岡崎慎司「『まだ現役でやっているの?』と言われる選手になる!」

ワールドカップロシア大会後、代表引退を表明する選手が相次いだなか、岡崎慎司は2022年のW杯を目指すと宣言。コパ・アメリカで、約1年ぶりに日本代表に選出されたストライカーの魂を伝える短期連載「岡崎慎司 挑戦の心得⑤」。


「もう33歳。難しいだろう」と言われたとしても気にはならない

7月30日、スペインの古豪、マラガとの契約が発表された岡崎慎司。自身初めてのスペインリーグ、そして2部でのプレーとなるが、「カテゴリーは関係ない。スペインでサッカーをしたかった」と意気揚々と話す。

成長のために必要な「壁」を探すために、環境を変える。岡崎の経歴を見ていると、「環境を変えること、変化に対して、躊躇がない」という印象が強い。エースとしての立場を確立した清水エスパルスから、ドイツへ渡ったときもそうだし、プレミアリーグへ渡ったときも同じだ。マインツで2季連続二桁得点をマークして、レスターへ移籍した当時の岡崎は、そんな自身の過去を打ち消すような発言をしている。

「ブンデスリーガでの経験、マインツでの記録。そういうものは関係ない。気持ち的にはゼロからのスタートだと感じている」

過去の実績も一旦は白紙に戻す。それが岡崎慎司流の挑戦の流儀だ。

もちろん、経験にもとづき、身に着いたスキルが消えるわけではないし、そのスキルこそが岡崎の武器とも考えられる。実際、年齢的に考えれば、未来よりも過去に対しての評価が、価値となるはずだ。けれど、それに寄り掛かってしまいたくないと岡崎は思っているのだろう。新天地へ飛び込むうえで、過去は自信を与えてくれるが、それに縛られてしまえば、変化の可能性は小さくなる。真っ白な状態であれば、その環境に染まりやすい。そうすることで、未知の自分が引っ張り出される。

「僕はアスリートとしてはストイックなタイプじゃないからこそ、環境を変えることで刺激を得続けたいという欲求がある」

以前、岡崎に、自身のキャリア形成について訊いたとき、そんなふうに話していた。できるという確信は、満足感よりも、「次の挑戦」への欲を駆り立てるのだ。レスターでは、初年度にリーグタイトルを獲得した以降、チームで求められる仕事を果たしているという手ごたえもあったし、一定の評価も得ていた。けれど、それに甘んじるつもりはなく、移籍の機会は、2シーズン目以降ずっと秘めていた野心だ。なによりも、得点と決めるというストライカーが望む仕事はできなかった。乾いた心を潤すのは、自身の未来について想うことだ。

「世界には数多くのチームがあり、国によってサッカーのスタイルも違うし、監督やチームメイトが変われば、僕が求められるサッカーも今とは違う。今までプレーしたことのない、スペインやイタリアへ行けば、もっと僕が活きるチームがあるかもしれないし、また違う自分に出会えるかもしれない」

そして、念願だったスペインの舞台に立つチャンスを得た。2部という未経験のカテゴリーということも気に留めなかった。昨季プレーオフで1部昇格を逃したマラガには、1部昇格という現実的な目標があり、モチベーションを刺激してくれるはずだ。

ドイツと英国プレミアリーグではそのサッカーに共通点も多い。しかし、スペインともなれば、選手の気質やサッカーの美学にも違いがあるだろう。でもきっと岡崎は、そういう困難を楽しいと受け入れるに違いない。

「レスターへ移籍したとき、『岡崎はプレミアリーグでは通用しないだろう』と言われたように、今回も『もう33歳。難しいだろう』と言われたとしても気にはならない。逆にそんなふうに言われることが嬉しい。『覆してやるぞ』と素直に思えるから」

昨今のJリーグではちょうど脂が乗った年齢とされるが、欧州サッカー界での33歳は、引退へのカウントダウンを考える年齢だ。にも関わらず、岡崎の欲に衰えはない。

「『岡崎ってまだ現役でやっているの?』って言われるような選手になりたい。それが『欧州でやっているのか』となれば、最高ですね」

マラガとは1年契約。時間に余裕はない。立っているのは崖っぷち。でも、だからこそ燃える。

環境の変化を恐れないのは、適応できるという自信があるから。馴れない場所だからこそ、苦境も「あって当然」と受け入れられる。どんな苦闘ができるのかと岡崎は、胸躍らせているだろう。

Shinji Okazaki
1986年兵庫県生まれ。2018年、ロシアワールドカップのメンバーに選出され、W杯3大会連続出場を果たす。2019年、キリンチャレンジカップのメンバーに選出され、森保体制での代表初招集。コパ・アメリカ2019のメンバーにも選出された。国際Aマッチ 115試合 50得点 (2019年6月1日現在)。


Text=寺野典子