を借りるだけでも死にそうになっていましたから。チャレンジですね。本当に一歩間違ったら、倒産じゃないですけど、キャッシュが足りなくなったとかいったことは、いっぱいありました。やっと最近になって、ゴルフのユーチューブチャンネル、UUUM GOLFをやったり、ゴルフが好きだって言っていたら、いろんなお誘いをいただけるようになりましたけど。ゴルフが、いろんな人と繋いでくれている感じですね。

城:そう考えるとゴルフってすごいですね。本当に、いろんなものを引き寄せますね。

「現役時代は大きな博打を毎回しているという感じでした」(城氏)

――ホールを重ねるごとに打ち解けて、どんどん進んでいく、お二人の話。そんななかで鎌田氏がすぐに感じ取っていたのが、城氏の人当たりの良さだった。取材スタッフも、“イメージ”とのギャップを思っていたのか、鎌田氏が城氏に投げかける言葉に、みな頷いていた。 

鎌田:でも、城さんも大変だったでしょう? たとえば、プロ野球だったら年間130試合くらいありますが、Jリーグは数十試合。しかも、そのなかでフォワードは、少ないチャンスのなかで成果を求められるわけじゃないですか。

城:たぶん、性格に合っていたんでしょうね。外せば叩かれますし、どん底まで落とされます。でも、点を決めたら頂点を取れますし、そういった部分が、僕のなかでとても面白かったといいますか。自分を崖っぷちに追い込み、ギリギリのところまでいって、それで活躍すればすごいなと思っていたんですね。

鎌田:会社の経営も似ているかもしれません。成功した人たちを分析した、『ビジョナリーカンパニー』という有名な本があるんですけれど、それによると、成功した会社は、絶対的に会社が傾きそうなくらいの勝負をしているんだそうです。安定を求めていないんですね。そういう会社は、ものすごい勝負をして勝ち残ったから、いまがあると。安定を求めて、ちょっとずつ上がればいいというのは、そんなにうまくいかなくて、成功する人はみんな、自ずと勝負をしているんだそうです。

城:そういうことがあるんですね。安定を求めるというよりも、現役時代は大きな博打を毎回しているという感じでした。それが、面白かったんです。でも、考えてみれば、そこに懸けられる人たちが、プロのなかでもトップに行けるということなのかもしれないですね。みんな、安定を求めますから。プロにはなるけれど、変なことも言わないですし、コツコツと、これぐらいでいいと。ただ、そういう人は、上には飛び抜けないんでしょうね。

鎌田:でも、今日お会いしたら、年下の僕が言うのもなんですが、年を重ねたというか、大人になられたという感じがします。僕たちはやっぱり、テレビで見ていた若いころの城彰二という人を知っていますから。

城:やんちゃなイメージが強いですからね。実際、現役の頃は、全部のものが自分の手に入ると思っていましたし、自分のやることがすべてまかり通ると思っていました。それくらい、すごくつんけんしていましたし、自分というものを持ちすぎていました。でも、現役を降りた時点で、サッカー選手時代の考えを引きずるというのは、僕のなかではまったくありませんでした。昔の栄光を引きずるのは、逆に恥ずかしいと。それで、社会人1年生として、まず何をやらなければいけないかなと思ったときに出てきたのが、挨拶です。いろいろな人を見ていると、社会人はやっぱり、ちゃんと頭を下げて、「おはようございます」とか、「よろしくお願いします」と言っているなと。そこからでしたね、スタートは。たまたまテレビ局からオファーをいただいて、解説という仕事をすることになりましたが、やっぱり自分は話すことに関しては素人ですから、このままではまずいということで、アナウンス学校に通ったりもしました。でも、現役時代はやんちゃでしたね、本当に。

鎌田:勉強家ですね。

城:いや、知らないことを知りたいだけですよ。サッカーだけの人間になりたくないというか。昔からそうなんですが、サッカーはやるけれど、ほかのいろんなことも知りたいなという好奇心があって。なんだか、現役を退いて、やっと社会人になれたという感じです。

鎌田:それは、テレビの向こう側にはなかなか伝わらない部分ですね。

テクニック!? 発想力!? 本当に仕事ができる人間とは? 

――サッカー選手引退後、城氏がテレビでサッカー解説をしているのは、多くの人が知るところだが、じつは城氏はほかにも、いろいろな顔を持っている。その一つが、サッカーチームの運営。2017年から社会人チームの十勝FC(現・北海道十勝スカイアース)でスーパーバイザーに就任し、2019年3月からは同チームの統括ゼネラルマネージャー(以下GM)を務めている。 

鎌田和樹氏(以下、鎌田):僕は失礼ながら、城さんが北海道(室蘭市)出身ということを全然知りませんでした。

城彰二氏(以下、城):高校(鹿児島実業)時代の鹿児島のイメージが強いですよね。

鎌田:それで、その地元愛といいますか、北海道でチーム運営に携わられているんですよね。現役時代から、北海道というのは、ずっとおっしゃっていたんですか。

城:ずっと、思っていました。最後、現役を辞めるときは北海道で辞めたいという思いがあって、コンサドーレ札幌があるので、ちょっと打診してもみたんです。結局、叶いませんでしたが、何か北海道でできればというのは、ずっと思っていました。そうしたら、たまたまスカイアースのお話をいただいて。いま、スカイアースに関われていることが、本当に幸せですね。

鎌田:いまはどちらかというと、経営寄りのことをやられているんですか。

城:そうですね。僕はいま、統括GMという立場でいるのですが、この統括GMというのは本来、選手回りのことや補強ポイントなどを考えたりする役目です。でも、人がいないので、運営やスポンサー回りなど、すべてをやっている状況です。予算を組んだり、競技場とのやりとりをしたり、予約をしたり、もう、すべてですね。これまで選手しかしたことがなく、クラブ経営はもちろん初めてなので、おもしろいことはおもしろいですが、大変ですね。やっぱり、黒字化しなければいけないですし。

鎌田:黒字化するには、結局のところ、強いチームをつくらなければいけないということなんですよね。

城:そうですね、結果がともなわないと、いろいろなことが難しくなります。いまは社会人リーグなので、観客収入もありません。チケット販売ができませんから。

鎌田:チーム運営は、おもしろそうですが、めちゃくちゃ大変そうですよね。でも、僕もじつは、スポーツチームを持ちたいという思いがすごくあるんです。DeNAの方が言っていたのですが、夕方になると社員がいっせいに、横浜DeNAベイスターズの試合をチェックしはじめるらしいんです。「ベイスターズは、今日はどうかな?」と。それを聞いて、なんか、社員が一丸となってやれることって、すごくいいなと思って。

城:ぜひ、やってください! サッカーチームを(笑)。

「アンダー世代は世界で通用するが、そこから勝てないのはワケがある」(城氏)

――サッカーとビジネスがまったく異なるものであることは、言うまでもない。だがどちらも、みんなで一つの目標に向かって邁進していくという部分は、同じ。話をしていくうちに、いろいろな共通点が見つかってくる。

城:鎌田さんは、会社の経営で悩んだりはされないですか。

鎌田:僕、意外と悩まないんです。仕事は何も緊張しないですし、1000人や2000人の前でプレゼンをしろと言われても、何も気になりません。ティーショットのときのほうが、よっぽど緊張します(笑)。

城:それは、僕もそうですね(笑)。サッカーは、いっさい緊張しません。ワールドカップでも、まったく緊張しなかったですね。サッカーってゾーンに入ると、まったく緊張しないですし、ボールが止まって見えるんですよ。

鎌田:ゾーンに入るという感覚は、僕もちょっとあります。なんか無双モードに入って、なんでも閃くときとか、プレゼンをしていても自分で言っていることを、自分で客観的に見ているような感覚。「いま、ちょっと早く話しているな」とか、そんなことを思いながら、口では全然違うことを言っているとか。そんなモードに入っているときは、楽しいですね。

城:それと似たようなことを、サッカーでも言う選手がいます。試合中、フィールドを上から俯瞰で見ている感じになるのだそうです。そういえば僕も、ゴールに向かう光が見えるときがありました。トラップした瞬間に見えて、シュートを打てば、その軌道でスーッと入っちゃうんです。でもそれは、年に1回か2回でしたけどね。ない年も、もちろんありましたし。最初は高校生のときでした。全国高校サッカー選手権の準々決勝で、35mくらいのロングシュートを打ったんですが、ボールをコントロールして反対を向いた瞬間に、ボーンと光っているんですよ。なんだ、これ? と思ったら、もう自分はシュートを打っているんですね。それで打ってボールが離れた瞬間、入ったと思って、僕はもう走り出しているんですよ。手を挙げて。いや、まだでしょって感じですけどね(笑)。

鎌田:悩まないということでいえば、マネジメントやバランスをとることに関しては、ちょっと得意と言いますか、ステークホルダーがすごく多いなかで、ものごとを進めることに自信があるからということもあります。ユーチューブを見ているユーザーもいますし、ユーチューバーもそうですし、スポンサー企業さんもそうですし、社員の人もそう。この人たちの不平不満を、どううまくポジティブなことに変えていくか。それは慣れなのだと思いますが。

城:慣れるものなんですね。でも、やっぱりサッカーも同様に、マネジメントが大切なんですよね。テクニックといったものは、サッカー選手ならみんな、ある程度持っていますから、出る選手と出ない選手とか、チームをどうまとめていくかが重要なんです。チームがグッと一つになれば、たぶんどんなチームでも強くなると思います。ちょっと話は、ずれるかもしれませんが、いま僕は、スカイアースの仕事とは別に、イタリアのインテル・ミラノがやっている日本のサッカースクール、「インテルアカデミー・ジャパン」でスポーツディレクターを務めています。そこでは、本当に教え方が日本と全然違うんですよ。日本人はどうしてもテクニカルなことばかり教えるのですが、インテルの場合はいっさい教えずに、基本からスタートして、そして楽しんでやるというのが第一なんです。

鎌田:日本人のほうが精神論みたいなものを最初に叩き込むのかと思いきや、逆なんですね。

城:そうなんです。それでいま、インテルアカデミーでは日本の現状分析も出てきていて、ジュニア年代はテクニカルなことをすごくやるので、技術はすごいそうです。世界でも屈指だと。だから、U15からU17くらいまでは世界で通用します。でも、そこからなかなか勝っていけなくて、それはなぜかといったときに、やっぱりサッカーの本質を知らないから、というデータが出ているんです。

鎌田:テクニックはあるのに、点は取れないとか、勝ち方を知らないといったようなことですか。

城:そうですね。11人みんなでどう連動して、どういうパスワークをして、どうやって相手を崩していくか。ヨーロッパでは、そういった戦術面を小さいうちからすごくやっているわけです。

鎌田:なんだか、仕事とも似ていますね。テクニックがある人間が、仕事ができるかといえば、僕はちょっと違う気がするんです。小奇麗な資料をつくる人間はたくさんいますけど、本当にプレゼンがうまい人間は、資料は大きな問題じゃなかったりします。もちろんエンジニアとか、手に職みたいな仕事の場合は別ですけどね。以前、「UUUMのビジネスモデルは、誰でもできたでしょ」みたいなことをよく言われたんです。「俺も思いついてはいたけれど、うまくやったね」といった感じで。でも、思いつくことと、形にすることは、まったく別の問題ですし、できたか、できなかったかというのはテクニックじゃないと思うんです。これはどんな世界であっても、同じような答えに辿りつく気がするんですよね。

  「便利」「多様性」ではない! 人を動かすキーワードとは?

――城氏は社会人サッカーチーム、北海道十勝スカイアースの統括ゼネラルマネージャーとして、鎌田氏はUUUMの社長として、多くの若者たちと日々、接している。そこではやはり、世代間ギャップのようなビックリしてしまうことも、よくあるのだそうだ。

鎌田和樹氏(以下、鎌田):いまの若い子たちは、本当にお酒を飲まないんですよね。昔は、飲んで、上司にお酒を注ぐのが仕事みたいなところがありました。僕も、以前勤めていた会社は、飲めなければ仕事にならないというところでした。古き良き時代と言いますか。でも、それは案外、まったく意味のないことでもないと、僕は思っているんです。いま、若い子に、「どうしているの? 夜?」と聞いたら、「何もしてないです」と。将来が心配になります。

城彰二氏(以下、城):サッカーも一緒ですね。選手に、「ご飯、連れていってください」と言われたので、「わかった。今度ね」と言って、後日、電話をしたんです。「今日は何やっているの?」と聞いたら、「今日は何もないです」と言うから、「じゃ、ご飯行こうか」と言ったら、「いや、いいです」と返ってきて。「えっ?」となりますよね(笑)。「何かあるの?」と聞いたら、「今日はゲームをやるので」と。そういう感じなんです。驚きますよ。昔だったら、用事があったとしても、「はいっ」と。いまの子たちは、「何もないんですけど、行かない、行きたくない」と言います。そうなると、もう誘っちゃいけないのかなと思ってしまいますよね。

鎌田:会社で飲み会だと言っても、「これは強制ですか?」とか、聞かれたりします。社員旅行も、会社で費用を出すのに、「行かないです」と。「えっ?」ですよ(笑)。休んで家族サービスをするといったことも、わからなくはありません。でも、みんなで集まって、同じ釜の飯を食うから、仲良くなれて、仕事にもいい面が出てくるんじゃないかなと……思っていますけど、言わないようにしています(笑)。やっぱり、古いと思われるので。

城:おもしろいですね。鎌田さんは、まだお若いし、しかも最先端の会社の社長なのに、古風といいますか。

鎌田:上場している経営者は、意外と泥臭いんじゃないでしょうか。でも、そこにいる社員はドライだったりすることが多いのではないかなと。時代がけっこう難しいということですかね。多様性っていい言葉だと思うんです。ただ、ときに一点集中することも必要じゃないかと思うんですよね。たとえば、昔はテレビでも、誰もが同じ番組を見て、視聴率何十%とかいったことがありましたが、いまは違う番組もあって、ネットもあってという状況で、そんなことはなかなか起こりません。僕は、理屈は通らないかもしれないけれど、伝えなければいけないことはあると思っています。たとえるなら、絶対に先輩がご飯を奢るとかいったことですね。僕も、後輩のほうがお金を持っていても、先輩がご飯を奢るんだと教えてもらいましたし。でも、いまの子たちに、ビールのラベルの向きを上にして注げとか伝えようとしても、そもそも飲みませんから、教えられません。相当、いまの若い世代の人たちと接するのは、難しいと感じています。

 「一つのことを武器にして一生懸命やることが、人を感動させる」(城氏)

――鎌田氏は、「多様性」と同時に、現代を表すものとして、「便利」という単語も挙げていた。言い換えれば、世の中の物事や人間の言動が、どんどん効率的でスマートになってきているということだろう。でも、本当にその方向に進むだけでいいのだろうか。

城:なんでもかんでも整備されて、なんでもかんでもルールで、とやっていると、人間はあまり育たないんじゃないかなと、僕は思っているんです。もちろんルールだからいいのかもしれませんが、でも、そういうのは人を動かす力にならないんじゃないかなという気がして。常識外れのことをやれ、というわけではないですが、でも、そういうときがあったからこそ、いま笑って話せるみたいなこともあるんじゃないですかね。

鎌田:会社も、ルールがどんどん整備されていくので、もちろん、「無限に働け」なんてとても言えませんし、残業時間も管理しなければいけません。でも、一方で僕は、若いときというのは、負荷をかけるしかないというか、それが特権でもあると思うんです。とことん時間を使えるのは、若いときだからこそだと。

城:たしかにそうですね。それに、なんだか人間味が少なくなってきている気もします。前に鎌田さんが、「仕事のできる、できないはテクニックじゃない」というお話をされましたが、僕たちのような昔のサッカー選手は下手くそで、技術もなかったですけど、一方で一生懸命でした。それに対して、いまの選手たちは技術があるし、本当にうまいんですよね。でも、どちらがより感動を与えられていたかといったら、僕たちだってそんなに負けてはいないと思うんですよ。とにかく、一つのことを武器にして、一生懸命やる。それが、人を感動させたりすることもできるのかなと。選手たちともよく話をするのですが、もちろん、いまの選手たちの言い分もありますし、「そう言われますけど、いまの時代は……」と言う選手もいますけど。

鎌田:いま、UUUMの若手社員は僕のことを神か何かだと思っているの? と思うことがあります(笑)。「鎌田さん、ファーストフード食べるんですか」みたいなことを言ってくるわけです。「いや、食べるよ」「牛丼チェーンとか行くんですか?」「いや、お前たちより絶対行っているよ」と。前にも言いましたが、15万円の家賃の事務所を借りるのも苦労していたような、昔の僕たちを知らずに、六本木ヒルズにある上場企業の今どきの会社と思って入ってきているわけです。それで、会社では毎週月曜日に朝会をやっているのですが、そういった社員が言うんです。「UUUMに入らせてもらった理由は、安定を求めたからです」といったようなことを。僕ら経営者は、「入る会社を間違っているな」と言っているんです。

城:会社が大きくなると、そういう思いのズレも出てくるんですね。

鎌田:やっぱり、組織がピラミッドになっていって、伝言ゲームになってしまいますからね。致し方ないといえば、致し方ないんですけど。でも、だからといって昔に戻りたいかといえば、いまの規模だからできることもありますし、「ないものねだりだね」と言うんですけどね。

城:時代も時代ですし、それに合わせながらも完成させなければいけないわけですよね。サッカー界も、昔の古い人たちが頭ごなしに言いながら、いまではそれが通用しないから、葛藤しています、みんな。「いや、違うんだよ、違うんだよ」と言いながら。でも、僕はたぶん、時代には波があると思っているんです。ファッションもそうですし、また昔と同じブームが来たりしますから。僕はそれが、人間のなかにもあると思っていて、どこかで「悔しい」とか「根性」とか、忘れかけてきたものがもう一回来るんじゃないかなという気がするんです。いや、来てほしいです。期待をしています。スポーツの世界、サッカーはとくに、いわば戦争ですから。海外に行って、前の人を倒すか倒さないか。そのときにそういう気持ちを持っていないと戦えませんから。

鎌田:ビジネスでいうと、2008年にリーマンショックがありましたが、じつはそれ以降、なんだかんだいって景気がとてもいいんですよ。ずっと。そんななかで、いまの若い子たちは本当に就職ができなかった苦しい時代などを知りません。でも、きっとどこかで景気の踊り場のようなものが来ると思っているんです。好景気は10年も続かないと言われているなかで、もう10年続いていますから。そのときに彼らが、"食いしばって、頑張れるかどうか"だと思うんですよね。


Shoji Jo
1975年北海道生まれ。元サッカー日本代表。‘98年フランスW杯メンバー。2006年、現役引退。’17年、現・北海道十勝スカイアースのスーパーバイザーに就任。’19年、北海道十勝スカイアースの統括ゼネラル・マネージャーに就任。

Kazuki Kamada
1983年東京都生まれ。19歳で大手通信会社入社。多岐にわたる分野で実績をあげ、2011年よりイー・モバイル一次代理店の責任者を務める。その後、HIKAKINとの出会いを経て、2013年、UUUMを立ち上げる。


Text=柴トシユキ Photograph=鈴木規仁