【シリーズ秘書】セガの名作ソフト誕生を支えた社長秘書はゲーム素人だった!?

多くの名作ゲームを生み出してきたセガ。昨今ではアプリゲーム「ぷよクエ」、「コトダマン」などが好調だ。ゲームファンから長年愛されてきた名作ソフトの裏に、実はゲームをほとんど知らない秘書の存在があった――。


世界中のファンへ感動を届けるべく、奔走中!

『ソニック』、『龍が如く』、『ぷよぷよ』……。ゲームの歴史とともに歩んできたセガ。2015年のグループ再編によって事業別に分社化したのに伴い、’17年に同社の常務取締役だった松原健二氏が新たに代表取締役社長に就任した。

「感動体験を創造し続ける」をミッションに、家庭用ゲーム機、PCオンライン、スマートデバイス向けにゲームや関連サービスを提供する。そして今、アジア、欧米を中心に著しく成長しているのがゲームコンテンツ市場だ。

「弊社は従業員数も売上げも半分は海外です。これほど海外の比重が大きい会社も珍しい」

そう松原社長が言うだけに、国内外を問わず、拠点への出張や海外から突然の訪問客も多い。役員会議はもちろん、ゲームの「開発の進捗を見極める会議」にもすべて参加。松原社長の秘書にとって、日に幾度も変わるスケジュールのアレンジが最大の仕事と言っても過言ではない。

そんな松原社長を支えるのが岩田友里花さんだ。施設運営会社の秘書としてキャリアを重ね、’16年に入社。この時、彼女の面接をしたひとりが松原社長だった。

新たな大崎オフィスの社長室にて。新社長室にもぷよぷよのキャラクターグッズや、プーマとセガがコラボしたシューズが飾られていた。

岩田さんは中学時代から大学時代までテニスに励み、インターハイにも出場したという腕前の持ち主。松原社長は、「明るくハツラツとした雰囲気から、周りとの調整にうまく対応してくれるのではないかと思った」と言う。

さらに、岩田さんが前職の社員旅行で海外へ行った際に、真っ先にバンジージャンプに挑戦したと聞いて、「思い切りのよさ、度胸のよさ」も見こんでいる。実際、岩田さんはどんな予定が入ろうとも、慌てず騒がず冷静沈着。「いつでもニコニコこなしている」と同僚も太鼓判を押す。

しかし、そんな岩田さんも入社初日、社長のぎっしりと詰めこまれたスケジュールに驚いたそうだ。さらに「"ライオン"の山田くん」、「"タイガー"の菊池さん」という言葉にも面食らった。入ったばかりで名前も顔も、動物の名前の意味すらわからない。「まず『顔を覚えなくては』」と必死に会議に参加する人間を把握することに努めた。

実はセガでは、世の中に発表されるまで秘密のプロジェクト名でゲームの制作が進む。例えば、松原社長に「ライオンの山田くん呼んで」と言われたら、まず「ライオン」というプロジェクト名を自分のなかで翻訳しなければならない。ところが岩田さん、実は入社するまで、自社はもちろん他社も含めてゲームをほとんどしたことがなく、それもピンとこなかった。そこで、

「毎週進捗会議があるのでそこで上がるプロジェクト名を覚えてキーマンを把握しました。担当者をゲームのキャラクターと関連づけて覚えることもあります(笑)」

秘書になって3年目。今も組織図は必携だが、自宅ではPS4のソフト『龍が如く』にチャレンジし、通勤時間にはスマホアプリの『コトダマン』をプレイ。松原社長とともに自社のゲームイベントや「東京ゲームショウ」に訪れたり、開発者のイベント「CEDEC(セデック)」に随行したりしながらファンを知り、開発者を知り、ゲームの奥深さを学んできた。

また、海外スケジューリングに必要な英語力は、さまざまな国籍の社員が在籍する社内人脈を使ってスキルアップ。最近、ロンドンの秘書から英語力が上がったと褒められた。

これまで主要事業所3拠点で稼働してきた同社は8月下旬、グループ会社も含めて大崎に移転する。セガサミーグループ20社約6500人が集結予定なだけに、ますます社員の顔と名前を覚えていかないといけない。松原社長は語る。

「今後は社員がさらに多様化。岩田には社員をつなぐハブとしての役割をますます期待しています。互いに成長していければいいですね」


Kenji Matsubara(左)
セガ・ゲームス代表取締役社長。1962年生まれ。東京大学大学院情報工学専門課程(修士)修了。2014年10月、セガネットワークス取締役CTO(最高技術責任者)就任。’17年より現職。

Yurika Iwata(右)
1990年生まれ。2016年に入社。入社時より当時取締役だった松原氏の秘書。入社後、松原氏の妻が岩田さんの実家のパン屋さんを利用していたことが判明。
Company Data
1960年設立。家庭用ゲーム機、PC及びスマートデバイスに向けたゲームやデジタルサービスの企画・開発・販売、運営を行う。ビジョンは、業界や世の中を変える〝Game Changer〞たること。


Text=坂口さゆり Photograph=坂田貴広