不公平=不正? 昭和大医学部の入試優遇の問題点 ~ビジネスパーソンのための実践的言語学15

最近、説明や謝罪時の、違和感のある言葉遣いが話題になりがちだ。当コラムでは、実際の発言を例にとり、公私の場で失敗しない言葉の用い方を考える。ビジネスパーソンのための実践言語学講座、いざ開講!


「囲碁将棋の初段、学生会の会長、ボランティアなど50ほどある項目のひとつ」ーーー医学部入試で現役や1浪に加点する不正を行っていた昭和大学・小出良平学長

東京医科大学が女子受験生を減点していたことに端を発する医学部入試の不正問題。昭和大学医学部は、1次の学力試験を通過した受験生のうち、2次試験において現役生に10点、1浪生に5点を加点していたと発表。その理由については、こう説明している。

「よい医療人を育てたい意味から、大学内での経験上、現役、1浪生のほうがよい医学生になっていったので」(昭和大医学部長・小川良雄)

なるほどもっともらしい理由だ。冒頭で紹介した「囲碁将棋〜」の発言は、「不正と思わないか」と問われた小出学長のコメントだ。この日は、同大学卒業生の子女も受験で優遇していたこともあわせて発表したが、それに関しても「本学の精神が伝わっていて、入ってくれる可能性が高い」と説明。不正を行っていたことを発表し、それを謝罪する記者会見だったが、終始「不正だとは思わない」といわんばかりの表情を見せていたのが印象的だった。

受験の不公正=不正なのか。必ずしもそうは思わない。少子化の時代だ。私学である以上、経営努力が必要になる。それぞれが個性をアピールして、学生を集めるのは当然だといえる。「当大学は、現役受験生を優遇します」「OBの親族を優遇します」。昭和大学に問題があったとすれば、これらの“条件”を受験前に公表していなかったことだろう。「2浪生以上を優遇します」という大学があってもいいし、「女子受験生は有利です」という大学があってもいい。今後それぞれの大学は、そういった受験の条件を個性としてアピールしていけばいいのではないだろうか。堂々と「寄付金1,000万円以上納めた方は、無条件で合格とします」とうたう大学があってもいいと思う。

医学部であるなら、高い技術、知識、モラルを持ち、病気をちゃんと治してくれる医者を育ててくれればそれで十分だ。きっと昭和大学は、「囲碁将棋の初段、学生会の会長、ボランティアなど」という基準や卒業生の親族を優先するといった条件で学生を集めることで、質の高い医療を提供できると考えているのだろう。

ただ、少なくとも私は、これから医師にかかるときは、出身大学や受験の経緯を気にすることになるだろう。昭和大学出身の医師に自分の身体を任せたいとは思わない。同じように感じている人も多いのではないだろうか。

企業や組織に不祥事などがあった場合、多くは外部からの批判に対しての防御に徹底する。だが嘘で塗り固めた抗弁や開き直りは、内部に計り知れないダメージを与える。いまの霞が関を見れば、それは明らかだ。財務省や文科省のスキャンダルがどれほど彼らを疲弊させ、モチベーションを落とさせたか。大学が行った不公正のツケを払わなければならないのは、昭和大学を卒業した医師たちだ。昭和大学はそのことを理解した上で、会見を行っていただろうか。学長や医学部長の発言や表情からは、とてもそう思えなかった。

第16回に続く

※文中の大学名に誤りがあり、修正いたしました。関係者の皆様にはご迷惑をお掛けいたしました。謹んでお詫び申し上げます。2018年10月19日10時45分


Text=星野三千雄 Photograph=朝日新聞社/Getty Images


阪神・金本監督の責任問題をKPIから考えてみる