元NMB48須藤凜々花の「りりぽんのスキスキ委員会」#2

2017年、第9回AKB48選抜総選挙の際に結婚宣言をおこない、同年8月にNMB48を卒業した須藤凜々花。彼女がテレビや取材では言い切れなかったこと、捻じ曲げられて伝わってしまったこと、そういったものを赤裸々にではなく、丁寧に書いていく連載コラム。


あの人が私を愛してから、
自分が自分にとって
どれほど価値あるものになったことだろう。
by ゲーテ

この言葉は共感の嵐を引き起こしますね。

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しかし、以前の私だったら“自分以上に自分の価値を上げるものがあってたまるか!!”とゲーテ先生に噛みついていたでしょう。

愛されることが嬉しくて、嬉し過ぎて重荷に感じる私。
誰かを愛することで誰かの重荷になることが怖い私。
誰かを愛することで誰かを愛せなくなることが不安な私。
みんなを愛することの代償に、誰のことも愛せない私。
愛し愛されることは、即ち不自由になることだと怯えていた。少し前までの私だったら。

その瞬間にいる自分のことは、その後自分が変わらなきゃわからない。
私は確かに変わりました。
それは紛れもなく、私が愛した、私を愛してくれたあの人のおかげでした。

ーーー

“自分以上に自分の価値を上げるものがあってたまるか!!”

確かに今でもそう思う。

別に誰かに愛されなくとも、

元々自分のことは好きです。
ずーっと、一番好き。

他人に言えない恥ずかしいことや自分の嫌なところも全て知っていて、一番理解しているのはきっと自分。
その上で好きだと言えたなら、それは最低限かつ最強の愛。

自分に自信はない。
それでも、せめて私自身が好きでいてあげたら、他の人にも「このような私を好きになって欲しい」って言える資格があるはずよ、と思い続けてきました。
小学生の頃に読んでいた『GALS!』という少女漫画の「自分嫌いな奴が人に好きになってもらおーなんてさ、そりゃ虫がよすぎるぜ」というパンチラインにやられてからずっとです。

そのように自分を好きでい続けようと決めたいつかの日から、私は肯定することに前向きになりました。
どんな人も、どんな文化も、どんな歴史もあるがまま受け入れました。
それは、自分もそうされたかったからです。
自分が自分であるために、相手も相手であって欲しいと願ったのです。
肯定することは、自由になることだと思いました。
正当化するのではなく、事実を“認める”ということです。

そうすると自然に世界が広がっていきました。
見た目がヤバくたって、食べてみたら美味しくて感動しました。
危険な香りのする場所へどんどん踏み込んでみては、宝物がどんどん見つかりました。
愛するものが増え過ぎて、とうとう本当に愛するものがどれなのかわからなくなりました。

愛って唯一性だと思います。
「世界でたった一人君だけを愛してるよ」ってことです。
「世界で一番好きだよ」は許されないのです。二位がいちゃダメなんです。

昔、私の場合は二位三位どころの騒ぎじゃなくて、嫌いなものを数えた方が早いくらいでした。
「りりかは基本なんでも好きじゃん」
私の好きは世界で一番薄っぺらくなりました。
つまり軽いのです。
世界最軽量の愛を手に入れたのです。
そのことに手ごたえを感じていた当時の私は相当愛くるしい奴でしたね。

愛とスクバは軽ければ軽いほどイケてると信じてやみませんでした。
「重い女」という称号が、この世で最も不名誉なものだと思っていました。
このビッチ的思考は、結果的に私をビッチから遠ざけることになったのですが。

愛に怯えていたとはいえ、憧れはとてもとてもありました。畏怖の念ですね。
「誰でもいいからキスをしてみたい!キスの味を知らずに死ぬなんて嫌!」
と本気で思っていました。
でも、誰でもいいなら意味がないと気がつきました。(当たり前だろ)
どうでもいい相手とするキスは、唇と唇の触れ合い以上の意味を持たないからです。しかもキモい。嫌だ。殺す。(理不尽)
私はキスという行為そのものより、キスというストーリーを体験したかったのです。
つまり、恋愛!
……あぁ、重い。
私はただキスがしたいだけなのに。
ファーストキスっていうのも重い。
はぁ、詰み。
ってな感じで潜在的ビッチ処女のまま拗らせた思春期を過ごしました。

ところでこの世界は奇跡に溢れています。
事実は小説より奇なり。
Yes,fall in love.
19歳の私は一目惚れをしました。
春が訪れました。
そして春には嵐が付き物です。

彼のどこに惚れたの? と絶対に聞かれるのですが、目と目が合った瞬間イナズマが落ちたという手垢まみれの表現しか使えないほど説明がつかないものでした。
私は、彼のことを好きなんだと認識するまでに時間がかかりました。
それでも初めて会った時に「この人と添い寝がしたい」と強く思ったのです。
これは大革命です。
「この人が好き」という感情よりも私の中ではむしろ大きくて、重いものでした。

私は同じ一枚の布団の中で誰かと寝るのが嫌いです。
小さい頃から、布団の全ての端っこが、自分の体の下に丸め込まれていないと落ち着かないのです。
例え家族の誰かでも一緒の布団は嫌です。
つまり、「添い寝がしたい」という感情を抱いたのは初めてのことでした。
そして、それは必然的に家族以上の存在に向けられる想いでした。
家族以上の存在とは、自分が選ぶ新しい家族、となると……結婚相手!!!
(あーこの人と結婚したいなぁ)
その時はキスのことなんか忘れていました。

でも、私は時間が経つほどに彼が“好きな人”であることを痛感し、“キスの味を教えてくれる唯一の人”であるのだなぁと勝手にドキドキしました。
私に宿った唯一性、これが恋か……! 辛い。
初恋のファーストキス、重い……重みは罪だ。
重い女だと思われたくない。
でも軽過ぎても嫌われる。
どうしたらいいんだ……。
そうだ、LINEをしよう。
「最近まで誰とでもいいからキスしたいって思ってました!」
まだメッセージは取り消せない時代でした。

ところでこの宇宙は奇跡に溢れています。
私は一目惚れした彼から告白され、
彼女になり、
プロポーズされ、
凄い所で返事をして、
結婚しました。

なんでかはうまく説明できないけれど、私は彼のことが大好きです。自分と同じくらい大好きです。
世界でただ一人愛していて、そして世界で一番愛しています。
彼の人生、生き方を丸ごと愛しています。
一人の人として尊敬しています。
だから私は、彼にただ自由でいてほしいと願いました。
私は自由であることに一番、唯一、幸せを感じるから。
お互いが一緒にいることでより自由になれる関係ならば、友達でも恋人でもなんでもいいと思いました。
でも私はある日こう思ったんです。
「自分の一番大切なものをあげたい」
私のあげられる一番大きなものをあげたいと思いました。
自由をあげたいと思いました。
愛による不自由を怖がっていたけれど、自分の自由をあげたいと思うことと、それを選択できることこそ最上級の自由、そして愛なんだなと思いました。

それが、結婚でした。
私にとって結婚は、自由と自由の交換です。
普通は誰かの自由をもらうことは重荷で、不自由です。
でも、愛の力はすごくて、愛する人の自由ならば、自由を自由として受け取れ、同時にプレゼントできるのです。

こんなに大切なものをあげたいと思えるような人に愛されている自分。すげーぜ。
世界で一番好きな人と、数多の巨乳美女を抑えて結婚した自分。すげーぜ。

彼を愛すれば愛するほど、
自分のことがもっと好きになる。

自分のこと以上に好きだと思う人に出会うって怖いと思っていました。
だってその人のためだったら命も惜しくないと、人間にとって一番怖いことが美しいものに変わるから。
自己犠牲の精神は怖い。ドン引き。

でも、この人ならば安心してずっとどこまでも好きでいられると思いました。
だって生きているのがとっても楽しくなったから。
この人と会えなくなるから、死ぬわけにはいかなくなった。
美しく育てたい人生がもう一つ増えた感じ。

結婚は安定だなんて誰が言ったのだろう。
結婚は人生の墓場だなんて誰が言ったのだろう。

結婚って面白い。
自分だけではなり得なかった自分に出会える。
相手だけではなり得なかった相手に自分がさせる。
重いけれど、心が安らかになる重み。
私はここに存在して、生きているんだと日々実感できる。

一枚の紙で縛られることで、今まで味わえなかった自由の味を知り得ました。

ちなみにキスの味は桃でした。
自動販売機で奢ってもらう時に、かまととぶって飲んだこともない“いろはすの桃味”をチョイスしたから。

感動するほど美味しかったです。

自由とは桃の味がするのだなぁ。

なんつって。

リア充フルスロットル乙でした!

次回はドロドロの嫉妬についてだよ!

またねー!

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Photograph=斉藤大嗣 Stylist=平みなみ Hair & Make-up=竹中真奈美
衣装=ベルスリーブワンピース¥27,000(HENZA LOS ANGELES/ヘンザ ロサンゼルスTEL03・6721・0566)

連載第1.5回


連載第1回


須藤凜々花
須藤凜々花
1996年東京都生まれ。2013年「第1回AKB48グループドラフト会議」において、NMB48に加入。NMB48の12thシングル「ドリアン少年」ではセンターを務める。’17年、第9回AKB48選抜総選挙の際に結婚宣言をおこない、同年8月にグループを卒業、現在に至る。著書『人生を危険にさらせ!』(堀内進之介との共著、幻冬舎)。
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