「それ、会社病ですよ」再上場に反発の声。だがJALを責めるのは筋違い Vol.1


JALが再上場しましたが、それに対し、自民党やANAから反発の声が上がっています。もとより自由主義経済の日本では、国が個別企業の破綻に関与しないのが原則です。大手電機メーカーのシャープが苦境に陥っても、国は支援すべきではない。例外は、市場が何らかの深刻な機能不全を起こしていて、連鎖倒産の恐れがある場合。または国民生活に重篤な影響を及ぼす圧倒的な公共性を持つ場合です。
 本来、JALはいずれでもありません。ただ、資金がショートし、一瞬で国内外すべての運航が止まりかねない状況を公共的リスクと政治が判断した、限界的事案です。だから国の支援でANAなどとの公平な競争を歪曲する危険性について、十分に注意する必要があった。特に再生がうまく行くほど、問題は深刻になるからです。
 私もこの問題を早い段階からメディアなどで指摘し、企業再生支援機構の責任者の耳にも入れていました。しかし何の手も打たれませんでした。これは明らかに支援機構のガバナンス機能に問題があり、その責任は当時の首脳陣(うち1名は今でも現職)にあると言わざるをえません。
 私がかつてCOOを務めていた産業再生機構でも、似た問題が起きる可能性がありました。そこで、再生させたカネボウ化粧品が花王の傘下に入ったように、持っていた株式をまとめて入札にかけ、競争相手にも応札機会を与えたのです。本件では、国交省や公正取引委員会と早めに相談し、JALに何らかの競争上のハンディを負わせる透明なルールを作っておく方法もありました。

こんな無為無策を見ていると、国の金を使って再生している自覚がなかったと言われても仕方ありません。公的再生は、民間資金での再生とはワケが違うのです。
 もうひとつ、「インサイダー取引の疑い」と問題視されている民間出資者への増資についても、確かに透明性を欠いたと言わざるを得ません。
 増資そのものは、不測の事態に対する資本バッファー強化と理解できます。引き受け先探しに苦労したようですから、出資者にも何ら責任はない。しかしなぜ、割当企業が開示されなかったのか。また、既に再生中で企業価値が高まっていたのに、支援機構が国の金で引き受けた時と同じ株価で割り当てたのはなぜか。当時、説明責任は果たされませんでした。支援機構の首脳のひとりは「裁判所の許可を得ている」と言っていましたが、ここで問われているのは「納税者目線」からの透明性なのです。
 そもそもJALには、政治の関与で経営が歪められてきた歴史があります。それを国の金で再生するというのも皮肉ですが、再生したと見るや「“鶴”の恩返し」などと、赤字地方路線を飛ばさせる声が政治から上がっています。
 再上場についてJALを非難する声もありますが、完全な筋違いです。彼らは真っ当に職務を遂行したにすぎない。今後、国民が監視すべきは政治介入を再び許さないこと。そして、支援機構の側でそういう介入機会を作ってしまった責任の所在は誰にあるのかを明らかにすることです。


Text=上阪 徹 Illustration=村田篤司
*本記事の内容は12年9月取材のものに基づきます。価格、商品の有無などは時期により異なりますので予めご了承下さい