LINE社長 出澤剛の描く未来 「音声インターフェースは、スマホ以上の大きなプラットフォームになりうる」

去る1月に行われた第8回のゲーテが選ぶビジネス大賞「シーバスリーガル ゴールドシグネチャー・アワード2018」。ゲーテ編集部は「ビジネスイノベーション ソーシャル部門」を受賞したLINE代表取締役社長CEOの出澤剛氏に独占インタビューを敢行! 今や世界で月間2億人が利用しているというLINE。人々の生活はスマホを中心に回っていると言っても過言ではないが、出澤氏はスマートスピーカーをはじめとした音声インターフェースの発展は、スマホを超えるプラットフォームになる可能性を秘めていると語る。

子供の時に思い描いていた未来の世界が、手を伸ばせば届くところにまできている。

まず、今回のゴールドシグネチャーアワードを受賞された感想をお聞かせください。

ビジネスと社会貢献、その両方の面を評価いただいたということで、大変嬉しく思っております。私たちは2012年からインターネットリテラシー啓発のために全国の学校を回り始め、子供たち、保護者、教職員の皆さんからの声を聞いたり、一緒に勉強したりということを続けています。また、LINEは’11年の震災をきっかけにして生まれたという経緯もあり、LINEを活用した防災・減災への取り組みなども行ってきました。

小中学校などを訪問して、具体的にはどのような活動をしているのでしょうか。

私たちは、インターネットとの上手な付き合い方やコミュニケーション方法について、子供たちが”自ら考える”ことができるように、教育工学や授業デザインを専門とする識者と共同で、情報モラル教育教材の開発を行っています。教材は、道徳的見地をベースに組み立てたもので、「自分と相手との違い」と「リアルとネットとの違い」の2つの違いを気づかせる内容で、学校を訪問した際には、この教材を使って授業をします。具体的には、クラスをいくつかグループに分けてカードを5枚配ります。そのカードには、「なかなか会話が終わらない」、「自分が一緒に写っている写真を公開される」、「すぐに返信がない」など、一定数の人間が嫌だと思うであろうことが書いてあり、それを子供たちひとりひとりに自分が嫌だと思う順でランキング付けをしてもらう。すると、嫌だと感じていることやその順番がみんな見事に違うんです。「人の価値観はそれぞれ違うんだ」ということに子供たちが気づくことで、友人とのより良いコミュニケーションやインターネットリテラシーを学んでいきます。

子供たちにインターネットリテラシーを教えていくのではなく、気づきの場を与え一緒に考えていく。それは従来の教育とはまた違う、新しい時代の流れを感じる教育法だと思います。

そうですね。講義ではなくてワークショップ形式にしてみんなで話し合っていく方が、たくさんの気づきが生まれる。大人たちが思う”これがいいだろう”というやり方を押し付けるのではなくて、今の時代に合ったいろいろな工夫を心がけています。また、こうした取り組みを通じて私たち自身も学ぶことが多々あります。

具体的にどういったことでしょうか。

以前、中学生・高校生を対象にした教材をマンガで作ったことがあったんです。子供たちがわかりやすいだろうと考えて。でも、実は今の学生ってこちらが思っているほどマンガを読んでいないみたいで、「マンガをどうやって読むのかわからない」という意見をもらって驚いたことがありました。その際は、マンガを初めて読む子供でも読みやすいように改善して教材を完成させましたが、スマホ世代である今の子供たちのコミュニケーション環境は、スマホ登場以前と比べて圧倒的な早さで変わっていきます。子供たちが受け取りやすいようなものを提供しなければいけないと思っていますし、私たちも常にアップデートしつつ啓発活動を行っています。

授賞式にてスピーチをする出澤氏。

2018年は金融系のサービスに力を入れていきたいとも仰っていました。今は誰もがスマホを持っているような時代ですけども、技術やテクノロジーが日進月歩で発展していくなかでスマホが生活の中心にあるという時代はこれからも続いていくと思いますか。

生活の中心というか、もう生活に溶けこんでいますよね。パソコンの時代だと一家に一台だったのが、今は老若男女問わず一人一台持ち歩いている。現在私たちが展開しているAIスピーカーは、まだまだ進歩のアーリーステージに過ぎません。これがさらに進むと部屋の電気も音声でON・OFFできるようになるし、冷蔵庫を開けてビールがなかったら、「ビール頼んでおいて」と言うだけで勝手にビールを発注してくれるとか、ありとあらゆるところに音声インターフェースが活用されるようになる。その裏側にはAIがいて、いろいろなことをサジェスチョン(提案)してくれるような世の中になっていくと思います。

「インターネット」という言葉自体も、もしかしたらなくなるかもしれませんね。

はい。そのくらい生活のなかに溶け込んでシームレスになる。私の子供を見ていると、スピーカーに話すことがもはや当たり前になっていて、そういう世代がどんどん増えていきますよね。もちろん、スマホもパソコンも完全になくなるということはなくて、残っていくとは思います。でも少なくともこれからどんどんIoTになって、あらゆるモノが常時インターネットにつながる時代になると、音声インターフェースはほぼすべての端末に搭載される。それはとてつもないインパクトですし、スマホ以上の大きなプラットフォームにもなりうると思っています。私たちLINEは「CLOSING THE DISTANCE」というコーポレートミッションを掲げていて、人と人、人と情報・サービスの距離を縮め、つないでいくことに力を尽くしています。音声インターフェースも含めて、少しでもユーザーにとって便利な世界を作っていきたいというのが私たちの思いです。

お話を聞いていて、子供のころに頭に描いていた未来の世界が、手を伸ばせば触れるところにまできているんだなと思いました。

マンガや映画の世界で表現できる未来って、いつか実現すると言われていますよね。これからはさらに加速度的に技術が進歩していくと思っていて、本当に人間のようなAIも出てくるかもしれません。また、脳とインターネットを直接つなぐことで思考するだけで何かが実現できたりとか。そういう世界も、意外と近くにきている気はしています。

では、なおさらリテラシーの問題は重要性を増してきますよね。

新しい技術がでてくると、それに付随して新たな社会課題が出てきます。それはプライバシーの問題とか、フェイクニュースの問題かもしれない。そういったものに惑わされないためにもリテラシーは非常に重要で、私たちは事業者としてこうした問題により積極的に向き合って、コミットしていくべきだと考えています。

技術の進歩に伴って法整備もどんどん進めていかなければいけないと思うのですが、行政からの何か要請などはあるのでしょうか。

昨年は、文部科学省が中心となってSNSを活用したいじめ等に関する相談体制の構築に関する検討会を開き、私たちもそこに提案するような形で協力をしてきました。長野県や大津市では実際にLINEを活用した学生向けのいじめ相談窓口が開設されたほか、現在は厚生労働省がLINEを通じて心の健康相談ができる窓口を開設しています。国や行政にとってもインターネットは極めて重要な技術・産業ですし、いろいろとお話をさせていただく機会も増えてきています。ただ、民間の事業者が法律を変えられるわけではないので、目の前のことにひとつずつ力を注いでいきたいと思っています。

最後に、出澤さんが個人として仕事への情熱を保ち続けている秘訣のようなものはあるのでしょうか。

単純に、インターネットって面白いんです。インターネットはいろいろなものをフラットにして、人間ひとりができることの幅を大きく広げてくれる。私がこの世界に入ったのは2001年頃でしたけど、世の中がダイナミックに変わっていくことに自分も参加して貢献できているような感覚がありました。それがとても面白くて。気が付いたらLINEみたいなサービスが生まれて、世界中のユーザーが使ってくれるようになって、人々の生活スタイルも大きく変わってきています。そういったことに携われることが、私の原動力になっているのだと思います。

本アワードの特別審査委員を務めた見城、「ビジネスイノベーション ファッション部門」を受賞した近藤氏とのトークセッション。
Takeshi Idezawa
1973年生まれ。LINE代表取締役社長CEO。早稲田大学政治経済学部卒業後、朝日生命保険に入社。2002年にオン・ザ・エッヂに入社し、’07年に新事業会社となる株式会社ライブドアの代表取締役社長に就任、同社の経営再建を果たす。’12年1月に傘下であったNHN Japanグループの経営統合に伴い、NHN Japan取締役に就任。’13年4月、商号変更によりLINE取締役に就任。’15年より現職。

Text=ゲーテWEB編集部 Photograph=鈴木拓也

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