“応援購入”という新しい買い物文化を! ~Makuakeで買うということ(前編)

資金を募りたい事業者や団体が、インターネットを通じてサポーターを集める“クラウドファンディング”。この仕組みを使って、新たな買い物のスタイルを提案するのがMakuakeだ。「寄付のイメージが強いからビジネスとして成り立たないよ」 という周囲の声をバネに試行錯誤を重ね、創業からわずか6年で東証マザーズ上場(2019年12月)を果たした。そんなMakuakeが提案する、新たな買い物文化とは?

“応援購入”という買い物文化を浸透させたい

「アタラシイものや体験を応援購入しよう。」というキャッチコピーで、プロジェクトの実行者とサポーターをつなぐプラットフォーム、Makuake。実行者は、サイト上で企画中の新製品の特長や開発の背景や、込めた想いを紹介する。掲載された製品やサービスを見て「欲しい! 応援したい!」と思ったサポーターは、プロジェクトを応援購入する。つまりMakuakeを使えば、購入者が確約されてから実際に商品作りができるため、資金の少ないスタートアップ企業や中小企業、思い切ったチャレンジがしづらい大企業もリスクを抑えて商品を生み出すことができるのだ。

Makuakeでは、サイトを通して事業者とやりとりができる。まさに顔の見えるモノづくりが行われる。

従来の「商品ができました! 買いませんか?」というスタイルではなく、構想の段階で、プロジェクトに込めた想いやこだわりをサイトで紹介し「こんな想いを込めたのですが、どうですか? 応援してくれませんか?」と、呼びかける。まさに作り手と買い手が協同で商品を作り上げるのが、”応援購入”というMakuakeの提案する新しい買い物文化なのだ。

Makuakeのサイトはシンプルな仕様だが、思わず応援したくなる仕掛けが散りばめられている。単なる商品の紹介ではなく、なぜつくろうと思ったのか、どこにこだわったのか、何に苦労したのか、という物語が事業者の言葉で綴られている。作り手の写真や動画もアップされているので、自然と作り手の熱量が伝わってくる。

また、事業者の近況が「活動レポート」として随時更新されるので、進捗状況も事細かに知ることができる。一方、サポーターは「応援コメント」として要望や感想なども書き込めるため、商品が手元に届くまでの過程を一緒に楽しめるというわけだ。サイトでは、事業を応援しているサポーターの人数や集まった金額も分かるため、まさにチームとなってプロジェクトを盛り上げている。

2013年8月にMakuakeのサイトがオープンして以来、7年間でのべ1万を超えるプロジェクトが誕生し、200億円以上がサイトを通して応援購入された。2019年12月には東証マザーズに上場を果たし、今月14日からはテレビCMもスタート。マクアケはまさに飛ぶ鳥落とす勢いで成長を遂げているのだ。

そんなマクアケを率いる創業者で代表取締役社長の中山亮太郎氏は、これからの時代において”応援購入”という消費スタイルは、ますます求められてくるようになると感じている。

マクアケ代表取締役社長の中山亮太郎氏。1982年生まれ。2006年サイバーエージェント入社後、新規メディア関連事業、ベトナム投資事業などを経て2013年にマクアケ創業。

事業者にとって、サポーターにMakuakeで買ってもらうということは、“応援してくれる顧客を見つける”という感覚が近いと思います。今までの、単純にものを売っていくという訳でもなく、頑張って! という声を集めるのとも違う。『ストーリーや背景に共感することで、応援の気持ちを込めて買ってもらう』という買い物スタイルを浸透させたいと思っています」

現在は、月に400以上の新プロジェクトが誕生し、100万人以上が会員登録する注目サイトに成長した。しかし、サービス開始当初は周囲の理解が得られず、資金ショート寸前の繰り返し。毎日が綱渡りだったという。

そんな綺麗事はビジネスとして成り立たない

中山氏がMakuakeの構想を思いついたのは、2010~13年までサイバーエージェントグループでベトナムでのベンチャーキャピタル事業を担当していた時だったという。当時日本では「物が売れなくなっている、デフレだ」などと言われていたが、世はiPhoneブーム。Appleはベトナムでプロモーションをしていなかったにも関わらず、どうにかiPhoneを手に入れようと必死になっているベトナムの人たち姿を見て、中山氏は危機感を覚えたという。

海外に住んで、『日本は作る能力もアイデアもあるのにお蔵入りしすぎている』と感じていました。ニュースでは、クールジャパンとか、モノづくりが世界を席巻なんて言われているが、実際に海外に住んでみると、iPhoneばかりが人気で、日本の製品が注目されている実感がまるでなかったんです。なぜ日本でiPhoneが生まれないのか考えたとき、 面白いものや、新しいコンテンツが生まれそうになっても、思い切ったチャレンジをしづらい風潮があると感じました。大量生産、大量消費の文脈が強く、面白い発想があってもリスクばかりを気にして前に進めない。これを何とかできないかと思っていたんです」

この漠然とした思いを事業にできないかと考えた中山氏は、2013年4月3日、帰国したその日に、サイバーエージェント同期の坊垣佳奈氏と、以前同じプロジェクトで苦楽を共にした木内文昭氏にアポイントを取った。

誰とやるか、どのチームでやるかってすごく大事だと思ったんです。経営者というと、どこに投資するかが大事だと思われがちですが、それは違っていて、どの経営チームに投資するかということが重要なんだと思いました。僕の直感は当たっていて、相談した2人が同じようなことを考えていたことが分かったんです。このメンバーなら何かできるかもしれないと」(中山氏)

マクアケの共同創業者で取締役の坊垣佳奈氏。2006年にサイバーエージェント入社後、3つの子会社立ち上げに携わる。マクアケでは、キュレーター・広報部門をはじめ全国の金融機関や地方自治体などパートナーとの連携の責任者も務める。

私は当時、広告の領域にいたので、資金力のある事業が、より売れるようにするための手法は理解していました。つまり、資金力のない事業は、広げることができない。お金を持っているか否かではなく、よいものがきちんと注目されて広がる仕組みを作りたいと思っていたんです」(坊垣氏)

法人営業の経験が長く、現場の声を身近で聞いてきた木内氏は特にその思いが強く、このメンバーなら理想の世界を実現できるかもしれないと感じていた。

「想いがあっても資金がないから断念するというお客様を多くみてきました。そんな姿を見て、『やりたいことがある人がいて、それを世の中に問うて、応援してくれる人を集めることができる世の中がフェアだし、そういう世の中を作りたい』と常に思っていました。なおかつ、中山と僕は新規事業を共に立ち上げた経験がある。僕も新規事業がMakuakeで4つ目になるのですが、このベースがあるメンバーがいながら、中山は投資、坊垣はPR、僕は法人営業と、それぞれ得意分野が違う3人だというのも後押しになりました」(木内氏)

 共同創業者で取締役の木内文昭氏。リクルートグループ、ベンチャー企業を経て2009年にサイバーエージェント入社。大手メーカーと共に新製品の企画からMakuakeでのアウトプットまで伴走する「Makuake Incubation Studio(MIS)」の事業責任者を務める。

それぞれの想いを共有し、「ネット上で資金を集める」という、いわゆるクラウドファンディングの仕組みを活用したプラットフォーム事業を行うマクアケを2013年5月に設立。しかし周りから聞こえてきたのは「そんな綺麗事はビジネスにはならない」という厳しい意見ばかりで、一筋縄では行かなかった。

それというのも2008年にアメリカの事業会社が始めたクラウドファンディングは、日本では2011年の東日本大震災の復興支援事業として活用されはじめたこともあり、“クラウドファンディング=寄付”といったイメージを持つ人がほとんどだったのだ。

プロジェクトの実行者を募ろうと、多くの企業を訪問しました。でも『NPO法人としてなら成り立ちそうだけど……』『産業界では、募金のイメージだと辛いんだよね』など、聞こえてくるのは厳しい意見ばかりで。漕いでも漕いでも、空中を漕いでいるような感覚で、全く手ごたえがありませんでした。でも運動量だけはすごかったですね。アポイントに行った数や、いろいろな人に話を聞きに行った数は尋常じゃないくらい。ちょっと極めて異質なゾーンに入っていました。あの運動量がなかったらチャンスポイントを逃していたと思います」(中山氏)

手ごたえがつかめないなか、日に日に減っていく資金。が、中山氏の言う”尋常じゃない運動量”が、Makuakeがブレイクする糸口となっていく――。

後編に続く

Text=田中美紗貴(ゲーテWEB編集部) Photograph=太田隆生