DMM.アフリカの知性派ニッポン美女、ケニアワイン輸入奮闘記

DMM.comは、2015年にDMM.アフリカを設立。“アフリカへ5年で100億円を投資する”と掲げ、ビジネス拡大の挑戦に出た。そんな同社と必然的とも思える出会いをしたのが、松﨑冬華さんだ。DMM.アフリカのケニア部門の責任者として、ナイロビで奮闘する美女がアフリカに寄せる想いを聞いた。 


東京のエリート女子がケニアへ行った理由

DMM.com本社でお会いした松﨑冬華さんは、華奢な美人で都会的。東京都出身、中学高校と私立の女子校に通い、慶應義塾大学を卒業後、大手広告代理店に就職というエリートコースを辿った。そんな彼女がなぜケニアに渡ったのか?

「学生時代に初めてケニアへ旅行に行った時、自然の雄大さや街の混沌とした感じが印象的で、アフリカに取り憑かれました。その後もアフリカを旅行し続けるなかで、いわゆるリープフロッグ(カエル飛び)現象を目の当たりにしたんです。例えば、携帯も最初からスマホを持つなど、いろんなものを一気に飛び越えて進化してしまう。そのイノベーションを現地で見て、アフリカはもっと発展するんだろうなとさらに興味をもちました」

大企業で働いていたが、アフリカに関わる仕事をしたいという想いが消えない日々が続いた。代理店でアフリカに携わることも不可能ではないが、自分が現地に行かなければ意味がなかった。ちょうど、そう考えていた頃にDMM.comがアフリカに投資する話を知り、迷わず転職。DMM.アフリカに入社し、2017年8月からケニアに渡った。

部下5人はケニア人。「現地に信頼できるパートナーをつくり、現地に根づいたサービスをつくる」というのが、本社会長・亀山敬司氏の意向だ。とはいえ、異文化交流ともいえる職場では、日本では考えられないことも多々起こる。例えば、ケニア独特のこんな採用方法もあったりする。

「ケニアには部族が42もあり、言語がみんな違います。公用語は英語とスワヒリ語ですが、自分たちの部族の言葉も話すので、同じ部族を雇うと、その言葉で話して、そこに私がいっさい入れなくなってしまう。部族の言語以外で話してもらえるように、採用の際に違う部族の人を雇うようにしています」

責任者としてチームの部族も考慮する。松﨑さんの仕事は、ビジネスの基盤となるところからアフリカ的だった。

ケニアの仲間たちと。「ケニアの女性は古着を安く買うため服をたくさんもっていて、いつも華やかです」とは松﨑さん。

ケニアのニーズと並行して、ケニアワインを日本に伝える

最初に手がけたビジネスは、ナイロビの美容室にネイルプリンターを置くことだった。

「ケニアの女性たちは美意識が高くてファッションが大好き。洋服を山ほど持っています。美容熱もすごくて、2週間に1度は美容室に行くのが普通なほど。化粧もきちんとします。そんな女性たちを見て美容関連のことをしたいと思い、ネイルプリンターをヘアサロンに売り始めました。みんなネイルは好きだけれど細かいデザインを描く日本人のようなスキルはないので、テクノロジーでそのギャップを埋めたかったんです」

ケニアにおいては高価なネイルプリンターと並行して、ファストムービングな中古iPhoneの販売も始めた。急速に発展しているとはいえ、やはりiPhoneはドリームフォンなのだ。

また、それらとは逆にケニアから日本に入れるものも増やす必要がある。そのとっかかりとして注目したのが、ケニアワインの輸入だった。仕入れたのは、「Leleshwa(レレシュア)」という名の、マサイ族の言葉でセージの木を意味するワイン。名前の由来は、ワイナリーがセージの木に囲まれていること。ケニアで唯一のワイナリーの商品を、DMMが独占契約を結んだ。

「ケニアのワインは誰も聞いたことがない、日本初上陸のものになります。レレシュアは比較的小規模な造り手によるもので、手作りにこだわり、白は南アフリカの国際的なワインコンテストで金賞も取っています。綺麗なソーヴィニヨンブランで、キリッと冷やして飲むのがおすすめ。赤はケニアの大地を感じるような味わい。ゆっくりデキャンタージュした方が美味しいです。アフリカワインというと南アのイメージがありますが、それだけではない。ケニアをまったく知らない、新しいワインを試してみたい人に飲んでほしいですね」

ぶどう栽培に困難も伴う環境のケニアで、20年以上の歳月をかけて、ケニアを代表するブランドに成長したワインでもある。そんなワインを日本人に出会わせてくれるのが、ワインのインポーターではなく、DMM.comだというのも興味深い。同社は酒販免許の取得から始め、飲食事業の展開すらこれが初めて。しかし、自由な発想でビジネスを拡げる会社だからこそ、ケニアワインにリーチできたのだろう。

「DMMの理念は“アンフレーム”。FXや動画、アプリを展開したりもすれば、モノだって売ります。ビジネス内容にフレームがなくて、稼げるもので稼ぐ。ケニアに関しても社員のアイデアに対して、いったんは挑戦させてくれます。そして、どうやったらスケールできるか、オープンな関係で進めさせてくれるんです」

ミッションはケニアで雇用を生むこと

今後、ケニアワインの販売が増えれば、現地での人材ももっと必要になる。ケニアの雇用を生み続けることが、松﨑さんの目標でもある。

「ケニアはシングルマザーがとても多くて、シングルマザーの雇用を増やしたいと思っています。日本人は結婚してから子供を産みますが、ケニアは嫁になるより母になる方がプライオリティが高い。弊社の社員も今までに雇った女性7人中5人がシングルマザーです。ケニアは一夫多妻制がいまだにあって、女性の権利が弱くて地位がどうしても下。ほとんどの人が女性は結婚したら家に入ると思っているような社会です。そういう国にいるからこそ、同じ女性として、女性が働く機会を増やしたい」

「アフリカに出会って、ようやく自分だけの視点を見つけたと思えました」とも話す松﨑さん。彼女が奮闘するほどに、ケニアと日本の距離が少しずつ縮まっていきそうだ。

Fuyuka Matsuzaki
1990年東京都生まれ。慶應義塾大学を卒業後、大手広告代理店に就職。2017年2月にDMM.comへ転職し、同年9月にDMM.アフリカのケニア部門の責任者となる。現在はナイロビ在住。休みにはタンザニアやザンジバル島など、ナイロビから気軽に行ける地へ遊びに行くことが多い。


右:レレシュア「ソーヴィニヨン ブラン2017」
2017年に南アフリカのワインコンクール、「ミケランジェロ・インターナショナル・ワインアワード」にて金賞を受賞したワイン。トロピカルフルーツのフレーバーがありつつ、飲み口はほどよくドライ。オリーブオイルを使った料理と絶妙にマッチする。¥3500(ミカサ通商 TEL:03·3391·2251)

左:レレシュア「メルロー シラーズ2015」
熟した果実の芳醇さ、官能的なアロマが魅力。微かなスモーキーさを含むため、ステーキなどの焼き目のあるグリル料理と好相性を見せる。時間をかけてデキャンタージュした後に飲むのが正解。¥3500(ミカサ通商 TEL:03·3391·2251)

Text=大石智子 Photograph=長尾真志