アジア最強の格闘技ONEが日本上陸! 他の格闘技団体とは何が違うのか?<第1回>

3月31日。東京・両国国技館。この日、アジアを拠点とした世界最大の格闘技団体「ONE チャンピオンシップ」が「ONE: A NEW ERA -新時代- 」を開催。世界140か国約2000万人以上が毎回の大会開催に熱狂し、アジア各国では圧倒的な支持を集めてきた「ONE」がいよいよそのヴェールを脱ぐ。初の日本開催である両国大会を前に、ONEチャンピオンシップ・ジャパンの代表、秦アンディ英之氏にONEの理念。そして未来のビジョンを語ってもらった。


格闘技のグローバルスタンダードをつくる

「ONEは2011年に設立し、アジアを基盤に大きく成長してきた、世界最大のマーシャルアーツ団体です。アジアはGDP、人口、成長率など桁違いの数字を持ちながら、これまで欧米のように地域を横断するスポーツビジネスがありませんでした。5000年の歴史を持つアジア。その資源には武道という宝がありました。

世間では“総合格闘技”という言葉がありますが、ONEはアジア発祥である“各国の武道”を重んじています。世界的に見てもアジアは格闘技の本場です。日本なら空手、柔道、合気道。韓国ならテコンドー、タイのムエタイ、中国カンフー、ロシアのサンボなど。それらをひとつにするという意味を込められて“ONE”という団体の成り立ちがあります」

ONEチャンピオンシップ・ジャパン代表・秦アンディ英之氏。

総合格闘技の世界ではかつて日本のPRIDEが一世を風靡していた。現代においては最高峰と呼ばれるUFC。日本においても先日メイウェザーVS那須川天心のビッグマッチが行われたRIZINなどがある。アジアを基盤に成長を遂げてきた「ONEチャンピオンシップ」が、これら有名格闘技団体と違いがあるとすればそれは何なのだろうか。

「ONEは武道の精神を非常に重んじて成り立っている団体です。単純に相手を倒すだけではなく、試合前や終わった後の礼儀や相手へのリスペクト。そういった人間として大事な部分をわきまえ、尊重しているのが大きな特徴。“興業”と“スポーツ競技”という考え方の違いです。

真剣勝負であることは同じですし、どちらがいい悪いではない。興業はあくまでもストーリーがあって、そこにフィットする役者を集めていくもの。地域性をもってストーリーもルールも変動するとグローバルスタンダード化するのは難しいんです。

一方、誰もが同じルールと条件の下、ガチンコで闘うという競技性が優先されると、周囲の理解度も早く情熱も共有化されやすい。グローバルスタンダードであり、スポーツビジネスとして成立しやすいのです」

2011年に設立されたONEが短時間で、最高峰の舞台として整ってきたベースには、選手ありきの環境を徹底してきたことが大きいという。より繊細な階級制度、「水抜き」による減量の禁止など、選手ファーストであり不変の統一ルールを徹底した結果、純粋に戦える環境を求める選手が増えると同時に、すさまじいスピード感によって各地域の国民と情熱を共有し、圧倒的な成長率でアジア全土へと広がりを見せた。

「我々がミッションとしているのが、人々に希望をもたらし、国を発奮させるような“実在するヒーローを世界に放つ”ことでした。アジアでも日本のイチロー選手がメジャーリーグで活躍するなど、日本や、韓国、中国などの先進国を中心として、世界の競技にアジアの選手が進出するのも当たり前になってきましたが、東南アジアを中心とした国々にはまだ国を挙げたヒーローが存在していなかった。ONEはその需要に目をつけて、アジアと言う基盤の上に実在するヒーローを育て上げたということです。

ゆえに精神性というものが大事になります。チャンピオンになった選手がもたらす影響力というのはどの世界でも大きなもの。誠実・謙虚・名誉・尊厳・勇気・規律・慈悲など、アジアには格闘技と共に根付いている価値観があり、そういった要素をものすごく大事にしてきました。タイやフィリピン、シンガポールの実在するスーパーヒーローは、まさにONEチャンピオンシップが生んだ世界王者ですが、ONEは世界最大のヒーローを輩出している格闘技団体といっても過言ではありません」

民族が熱狂するスーパースターの誕生。それは戦後間もなくの我が国におけるプロレスラー力道山のような国を象徴する存在である。映画を見てもアジアからはブルース・リーであり、ジャッキー・チェン、ジェット・リーなどアジアの武道から多くの英雄を輩出しているが、同じように今日のフィリピンのエドワード・フォラヤン(3月31日青木真也と対戦)、ミャンマーのアウン・ラ・ンサン(同・長谷川賢と対戦)などONEから生まれたチャンピオンの中には、中央広場に銅像が建てられるまでの英雄となっている者もいる。彼らが外国の敵と戦う姿に、国民は否応なく熱狂した。

ミャンマーの英雄、アウン・ラ・ンサン。ミャンマー国内でのONEチャンピオンシップの最高視聴率は87%を記録した。

「実在するスーパーヒーローを育てる。夢と感動を与える人材をしっかりつくり上げる。そのためにも、誠実 INTEGRITY、謙虚 HUMILITY、名誉 HONOR、尊厳 RESPECT、勇気 COURAGE、規律 DISCIPLINE、慈悲 COMPASSION。こういったキーワードをもとに、これはもう5000年の歴史から成り立っている格闘技の要素をうまく組み上げながら、実在するスーパーヒーローを育ててきたことが、それぞれの国民に受け入れられたというイメージですね」

いわば、ヒーロー製造団体。このONEには、草の根からプロの格闘家、そして国を代表するスーパーヒーローを作り出すまでの人材を育成する仕組み、“エコシステム”というものが存在しているという。

第2回に続く



Hideyuki Andy Hata
1972年生まれ。アメリカと日本を往復する少年時代を過ごしたのち、明治大学を卒業し、ソニーに入社。ソニーで働く傍らアメリカンフットボール選手として、名門アサヒビールシルバースターで活躍(リーグ優勝も経験)。米ソニー在籍時にはスポンサードしていた2010年サッカーW杯の広告戦略等にも携わった。その後、世界的なスポーツ専門の調査コンサルティング会社、ニールセンスポーツの北アジア代表兼ニールセンスポーツ ジャパンの代表を務める。2018年12月、ONEチャンピオンシップ・ジャパンの代表に就任。

Text=村瀬秀信 Photograph=太田隆生