【小山薫堂×小池アミイゴ】羽田空港で見たあの言葉の意味は? 旅する日本語⑦「生ひ優る」

今から飛行機に乗ろうと、羽田空港の出発チェックインロビーで頭上を見上げると、 壁面に巨大なアートギャラリーが広がっているのに気づくはず。それは、旅と日本語をテーマにした「旅する日本語」展。放送作家・脚本家の小山薫堂さんが耳慣れないけれど美しい日本語をもとに、旅にまつわる小さな物語を執筆し、 イラストレーターの小池アミイゴさんが絵画を描いたアートプロジェクトだ。このシリーズは、ふたりが作品に込めた想いを綴ったアナーザーストーリー全11集。


生ひ優る

ふるさとの両親に
初孫の顔を初めて見せに行ったあの日、
乗った飛行機はプロペラ機だった。
やがてプロペラ機がジェット機に変わった頃、
息子はひとりでふるさとの
じいじとばあばを訪ねるようになった。
そしてこの春・・・
息子はもうすぐ受け取る初任給をはたいて
ふたりを東京に招く計画を立てている。

【おひまさる】
成長するに連れて素晴らしくなる。美しく成長する。


Kundo's Another Story
成長するにつれて素晴らしくなるという意味を考えてみた時に、子供が成長していくことと、飛行機が進化していくことを重ねたいなと思いました。だから文中でもプロペラ機から、ジェット機になっているんです。

それから、生ひ優るという文字に“優しい”と入っているから、この孫はすごく優しい子に育ったんだな……ということを表現するために、もうすぐ受け取る初任給をはたいておじいちゃんおばあちゃんを東京に招こうとしているストーリーにしました。

成長するにつれて優しさが増していくというイメージです。


Amigo's Another Story
塩釜の復興市場で出会った養殖漁を営むご一家の長女さんは、津波から家族は助かったけど、店は流されてしまったと語りました。それでも養殖は再開させなければならず、海に出て、しかしやるせない気持ちで空を見上げていた、と。

そこには以前と変わらずカモメが飛んでいて、そのあっけらかんとした姿に癒された。そう語った口調がハツラツとしていてね! 彼女が見上げた空に出会ってみたくなり、僕も観光船に乗ってみました。辛いことがあってもこうして空があって、カモメが飛んでいて……。帰るべき場所を持っている人は強いなと思いました。

清々しさの背景に、生きる誇りや逞しさを込めて描いた絵です。画面を横切るカモメたちはどこかに向かっているようで、しかし、帰る場所を持っているんです。


旅する日本語展 2018
国内線第1旅客ターミナル2階南北出発チェックインロビーにて「11」の日本語をテーマにした放送作家・脚本家の小山薫堂による旅の物語と、イラストレーターの小池アミイゴが色鮮やかな絵画を展示中(2019年の3月31日まで)。旅の物語と写真を全国から募集する「旅する日本語投稿キャンペーン」も、7月2日から開始予定。詳しくは公式HPまで。
https://event.tokyo-airport-bldg.co.jp/tabisuru/

Text=加藤久美子(ゲーテWEB編集部)