「それ、会社病ですよ。」会社がつぶれる原因は不祥事ではない Vol.20


ベネッセ、日本マクドナルド、東洋ゴム工業……。企業が起こす不祥事について、たくさんの報道が行われています。しかし、事件自体に関する議論は、多くの場合、本質的ではありません。
 実際、不祥事自体で会社がつぶれることはあまりない。つぶれるのは、事業の本質的な経済構造の背骨の部分に穴が開いた時。朽ちていってしまう時です。しかし、この背骨が脆(もろ)くなっていった時に、その現象の一つとして不祥事が起きる場合がある。
 ところが、メディアは不祥事という事件そのものに引っ張られてしまいがちです。その裏側にある本質的な根本原因を探っていくところまではいかない。
 例えば、朝日新聞の誤報問題。新聞社の背骨である思想的主張が根本原因だと考える人がいますが、そうではないと私は思っています。
 問題の本質は、サラリーマン組織である日本の大手メディアに共通する、ジャーナリズムとしての中空化です。ジャーナリストとしてのプロフェッショナリズムよりもサラリーマンの論理が優先すると、会社の空気を読みながら、記事を書く。その組織で一面トップを取るには、どんな記事を書けばいいのか。こういうところからやらせ報道や誤報が生まれます。
 空気を読むのは上層部も同じ。記事が大きな国際問題を引き起こしてしまっても、組織人としては、今さら「違っていました」と言いだすのは難しい。
 どんな組織でも判断ミスの罠(わな)はありますが、朝日新聞をはじめ、終身年功型のサラリーマン≒似非(えせ)ジャーナリストが中心の組織では、この傾向は顕著になります。

当然ながら、このような問題の本質に大手メディア自身が迫ることはありません。
 一方、従前から経営上の背骨の部分に穴が開いていたのに、破たんするまでまったく報じられなかったのが、スカイマークでした。
 航空会社の本質的なメカニズムは、稼働率商売です。それ以上でも以下でもない。要はまじめにこつこつやることが大事な商売。実態は、空飛ぶバス会社なのです。
 実のところ、バス会社以上につまらないと私は思っています。バス会社はもっと路線を自由に選べるからです。しかし空港が限られるエアラインは、発着枠も路線も、役所が決める。そこで勝敗のほとんどが決まってしまう。
 その意味では、競合からは垂涎の発着枠と路線を持っていたスカイマークは、黙って東京、福岡間を飛ばしていればよかったのです。なのに、ワケのわからないロマンのようなものを持ちこもうとして拡大路線を取った。メディアもそれを後押しした。どうにも航空会社にロマンを持とうとする人が多すぎます。
 しかし、客室乗務員がちょっと短いスカートをはいたからといって、忙しいビジネスパーソンたちは、わざわざ出張の予定を変えたりはしません。そんなことよりも、便利な時間帯で、安全確実、リーズナブルに飛ばしてくれたほうがいい。エアラインの経営者に求められるのは、実直まじめに公共交通機関の運営管理責任者として一生懸命やってくれる人です。これが背骨です。
 ニュースに接する時には、本質を常に見ていく必要がある。そうでないと、物事を見誤ってしまいます。


Text=上阪 徹 Illustration=macchiro
*本記事の内容は15年4月取材のものに基づきます。価格、商品の有無などは時期により異なりますので予めご了承下さい。
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