【遠藤航】選手として、夫として、父親として最も大事にしていること

2大会ぶりのグループリーグ突破を果たしたロシアワールドカップから1年。躍進に喝采を浴びた日本代表の中で、思いを新たにした男がいた。遠藤 航。日本代表としてロシアの地へ赴くも、出場はかなわなかった。そこにやってきたベルギーリーグからのオファー。Jリーグ途中での移籍に、考えるところもあったが「成長しなければいけない」という決心で、飛び込んだ。ベルギーリーグ・シントトロイデンでの1年を終えた遠藤が、いま思うこととは――。短期連載第2回。

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息子には自分で考えられる自立した子になってほしい

ピッチでは冷静に相手の攻撃の芽を摘み、ときに効果的なパスを配球する26歳は、ひとたび家庭に帰れば4児の「父親」だ。

――子供を4人持つ遠藤選手は、世の中の「父親」の大先輩的な存在ですが、怒ったりすることはあるんですか?

柔和な表情からはあまり想像できない「怒り」の顔があるのかと問うと、こんな答えが返ってきた。

「怒ることもありますけど、上の子はもう6歳なのでそこらへんがよくわかっていて、『また怒ってるよ』くらいにしか思っていないように見えるんですよね。『またパパが怒ってる、ママが怒ってる』くらいで、気にしていないというか。だから、よっぽどひどいコトをしない限りは怒らないようにしています」

――それでなんとかなるんですか?

「逆に(怒らないと)“お利口”になっていくイメージがあります。もともと僕が父親にあまり多くのことを言われませんでした。進路や将来についても自分で決めさせてくれたくらいで。だから僕も息子には自分で考えられる自立した子になってほしいと思うかな」

どこまでも冷静な男は、男性スタッフの一人が「いくら子どもの世話をしても奥さんに信頼されないんです」と悩みをぼやくと、謙遜して言った。

「いやいや。皆さんは忙しいんでしょうけど、サッカー選手はありがたいことに子どもと過ごせる時間が意外とあるんですよ。遠征もありますけど、午前中に練習をして午後からは家にいることも多い。だから、そのときに子どもと遊んだり、お風呂に入れて、歯磨きをさせて、寝かしつけて……たまには奥さんも休めればと思って、自分がいるときは基本的にやっていますね」

夫としても完璧な26歳は、「やっぱり家庭でもコミュニケーションが大事だと思いますよ」と笑う。

家庭でも、と言ったのは遠藤航がこのインタビューの最中に、「チームを作るうえでもっとも大事なもののひとつ」と語ったのが、“コミュニケーション”だったからだ。

キャプテンに選ばれる理由

Uー16日本代表に選出されて以来、各年代で日の丸を背負った遠藤は、そのたびにキャプテンとしてチームを引っ張った。リオデジャネイロ五輪アジア予選、本選では手倉森監督から絶大な信頼を得て、ケガや体調不良があっても決してそのキャプテンマークを外すことはなかった。クラブでも、プロデビューした湘南ベルマーレでなんと19歳でキャプテンに指名されている。

だから、森保ジャパン選出以降、不動のキャプテン・長谷部誠の代表引退によって空いたその座に「遠藤航」の名前が挙がることも、不思議はなかった。

生粋の「キャプテン」――。近くで見てきた人間にはそう映る。もっとも、遠藤はあまりその点にフォーカスをすることはない。

「(キャプテン候補と言われることもあるけれど)まず自分の取り組むべき目標は次のワールドカップにスタメンで出ることですよね、まずは。もちろんそのうえでキャプテンとして試合に出られれば、一番理想ではあると思いますけど、キャプテンができる人はたくさんいるんで」

吉田麻也や柴崎岳、昌子源……遠藤の口からは日本代表で一緒に戦ったチームメイトの名前が次々とあがる。そして、冷静に、こちらをいさめるように言った。

「結局大事なことは、誰がキャプテンをやるかということではなく、チームがワールドカップに出て、しっかり結果を残すっていうことですから」

そんな姿こそ、歴代の指揮官に「キャプテン」を任せたいと思わせるのだろう。

あえて、キャプテンに必要なものを聞いた。

「周りの選手から信頼される選手であるべきで、監督からも信頼される選手であるべき。まずはその二つが最低条件だと思っています。やりたいと言っても、信頼がなかったら務まらないですから。だから、地道な方法ですけど、日々チームのために戦う。そう考えたら、やることって日々努力するしかないと思います」

試合はもちろん、練習でも100%でやり切る。その背中を見せることが大前提だ、と遠藤は言った。それ以外にチームメイトに対してはどう接するのか。

「コミュニケーションは意識して取るようにしていますけどね、周りの選手と」

苦い記憶もある。リオデジャネイロ五輪のときのこと。キャプテンとして、レギュラーのボランチとしてビッグイベントに向った遠藤は、100%の姿を見せることに注力しすぎた。本職はセンターバックだったが、五輪代表でのポジションはボランチ。もしかすると、ピッチに意識がいきすぎたのかもしれない。

「いま思えば、ミーティングをしたり、締めるところは締めるといった厳しい言葉をかける必要もあったかもしれない、と思いますね。当たり前ですけど、全部が全部うまくいっていたわけではなかったので。それは、ロシアワールドカップに行って、長谷部さんを見て感じました。プレッシャーのかかる大会で、キャプテンとしてもレギュラーの選手としても高いパフォーマンスを発揮している姿に、純粋にすごいな、と」

リオ五輪のときの遠藤は、そのふたつをこなすことができなかった。

「チームのことを考えすぎると、プレーがおろそかになってしまったり、ということはあったと思う」

だからこそ、キャプテンにはチーム内に向ける視線の必要性を感じている。それが、言葉による「コミュニケーション」だった。

最終回は、その「コミュニケーション」の極意について紹介する。

Wataru Endo
1993年神奈川県生まれ。シント=トロイデンVV所属。2015年、日本代表メンバーに初選出。'16年、リオ五輪メンバーに選出され、キャプテンとして3試合フル出場。国際Aマッチ20試合出場。


Text=黒田 俊 Photograph=杉田裕一[POLYVALENT]