【オフィス探訪】新しい事業を育て、パフォーマンスを最大限引き出すDeNAのオフィス

渋谷には、IT業界をリードする企業がオフィスを構えている。1999年にオークションサイト事業でスタートし、その後、ゲーム事業で成長を遂げ、現在はプロ野球球団を持つ、今や日本を代表する大手IT企業のDeNAもその一つだ。同社は他にも、Eコマース事業、ヘルスケア事業、オートモーティブ事業など多彩なジャンルに領域を広げている。ビジネスのシーズを育て、社員のパフォーマンスを最大限引き出すオフィスとは、どのようなスタイルなのか。


シーズが育まれるオフィス環境

駅前の大規模な再開発が進む渋谷。今秋開業のグーグル日本法人が入る渋谷ストリームをはじめ、サイバーエージェントが入る予定の渋谷スクランブルスクエアなどのビルの完成により、IT企業がさらに集中し、一層新たなビジネスやカルチャーの発信拠点として日本をけん引していくことが期待されている。この再開発を皮切った渋谷ヒカリエ(2012年誕生)の20階から26階にDeNAの本社がある。

「すぐ目の前が渋谷ストリームです」と広報担当の山田楽子氏が案内してくれたのが会議室だ。壁二面に大きく窓がとられているDeNAオフィスにおいて、最も渋谷の街並みが一望できる場所だ。渋谷ストリームが建つ南側の窓には、渋谷から代官山・恵比寿へと連なる渋谷のオフィスビルが広がり、東側の窓からは商業施設が軒を連ね、ネオンが輝き、ビル間を埋め尽くすように人が往来する。

経営企画本部企画統括部コーポレートコミュニケーション部コーポレート広報グループ 山田 楽子氏

DeNAも、その新しい風を起こす企業の一つである。近年では、中高生などの若年層を中心に流行しているライブ配信サービス「SHOWROOM」や、AIによる需要予測システムを導入予定の次世代タクシー配車アプリ「タクベル」、自宅で唾液を採取して返送するだけで遺伝子検査が可能な「MYCODE」など、話題の事業を数多く手掛けている。

「当社の主な事業領域としては、ゲーム事業、エンターテインメント事業、eコマース事業、ソーシャルLIVE事業・オートモーティブ事業、ヘルスケア事業、スポーツ事業です。各事業部単体で進めているものもあれば、事業部の垣根を越えて取り組んでいるプロジェクトもあり、プロジェクトの総数は数えきれないほどあります」と山田氏。

現在、このオフィスで働くスタッフの人数は、約2400人。一部のエリアではフリーアドレスを採用。グループ会社も入っており、階段を行き来して会議室やカフェなどの施設を利用している。事業の垣根を越えた多種多様なプロジェクトのシーズが日々生まれている。

「当社には、デスクにパーテーションがなく、社員同士はもちろんのこと社長の守安をはじめとして役員ともコミュニケーションが取りやすい環境です」と山田氏。ビジネスのシーズを育て、抜擢された人材のパフォーマンスをあげるためのさまざまな工夫がこのオフィスにはあるのだ。

左:階段を使おう!など社内の至る所に貼られているポスターも社員が作成したもの。右:独りになれる予約制の個室。サンセットを望む。

仕事もはかどる最先端カフェスペース

DeNAのオフィスを訪れて、渋谷の絶景とともに驚かされるのが、充実のカフェスペース「サクラカフェ」だ。ここでは、休憩や食事、作業、社内での打ち合わせなど、社員が各々の時間を過ごしている。さらに、サクラカフェでは社員からの要望も取り入れ、終日販売のフードメニューを日替わりで5種、朝食メニュー3種、ランチメニューを日替わりで3種を提供する他、生活雑貨、菓子類なども販売されている。サクラカフェ以外にも提携のお弁当会社が日替わりのお弁当を、30種類以上を4フロアで提供しており、毎日700食以上売れる人気ランチメニューになっている。

「カフェメニューや日々のお弁当販売の他、毎週水曜には社員のパフォーマンスアップを健康面からサポートするCHO(Chief Health Officer)室主導で美味しく健康的な『ウェルメシ弁当』が販売されています。専門家の協力を得て、食品添加物・着色料無添加、トランス脂肪酸や白砂糖の使用NGなど全33項目の『ウェルメシガイドライン』を設け、基準をクリアしたお弁当を販売するなど、社員の食に本気でこだわっています。 数量限定・事前予約制ですが、スタートから1年で600名以上の社員が利用しています。毎週予約のコアファンも多く、味やオペレーションなどについての生の声を、改善や新規商品開発に役立て、PDCAサイクルを繰り返してブラッシュアップを続けています」

サクラカフェ。仕事場として利用する人も多いため、一人で利用しやすい席を多く設けている。

マネジメント層が戦々恐々とする新施策

DeNAでは、月に一度社員アンケートを行っている。以前、全社員の4割が「能力発揮」と「やりがい」のどちらかに満足していないという結果が出たため、社員のパフォーマンスを最大限に引き出すためには“熱意を持って働ける環境”をつくることが重要だと考え、いくつかの施策を開始している。ユニークなのが、本人と本人が希望する行先の上長の意思が合致すれば異動が可能となる「シェイクハンズ」という仕組みだ。

「これは、他社から非常に驚かれます。戦力のメンバーを失わないために、マネジメントを改善したり、逆に自分の部署の魅力を積極的に情報発信するようになったりと、マネジメント側の意識が大きく変わりました」

ほかにも、興味がある他の事業を30%まで担うことができる「クロスジョブ制度」や、メンバーが上司に対してフィードバックをするマネージャー教育施策「360°フィードバック」などがある。

DeNAは来年、20年目を迎える。組織の硬直化を防ぎ、活性し続けられているのにはわけがある。半期に一度行う大規模な組織改編であり、この改編によって人を大胆に動かし、新たにつなげることで、人と人、人と事業の摩擦を起こし、それがエネルギーとなり、新しい事業や企画が次々と誕生。この組織改編に対応するためにも、オフィスはパーテーションなども可能な限り取り除いたシンプルなつくりになっているのだ。

社員のパフォーマンスを最大限に引き出すには何が必要か、このDeNAのオフィスを訪ねると、それが非常によくわかった。

DeNA
代表取締役社長兼CEO:守安 功
本社所在地:東京都渋谷区渋谷二丁目21番1号 渋谷ヒカリエ
設立:1999年3月
資本金:103億97百万円
従業員数:2,475名
事業内容:インターネットサービス事業(ゲーム・オートモーティブ・ヘルスケアほか)及びスポーツ事業
http://dena.com/jp/

Text=稲垣 章(MGT) Photograph=松川智一