「それ、会社病ですよ。」企業側、株主ともに発展途上の企業統治 Vol.35


コーポレートガバナンスコードが導入されるなど、企業統治改革には、社会的な注目が集まっています。そんななか、今年の株主総会でちょっと驚くことがありました。
 私はオムロンの社外取締役を8年にわたって務めています。業績は好調で、増収増益が続いています。株価も上がり、ROEは10%を超えています。また、私自身、企業統治改革への強い意識を持っていましたから、オムロンでも取り組みを進めました。東京証券取引所の2014年の企業価値向上表彰では、大賞も受賞しています。
 ところが今年の株主総会において、ある議決権行使助言会社から、私に対して社外取締役としての不適格助言が出されたのです。最終的には9割の賛成を得て再任されましたが、かなりびっくりでした。
 もし、社外取締役として結果を出せていなかったなら、不適格も否めないでしょう。ところがオムロンの業績も株価も長期にわたり好調。ではなぜか? 理由は我が社のスタッフがオムロンのコンサルティングを行っているから。しかし、当社から見たその売上比率は0.1%足らず。オムロン側からはもっと微小です。極めて形式的な理由だけで不適格助言を出す、すなわち私が社外取締役でいることが、オムロンの企業価値向上にマイナスになるというご宣託……もし形式基準だけで助言をするなら高校生のアルバイトでもつとまる仕事です。

企業統治改革の議論はこれまで企業側の改革努力が議論の中心でした。株主の権利が無視されている、という声が強かったからです。しかし、企業側の努力が進めば、企業統治はうまくいくのかといえば、必ずしもそうではありません。同時に株主側のレベルも上がらなければいけない。
 そして助言会社然(しか)り。助言会社の間でも然るべき競争が起こって、実質の伴わない会社は淘汰されていくことになるでしょう。
 このように企業側の改革は、形はずいぶん整ってきましたが、まだやはり途上です。そしてこれから焦点になってくるのは、トップ指名をどうするか、という点です。
 日本で典型的なのは、今のトップが意中の人を選び、経営者OBにもおうかがいを立てて決めるパターン。OBまたはもうすぐOBになる人が実質的な決定権を持っている。
 OBは会社をよく知っています。だから、「座りがいい」とか「過去の実績」とか内部の論理の影響を受けすぎる。“ムラの調和の達人”を選びがちです。しかし、トップ人事で最も大切なことは、外敵と戦う最高司令官として有能か、ということです。
 この点、「OBガバナンス」にはやはり欠陥があります。しかもOBは会社の未来について責任を取れません。
 理想はオムロンのように社長指名委員会をつくり、そこで時間も手間もかけ、ガチに次期社長を決めることです。ところが、そんなことをやっている企業は非常に少ない。日本の上場企業ではせいぜい数%でしょう。今時、自民党総裁ですら前任者が後任を決めたりしないのに、経済界は政界よりも遅れているのです。
 次期社長指名権を失う程度で求心力がなくなるのではないかと恐怖を覚えるような人間は、そもそも社長の器ではありません。


Text=上阪 徹 Illustration=macchiro
*本記事の内容は15年7月取材のものに基づきます。価格、商品の有無などは時期により異なりますので予めご了承下さい。
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