藤田晋×萩原聖人 学校では教えてくれない麻雀から学んだこととは?【Mリーグ開幕対談】

10月1日、プロ麻雀リーグ「Mリーグ」が開幕する。これまでギャンプルのイメージが強かった麻雀を、競技としてプロスポーツ化し、社会的地位の向上などを目指すというこのMリーグ。来年3月まで行われるリーグ戦には、7チームが参加。それぞれのチームには3人のプロ雀士が登録され、各チーム80試合を戦い、優勝賞金5000万円を目指す。この世界初のプロ麻雀リーグを立ち上げたのは、Mリーグ代表理事の藤田晋サイバーエージェント代表取締役社長。開幕直前、試合会場となる都内某所のスタジオで「TEAM RAIDEN/雷電」に所属するプロ雀士で俳優の萩原聖人と、Mリーグにかける思いを語り合った。


「Mリーグから新しいスポーツとしての麻雀の世界を見せたい」ーー 萩原聖人

萩原 すごいスタジオですね。これがMリーグ専用になるのかあ。Mリーガーとしては、がぜんモチベーションが上がりますね。

藤田 タバコ臭い雀荘で、オッサンたちが徹夜しているというイメージをガラリと変えたかったんです。

萩原 さっきロッカールームに行ったんですけど、自分がメジャーリーグの選手になったような気分でした。いよいよ始まるんだなと奮い立つような気分になりました。

藤田 ここで10月から月、火、木、金の週4日の戦いが始まります。ちょうどプロ野球のオフシーズン。野球に変わる冬場の娯楽として「19時になったらMリーグ」というのが多くの人の習慣になっていくといいなと思ってます。

萩原 実は、プロとして参戦することになってから、すごく責任を感じていて、麻雀してもぜんっぜん楽しくないんですよ(笑)。いままで何十年も麻雀をやってきて、勝っても負けても楽しかったのに、いまはまるで楽しくない。毎日、朝でも夜でも時間を見つけては練習してます。とにかく打ちこもうと。打ちこみが足りなかったから負けたなんてプロとしては絶対言いたくないですからね。

藤田 プロ野球のキャンプみたいな感じですね。

萩原 まさにそれです! 開幕したら楽しくなるのかな。自分のなかで爆発するような気もしますね。

藤田 そこまで集中してくださってるんですね。

萩原 大げさでなく、死ぬ気でやってやろうと思っています。事務所の社長には、俳優の仕事はこれまで通りやるし、睡眠時間はどれだけ削ってもいいから、Mリーグだけはやらしてくれって頼んだんです。腹くくってますよ。

藤田 萩原さんが「Mリーグに参加したい」と言ってくれたときは、ガッツポーズしましたよ。トッププロに負けない麻雀の実力があって、注目度も高い。余人をもって代えがたいと思っています。

萩原 僕も最初は、自分でやろうとは思っていなかったんですよ。プロの友人もたくさんいるし、「誰を応援しようかな」みたいな感じで。でも7月にMリーグ発足の記者会見を見たら、ものすごくワクワクしてしまった。もちろん俳優の仕事でもワクワクすることはありますけど、それとはまった別の種類、子どものころに感じたようなワクワク感。「おれもやりたい、試合に出たい」と思ったら、もう止まらなくなった。周囲の反対を押し切って、Mリーグに参加できるプロの資格をとりました。

藤田 萩原さんがいるだけでメディアの注目がまったくちがいますからね。日本でいまアクティブに麻雀をしているのは、300万人程度。でも麻雀をやったことがあるという人は、その3倍、1000万人くらいいると思うんです。Mリーグがターゲットとしているのは、この1000万人。彼らに“観る麻雀”という新しいエンタテインメントを届けたいと思っています。

萩原 僕はやるだけでなく、観るのも好きです。昔、深夜放送で麻雀番組をやってたころも朝までずっと観てました。

藤田 Abema TVでも麻雀は人気コンテンツなんです。プロ野球や大相撲より数字がいいこともあります。今回は、テレビで観るだけでなく、パブリックビューイングの会場も作りましたので、「みんなで観る」という楽しさも提供します。

萩原 Mリーグを観て、「昔はよくやってたな」という昭和世代がまた麻雀をやり始めたり、若い世代が「Mリーガーってカッコいいな」と憧れて麻雀を始めたりしてくれたらうれしいですね。

藤田 そのためには夢も必要。いまプロ雀士のなかで麻雀だけで生活できるのはほんの一握りしかいない。いずれは契約金1億円のMリーガーとか誕生してほしいなと思っています。

萩原 そうなるといいなあ。夢がありますね。僕は、Mリーグから新しいスポーツとしての麻雀の世界を見せたいと思っているんです。みんなが観客から“観られる”プロ雀士としての意識を持つようになれば、何かが変わっていくはず。必ずギャンプルのイメージを変えられると思っています。


「人生に必要なことはすべて麻雀から学びました」ーー藤田晋

ーー2人は、テレビの麻雀番組で知り合って以来の雀友。ともにアマチュアとしてはずば抜けた実力を持ち、プロも認める存在だった。このMリーグ発足を機に萩原はプロの資格を得てMリーガーに、かたや藤田は代表理事に就任した。ときにはライバル、ときにはチームメイトとして卓を囲んできた2人は、たがいをどんな雀士と見ているのだろうか。

藤田 萩原さんの麻雀は、とにかく忍耐強い。普通、本業が他にある人ってそんなに我慢しないんですよ。遊びの麻雀でまで歯を食いしばりたくないって。でも萩原さんは歯が割れちゃうんじゃないかってくらい食いしばる(笑)。僕は、ドM麻雀って呼んでます。

萩原 藤田さんにドMだって言われてから、「あー、おれってそうなんだ」って自覚するようになりました。麻雀を始めてからずっと、我慢するのが当たり前だって思ってきたんで(笑)。僕に比べると、藤田さんの麻雀はマルチですね。勝ちを目指しながら、思いがけないところで仕掛けたりする。プロにはいないタイプで読みづらいんだけど、勝負どころはすごくわかっている。

藤田 麻雀って経営に似ているんですよ。勝負どころがすごく大切。僕は人生に必要なことはすべて麻雀から学びました(笑)。でも経営者だけでなく、俳優の仕事にもつながる部分はあるんじゃないですか。

萩原 ありますね。配牌は台本みたいなもの。台本を見て、自分の役割を考える。暴れたほうがいいのか、おとなしめがいいのか。たまにはどうしようもない台本もあって、「これ、どうすればいいの?」って悩んだり(笑)。でも麻雀って経営者や俳優だけでなく、いろんな仕事に共通する真理を学べると思いますよ。

藤田 そうなんです。だから僕はMリーグを通して、子どもたちにも麻雀の魅力を知ってほしい。学校では教えてくれないことをたくさん学べますから。

萩原 今回、Mリーガーのなかで20歳代はひとりだけ。もっと若返ってほしいですよね。麻雀は経験値がモノを言うから、どうしてもアブラがのってくるのが30歳代以降になってしまう。でも子どものころから始めれば、もっと早く強くなれるはず。

藤田 藤井聡太七段の登場で将棋界の注目度が一気に上がった。Mリーグにもあんな若いスターに登場してほしいですね。

萩原 僕もいつまでMリーガーでいられるかはわからない。すでに俳優の仕事との両立で体ボロボロですからね(笑)。でも需要があるうちは頑張る。そしていずれ若いMリーガーが登場して押し出されるのが理想ですね。

藤田 まずはこのMリーグが成功して、麻雀が社会的に健康的なスポーツとして認められるようになれば、Jリーグのように2部リーグや3部リーグを作りたいし、シニアリーグやリトルリーグも作りたいと思っています。

萩原 藤田さん、代表理事でいいんですか? 自分もここで戦ってみたくありません?

藤田 さすがにそういうわけにはいかないと思ってましたけど……ここ(Mリーグ専用スタジオ)に来たらやりたくなっちゃったなあ。

萩原 そりゃそうですよね。やりたいはずですよ。立場上まずいなら謎の覆面雀士で参加するとか(笑)。正体バレバレになりそうだけど。

藤田 そのうち会社も辞めて、Mリーガーになろうとか思ってしまいそうで怖いです(笑)。


Mリーグとは
日本国内において麻雀の競技化・健全化を図り、その普及と発展を目的として、発足したプロ麻雀リーグ。最高顧問は、川淵三郎氏。初年度は計7企業による7チームが参加、2018年8月に行われたドラフト会議を受け、各チーム3名の所属選手が決定。21名の初代Mリーガーたちがしのぎを削るリーグ戦は、10月1日開幕。AbemaTVにて、全試合放送。


Masato Hagiwara
1971年神奈川県生まれ。俳優・プロ雀士。初代Mリーガー。所属チームは、電通「TEAM RAIDEN/雷電」。「萩原リーグ」という自らが主催する麻雀リーグも開催する。麻雀を題材にしたテレビアニメ『闘牌伝説アカギ 〜闇に舞い降りた天才〜』では、主人公の「アカギ」こと赤木しげるの声を担当。
Susumu Fujita
1973年福井県生まれ。’98年にサイバーエージェントを’創業し、2000年に当時、史上最年少社長として東証マザーズに上場。「21世紀を代表する会社を創る」を会社のビジョンに、インターネット産業において高い成長を遂げる。新経済連盟 副代表理事。著書に『渋谷ではたらく社長の告白』『起業家』『仕事が麻雀で麻雀が仕事』がある。Mリーグチェアマン。


Text=川上康介 Photograph=杉田裕一[POLYVALENT]