相手のポテンシャルを引き出すラファエル・ナダルの全力テニス~ビジネスパーソンの言語学61

最近、説明や謝罪時の、違和感のある言葉遣いが話題になりがちだ。当コラムでは、実際の発言を例にとり、公私の場で失敗しない言葉の用い方を考える。ビジネスパーソンのための実践言語学講座61、いざ開講!


「素晴らしい試合だった。素晴らしいストーリーだし、僕にとって、何もかもが素晴らしい夏だった」―――テニス全米オープンでラファエル・ナダルに敗れたダニール・メドベージェフ

いつまでテニス界は、ナダル、フェデラー、ジョコビッチのBIG3時代が続くのだろうか? 全米オープン決勝、フルセット4時間半を超える激闘を制したのは、33歳のラファエル・ナダル。彼はこの通算19回目のグランドスラム優勝を果たし、最多記録を持つライバル、ロジャー・フェデラーにあとひとつまで迫った。だが、この試合が盛り上がったのは、23歳のメドベージェフが驚異的なテニスで、ナダルをギリギリまで追い込んだからだ。2セットを先取され、誰もがナダルの優勝を確信したところからの反撃には、若者ならではの爆発力を感じ、新たな時代の到来を予見させるものがあった。

「勝利は見えていたかって? 確かにあと1セットだったし、4-5でブレークポイントを握ったからね。その一部始終はこれからもずっと忘れないだろうし、結果に対する悔しさは残るだろう。だけど同時に自分のプレーに満足もしているんだ。この夏全体、大会全体の出来にね」

メドベージェフのコメントはどこまでもポジティブ。恐らく彼自身がこの試合での自らの成長を感じることができたのだろう。

「素晴らしい試合だった。素晴らしいストーリーだし、僕にとって、何もかもが素晴らしい夏だった。一瞬一瞬が忘れられない思い出になった」

「今日のことは一生忘れない。たとえ70歳になってもね」

「今日は彼の方が上だった。それは認めなくちゃならない。だけど後悔はまったくない」

これまでマナー面で問題視されることのあったメドベージェフもすっかり優等生だ。ここまで言わせたのは、ナダルが対戦相手だったからこそだ。彼はどんな試合でも全力で泥臭く戦う。自らを出し切ることで、相手のポテンシャルも最大限に引き出す。だからナダルの試合はいつでも名勝負になるのだ。若手だろうが、レジェンドプレイヤーだろうが、常に全力。それがナダルという選手のテニスというスポーツに対するリスペクトなのだ。

どんな名コーチもナダルと試合をする以上の指導を行うことはできないだろう。「背中で見せる」という言葉があるが、ナダルは正面で向かい合い、ボールでメッセージを伝える。そのメッセージは、相手選手だけでなく、観ている私たちにも届く。だから彼の試合はいつでも魅力的だし、それを観ているだけで元気が湧いてくるのだ。

Text=星野三千雄 Photograph=Getty Images



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