本田圭佑の言語論「"敗北"は、未来の糧になる」【本田思考。⑥】

サッカー選手 兼 監督 兼 投資家 兼 起業家・本田圭佑は、言葉を使うことで、自らをインスパイアし、 世界にサプライズを起こす。その脳には どんな言葉=「本田思考。」が隠されているのだろうか。

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僕は"敗者復活戦"に投資する

僕は野球にたとえるなら2割バッターだ。いつもいろんなことを考え、あれをやりたいこれもやりたいと口にする。でも有言実行できているのはせいぜい2割で、残りの8割は失敗と敗北だらけだ。いつも10割を目指して努力しているつもりなのだが、どうしても8割はうまくいかない。まるで狼少年のようだと、自分でも思う。

もちろん負けたくて負けたこと、失敗してもいいと思って失敗したことなんて一度もない。敗北や失敗は、自分自身の努力、歯を食いしばって過ごした時間、さらには自分を支えてくれた人たちの思いまで否定することになる。常に真剣であるからこそ、精神的ダメージは大きい。

これだけ負ける人間であれば、戦国時代なら精神的ダメージどころか、とっくに命を落としているだろう。恐らく歴史に名を残すような武将は、自ら刀を持って戦うような勇気のある人間ではなかったのではないか。いたずらに勝負するのではなく、勝負すべき時だけ表に出る。そんな少し臆病で賢い人間だけが生き残ることができたのではないか。

ただ幸運なことに、現在僕らが生きている世界ではスポーツでもビジネスでも負けたからといって命までとられることはない。もちろん勝負の瞬間は生きるか死ぬかの思いでやっているのだが、これまで何百回と負けても死ぬことはなかった。敗北や失敗に落胆したら、また次に向かえばいいだけだ。長年プロサッカー選手をやってきて気づいたのは、どうやら僕はその切り替えまでの時間が他の人より断然早いということだ。

そしてなにより敗北や失敗は、勝利よりも多くのことを学ばせてくれる。ああ、このトレーニングをしなかったから負けたのか。あそこでミスをしたから失敗したのか。サッカーでもビジネスでも、負ければ負けるほど、多くの経験知を得ることができ、未来への糧になる。

若い時は勝利から自信を得ることができた。だが、長い目で見ると勝利から得る自信より、敗北から得る反省や教訓のほうが役に立つことが多い。

だから僕は投資家として、失敗した投資先にもう一度チャンスを与えたいと思っている。投資家のなかには、失敗した人間に再度投資するなんてとんでもないという人もいる。だが失敗した人間は、そこから多くのことを学んでいる。そのぶん成功する確率が上がっているはずだ。だから僕は、彼らの"敗者復活戦"に投資するのだ。

これは投資だけの話ではない。人生において、一度や二度の失敗で人間の評価を決めるべきではない。敗者を排除するのではなく、リベンジするチャンスを与えるような社会であってほしいと思っている。繰り返しになるが、負けても失敗しても死ぬことはない。だからこそ僕らは、どんどんチャレンジして、どんどん学んでいくべきなのだ。

本田思考。⑦に続く

Composition=川上康介



本田圭佑
本田圭佑
1986年大阪府生まれ。J リーグ名古屋グランパスエイトでプロデビュー。W杯に3大会連続で出場し、全大会でアシストと得点を記録。2020年2月、ブラジル1部ボタフォゴに入団。カンボジア代表の監督も兼務する。中高生のための月額1ドルのオンラインスクール「NowDo」を開校。
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