【大谷翔平から見る実践的行動学⑦】本当にできることしか具体的な目標を口にしない理由

幾多の試練を乗り越えながら、着実にスーパースターへの階段を上り続けているメジャーリーガー・大谷翔平。彼がアメリカ全土でも絶大なる人気を誇る理由は、その実力だけが要因ではない。ビジネスパーソンが見習うべき、大谷の実践的行動学とは? 日本ハム時代から"大谷番"として現場で取材するスポーツニッポン柳原直之記者が解き明かす。  


"根拠のない答えは口にしたくない"  

来年は●本塁打を打つ、●勝する――。シーズンオフのこの時期になると、来年に向け、具体的な数字の目標を公言する選手がいる。公言する理由は自らにプレッシャーをかける狙いがあれば、メディアやファンへのサービスなど様々な意味合いがあるだろう。

具体的な数字を明かさない選手も多い。大谷はその代表例で、日本時代を含めプロ7年目のシーズンを終えたが、これまで具体的な数字の目標はもちろん、体重などのサイズの変化に対しても、口を閉ざしてきた。目標を言わない理由は新聞やインターネット記事ですぐ"見出し"になるなどが考えられるが、それ以上に、強く感じるのは"根拠のない答えは口にしたくない"という大谷の強い信念だ。

例えば、2018年シーズン後の単独インタビュー。筆者が大谷に'19年の目標を問うと「量(打席数)が分からない。いつ復帰できるかも分からないし」という返答だった。'19年は右肘の手術明けでプロ入り後、初めて打者に専念するシーズンだった。「今年、(打順は)3、5(番)が多かったですけど、そこの地位を確立することが、まずやっぱり絶対的な量を確保することにつながる。量(打席数)が確保できれば、目標が立てられる」。復帰時期が明確ではなかったため、目標は立てようがないということだった。

'19年11月。2年ぶりに二刀流復活を目指す来季の目標については「まずは自分が望んでいるパフォーマンスが出せるかどうかが一番。結果よりもそこが一番、最初は大事かなと思います」と答えた。来季は昨秋の右肘手術から投手復帰1年目のシーズンとあってイニング数や球数が制限され、コンディショニングによっては登板間隔が大きく空く時もあるだろう。やはり、具体的な目標は立てられないようだった。

大谷は花巻東時代に「目標達成シート」の中心に「160キロ」と記し、見事に有言実行。日本ハム時代の'16年には栗山監督に「何でもいいから俺に手紙を書いて」と言われると、文章の一節に「今年、日本一になります」としたためた。同年、その通りに目標を実現。明確な目標を公言することは、大谷にとって大きな指針だった。

打者専念の今季、そして二刀流復活を目指す来季と2年連続で個人目標を立てられないシーズンが続く。チームの勝利はもちろんだが、シーズン中に具体的な個人目標を見いだせるのかどうか。それこそが大谷の成績を左右する大きな鍵になるだろう。

続く

Text=柳原直之 Photograph=Getty Images


>>シリーズ【大谷翔平の実践的行動学】

【関連記事】  
忖度なしのメディアへの対応  

水原通訳という相性抜群の"右腕"の存在

社会人になっても大谷が運転免許を取らない理由