15歳の敗者に感謝を示した大坂なおみに教育の本質を学ぶ ~ビジネスパーソンの言語学60

最近、説明や謝罪時の、違和感のある言葉遣いが話題になりがちだ。当コラムでは、実際の発言を例にとり、公私の場で失敗しない言葉の用い方を考える。ビジネスパーソンのための実践言語学講座60、いざ開講!


「シャワーで泣くよりも、みんなと話したほうがいいと思った」―――全米オープンテニスで、試合後に敗者のコリ・ガウフをコートインタビューに誘った大坂なおみ

1年前、彼女はこの全米オープンを制し、一躍スターになった。そして1年後、プレイヤーとしては惜しくも4回戦で敗退したものの、彼女はその人間性で世界から賞賛を浴びることとなった。3回戦の対戦相手は、15歳の新鋭コリ・ガウフ。同じフロリダを拠点とする大阪は、ガウフが幼い頃から努力を重ねる姿を見てきたという。そしてグランドスラム連覇を果たした「全豪オープン決勝以来の集中力」で戦い、彼女に勝利した。

この試合は、そこから前代未聞のドラマが待っていた。71分間での敗戦に泣きじゃくるガウフを大坂が勝者のための観客を前にしたコートインタビューに誘ったのだ。

「あなたは頑張った。コートでのインタビューを一緒にやりましょう」

「きょうのお客さんはほとんどがガウフを見るためにやってきた。シャワーで泣くよりも、みんなと話したほうがいいと思った」

はじめは戸惑い、断っていたガウフも何度も声をかけてくる大坂の誘いに応じた。

「きょうの試合は本当に彼女(大坂)がすごかった。この試合から学ぶことがたくさんありました。この機会を本当にありがとうございます。なおみ、今日はありがとう」

「なおみは真のアスリートだと証明した。コートでは最強の敵でも、それ以外では親友になれる」

ガウフの言葉に大坂も答える。

「前から知ってる私たちが努力をして今、この舞台にいるのが本当にうれしいです。私も成長できた試合。スタンドの皆さんからの声援も素晴らしかった。コリが相手だったから今日はいい集中力が出せました」

おそらく、ガウフはこれからプレイヤーとして大きく成長していくだろう。そしてそのためには、上位選手との差を感じたこの日の敗戦が必要な過程だった。大坂は、その伸び盛りのガウフにプレイで手本を見せ、そして試合後に敗者をリスペクトする態度で健闘を讃えた。

ビジネスシーンでは、多くの人が教育の難しさを感じているはずだ。力不足の後輩、若手に対して苛立ちを感じることも少なくないだろう。働き方改革の時代に昔ながらの厳しい指導をしていたらパワハラと言われかねない。ここというときに力を発揮し、相手をリスペクトする姿勢を見せる。そうすれば、若手も自然と伸びるし、自分にとってもいい刺激となる。21歳の大坂がそんなことを考えていたとは思わない。だが、彼女のとった態度には教育の本質が隠されているような気がした。

Text=星野三千雄 Photograph=Getty Images

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