「それ、会社病ですよ。」700万円で専業主婦と子供2人?標準家庭モデルの作り直しを急げ Vol.6


政権が代わり、社会システムの改革議論が本格化しようとしています。しかし、ここで大事な視点が抜け落ちている気がしてなりません。再設計の前提となる標準家庭モデルです。
 今なおイメージされているモデルは、会社員のお父さん、専業主婦かパート・アルバイトのお母さん、子供2人、世帯年収は700万~800万円というもの。しかし、果たして今、これが現実的なものといえるかどうか。
 現在の世界の経済的現実を踏まえた時、サービス業で700万円の年収というのは極めて難しい。もちろん一部には高給を取る人もいますが、ボリュームゾーンは夫婦とも正社員で共働きの合算が700万~800万円、というのが現実的です。実際、若い世代では、このモデルで働く世帯がだんだん増えてきている。
 したがって社会システムを再設計する時には、この新しいモデルで税制や社会保障体系、教育、医療などを作り直していく。これが、長期的な国の成長戦略として極めて重要だと思うのです。
 日本の生産性を上げるうえで、最も改善余地があるのは、女性の労働参加率です。端的に言ってしまえば、女性の働き口を増やし、女性が働き続けられる社会システムを作り上げること。それが、付加価値生産性の上昇につながる。

子育て問題などで女性が働くことが抑えつけられている環境を変え、もっと就業参加できる仕組みを議論しないといけない。折しも団塊世代の大量退職で、多くの職場で人手が減る。今、雇用規制を緩めた法律を改正すれば企業はもっと人材を、それこそ新卒も女性も採用できる。今はチャンスでもあるのです。
 すでに欧米の先進国でも、一般家庭の専業主婦モデルはほぼ姿を消しています。アメリカは日本から製造業を奪われ、1970年代以降、高度な知識集約型産業と、労働集約的なサービス産業に産業構造が分化してしまった。結果、専業主婦が主役だった“奥さまは魔女”的な世界は消え、ごく一部の高所得者層を除いてほとんどの家庭が共働きです。
 現在の日本の標準家庭モデルができたのは戦後です。戦前は、農家でも商家でも共働きは当たり前でした。実は勤め人そのものがまだ珍しく、専業主婦モデルなどなかったのです。戦後のモデルは、超工業化社会の、ある種の一過性の現象でした。特殊な時代の仕組みだったのです。
 脱工業化社会といわれて、ずいぶんたちます。専業主婦モデルが続けられないことは、とうに気づいていたはず。戦前に戻ってパパママ自営業や農家になるか、勤め人なら夫婦で働くか。そうでないと生計は成り立たない。そのなかでどうやって生産性を高められるか、賃金を高められるか、子育てをしていくか、それこそがリアルな問いです。
 政府の議論が懐古主義的になると、新しい社会システム作りが歪められてしまう危険があります。オールドモデルにしがみついていることは、経済成長の長期的な足かせにますますなっていく。実は改革議論の重要な視点なのです。


Text=上阪 徹 Illustration=村田篤司
*本記事の内容は13年2月取材のものに基づきます。価格、商品の有無などは時期により異なりますので予めご了承下さい