建築家 谷尻誠 これという作風は持たない その都度ゼロから考え、捉われない

マツダの目黒碑文谷店、池袋のBOOK AND BED TOKYOなど、話題のプロジェクトを多数手がける建築家の谷尻誠。最近ではアジアからもオファーが届く。また、武蔵野美術大学や大阪芸術大学で講義を受け持っている。そんな谷尻氏が本拠地として構える事務所は、意外にも広島である。このギャップこそ、谷尻氏がデザインするうえで最も大切にしていること。あらゆることに"違和感"を重視する谷尻氏の仕事術とは──。

───谷尻 誠の名言───

「これという作風は持たない。その都度ゼロから考え、捉われない」
当たり前だが場所も環境もコストも案件ごとに違う。だから、ゼロから考える。できあがったものは、すべてまったく異なるテイストのものになる。

「違和感を意識する」
例えば、初めてデートする女性に一万円のプレゼントをあげるとしたら、一万円の指輪と一万円の靴下のどちらを選択するか。普通だったら指輪を選ぶところだけど、僕は一万円の靴下を選ぶ。なぜなら、その方が強烈な印象が残るから。デザインする時も何かにひっかかる、そういった違和感を大切にしている。

「東京と広島の両軸をもつ」
東京は面白い人が集まっていて刺激的な街。けれど、東京を本拠地にしないのは、僕にとって物事をゆっくり考えられるのが広島だから。一番大切なのは、自分が何を考え、何をやるか。東京じゃなくても構わない。なので、広島と東京を行き来している今の状態が合っている。

「伝統はイノベーションの継続」
今の日本は伝統を大事にするが、新しいものを作ろうっていう姿勢が少なくなってきていると感じる。けれど、今ある伝統は、昔の人々の試行錯誤の継続があったからこそ存在しているのだと思う。だから、自分の今やっていることを、未来において伝統にするためには、イノベーションの継続が必要だと思っている。

「難しい課題は、大きなチャンス」
難しいと感じる課題は、自分以外の人も同じように感じている。なぜなら、まだ誰もその課題を解けていないからだ。しかし、もし自分が一歩先にクリアしたらパイオニアなれる。そう自分に言い聞かせて、難しい課題に挑むようにしている。

谷尻 誠
建築家。1974年、広島県生まれ。建築設計事務所SUPPOSE DESIGN OFFICE代表。設計した住宅は100件以上。共同代表の吉田愛と共に、国際家具見本市ミラノサローネでのインスタレーションの発表や有名ブランドの店舗デザインなど、枠にとらわれず多方面で活躍している。

*本記事の内容は16年4月1日取材のものに基づきます。