日本発、世界標準! 2.5次元ミュージカルの巨大な可能性とは?【演劇プロデューサー松田誠】

昨年パリで開催されたジャポニスム2018。そこで上演されたミュージカル『刀剣乱舞』と『“Pretty Guardian Sailor Moon” The Super Live』(美少女戦士セーラームーン)、これらの作品は2.5次元ミュージカルと呼ばれている。それは日本の漫画、アニメ、ゲームといった2次元の作品を原作とした、3次元の舞台化コンテンツの総称であり、原作を含めたコンテンツそのものが、世界中にファンを持つ日本のサブカルチャーである。この2.5次元ミュージカルが遂に欧米公演を実施。その意義や今後の海外進出について、様々な公演を手掛けてきた、日本2.5次元ミュージカル協会の代表理事であり、演劇プロデューサーである松田誠さんに話を聞いた。


日本の2.5次元ミュージカルは世界共通の普遍性を持っている

昨年ジャポニスム2018で上演したミュージカル『刀剣乱舞』(以下『刀ミュ』)は日本からのお客様も多く、フランス人と日本人が混在する風景が面白かったです。

©ミュージカル『刀剣乱舞』製作委員会

じつは公演直前に出演俳優の一人が網膜剥離になって、声だけの出演になるという出来事があったのですが、お客様はイレギュラーな演出をあたたかく迎えてくださって。さらに終演後、フランス人と日本人のファンの方々がロビーで一緒に千羽鶴を折ったり、寄せ書きを書き合ったりしていたんです。作品とキャラクター、そして演じる役者が好きだという感情で、人種も年齢も超えた文化交流が結ばれていることにとても感動しました。

一方『美少女戦士セーラームーン』のお客様はほとんどがフランスの方たち。さらにヨーロッパ全土やアメリカから来た方までいて、原作の漫画やアニメが海外でも長く愛されてきたシリーズだからこその広がり、浸透度を感じました。

日本のコンテンツを海外に持っていくと、その原作を含めたコンテンツの力の強さを感じます。海外のお客様は感情をストレートに表現してくれる方が多いので、公演もとても盛り上がるんです。

『刀ミュ』は日本の名立たる刀剣が戦士の姿になった『刀剣男士』たちの物語ですので、まさに日本の和のカルチャーを扱っています。一方『セーラームーン』は世界中で認知されてきた最近のジャパニーズポップカルチャーの起源ともいえると思います。なので、2.5次元ミュージカルは海外の人にとっても日本らしさを感じるコンテンツなんですよね。

©武内直子・PNP/“Pretty Guardian Sailor Moon” The Super Live 制作委員会

よく、2.5次元ミュージカルを海外に持っていくにあたって「どんな工夫をしていますか?」と聞かれるのですが、正直なところほとんど気負いはなく、ローカライズのようなことも特に考えてはいません。どの国のお客様も同じところで笑って、同じところで泣く。それは、みんなが日本の漫画やアニメ、ゲームに触れて育ってきたからでもあり、世界共通の普遍性を持っているからなんです。

以前、マカオでライブ・スペクタクル「NARUTO-ナルト-」を上演した時に、原作のファンの方から「『NARUTO-ナルト-』は自分のバイブルだ、人生の師は学校でも親でもなく、うずまきナルトだ」と言ってもらったことがありました。日本の漫画やアニメ、ゲームのキャラクターの強さというのは、世界でも通用する強みだと思います。

2008年の海外初公演以来、約10年間、アジアを中心にいろんな国々で上演してきましたが、2.5次元ミュージカルがどんな文化圏でも通じるという確信は年々強まっていますね。とはいえ海外公演はまだまだ数えるくらいで、特にコスト面では大きな課題があります。スタッフとキャストで総勢何十人もが海外に行き、何日間もかけてセッティングをすると、公演数が1〜2回では費用対効果としては厳しいんです。もっといろいろな国でやりたいので、今後はビジネス面を考えていかないといけないですね。本来、舞台は写真や映像ではなくライブで体感してもらうものですし、観ていただければ絶対好きになってもらえると思ってますので。

昨年のパリ公演に続き、今年3月には、Japan 2019 の公式企画として、『“Pretty Guardian Sailor Moon” The Super Live』がワシントンD.C(1公演)とニューヨーク(3公演)で公演を実施し、約5000人を動員しました。チケットは即ソールドアウトで、ワシントンD.Cやニューヨーク以外のアメリカ40州以上から、ファンの方が駆けつけてくれて、大変盛り上がりました。

ワシントンD.Cの公演では、全米桜祭りの開会式にもご招待いただき、『セーラームーン』をご存知ないような方にも喜んでいただきました。また、ニューヨーク公演は、ブロードウェイにある劇場で公演したのですが、劇場の前にできた開場を待つお客様の長い列を見たときは、本当にうれしかったですね。

でも、まだまだいくつもの超えるべきステップがあるのも事実ですから、これからも、走り続けたいと思っています。

Makoto Matsuda
ネルケプランニング 代表取締役会長、日本2.5次元ミュージカル協会 代表理事、演劇プロデューサー。1967年東京都生まれ。代表作は、ミュージカル『テニスの王子様』、ミュージカル『刀剣乱舞』、ライブ・スぺクタル『NARUTO-ナルト-』、ミュージカル『美少女戦士セーラームーン』、ミュージカル『黒執事』、『ロミオ&ジュリエット』、『ロックオペラ モーツァルト』、ミュージカル『アメリ』、劇団EXILE他。演劇以外にも多方面で新しいエンターテイメントを仕掛けている、日本のステージコンテンツビジネスのトップランナーの一人である。


Text=渥美志保 Photograph=たかはしじゅんいち