【特集サイバーエージェント】経験ゼロでもヒット連発! 徹底したユーザー目線の秘密とは?

藤田 晋率いるサイバーエージェントは今年で創業20年。いまや社員数4500人以上、IT業界のリーディング企業だ。サイバーエージェントとはどんな会社か――という問いに対し、多くの人が「人材」の会社だと答える。そこでサイバーエージェントで活躍するキーパーソン8人にインタビュー。第2回目はAbemaTVのプロデューサーで、29歳のときにサイバーエージェント女性初の執行役員を務めた横山祐果さん。サイバーエージェントの強さとは何なのか――。


サイバーエージェント女性初の執行役員

サイバーエージェントが注力するAbemaTVのオリジナル番組に、人気を博する恋愛リアリティショー「オオカミくんには騙されない」シリーズがある。既にシーズン4を迎えた同番組のプロデューサーを務める横山祐果さんは、見た目通りの柔らかな物腰と口調で「今でもわからないことだらけです」と日々の仕事を振り返る。

スマホゲームの企画・運営からインターネットTV番組のプロデューサーへ。それ以前には、29歳でサイバーエージェント女性初の執行役員も務めた。変化の激しい仕事人生にもまったく動じることなく、しなやかさを保ち続けられる理由はどこにあるのか。

「AbemaTVには立ち上げのときに異動し、もう2年ほどになりますね。それでもテレビ番組に携わってまだまだ経験が浅いので、プロデューサーと名乗っていいのかなという気持ちで。いまだわからないことだらけで、周りの人に教えてもらいながら進めているのが現状です。

これでも少しはマシになったほうなんです。最初は何がわからないかもわからないありさまでした。でも、そこで遠慮しないのは私の性格でしょうか。わからないまま進めて後で周囲に迷惑をかけてしむくらいなら、『わからないので、教えてください』と素直にお願いをします。

ただし、何もわからずお願いするからには、こちらがノーアイデアで相談するのはやめようと心がけています。『こんなこと考えているんです、どうでしょう』とか、『こうしてみたいんですけど可能ですか?』といったように、自分でやりたいことをきちんと固めてから、相手にぶつかるようにしています。

プロデューサーとしてはまったく頼りないなと思われているでしょうけど、それは事実ですし。不必要なプライドよりも、みなさんの力に頼りながらいいものをつくる、それが私にできる唯一のやり方なんです」

女性初の執行役員ときくと、イメージするのは自ら道を切り拓いていく、バリバリ働く女性をイメージしてしまうが、横山さんは、どちらかというと癒し系の人。いつも自然体だ。

学生時代はもともと出版社志望だったが、就活の過程で希望は叶わず、サイバーエージェントへ新卒入社した。

「入社の決め手は、若いうちにいろいろ経験できそうな環境なのがいいなと。インターネットに特別詳しいというわけではまったくなかったので、入社時はこういうサービスをつくりたい! といった思いまで至っていませんでした」

入社当初は「アメーバ」のプラットフォーム運営の仕事をした。2年後に志願して、新設されたモバイルゲームのチームへ異動。プロデューサー職という立場だった。

「世界観のあるものをゼロから立ち上げてつくるということを経験したかったからです。ただ、ゲームについても詳しいわけではありませんでした。周りはプロフェッショナルが揃っているので、自分の実現させたい世界観だけはブレないようにしっかり持っておいて、あとはなんでもみなさんにアイデアを聞いて進めていくのを実践しました。そう、以前から仕事の進め方は変わっていないんです」

そうして生まれたのがモバイルゲーム「私のホストちゃん」やスマホゲーム「ガールフレンド(仮)」だ。どちらも多くのユーザーを獲得して評判を呼ぶ。その間に藤田社長から推挙され、29歳で執行役員にもなる。ヒット作を立て続けに生んだプロデューサーであり、常に自然体であるというの決め手だった。

ゲームにさして詳しくなかったというのに、なぜユーザーの心をつかめたのだろうか?

「どうなんでしょう。これだけ周りのたくさんの人の力を借りてつくったものなので、ヒットさせなければ申し訳なくてしかたないとの思いは強かったです。それで、多くの人に遊んでもらえるサービスにするためにやれることはすべてやろうと決意しました。宣伝のバナーのデザインや、広告の文言ひとつにしても手を抜かず人の心に響くものは何かとこだわり続けました。あそこで全力を尽くさなかったからうまくいかなかったのかな、と後悔したくなかったんです。そういうところは異様なほど負けず嫌いなんですよね」

実現したいビジョンだけは、何があっても譲らない。それもプロデューサーであるかぎり、貫こうとしていることだ。

「いまの『オオカミくんには騙されない』なら、女子高生ならみんな観ている番組を作りたい! というビジョンを最初に決めて、スタッフのみなさんにもその思いを共有して、そこだけは変わらないように気をつけてきました。それを守りながら、細かい部分を詰めていく。

内容は高校生を中心とした恋愛リアリティショーなのですが、参加男性の少なくともひとりがオオカミくんとして嘘をついていて、女性に好意を持っているように振る舞います。番組を観てくれた人が、日常生活でも『あいつ、オオカミくんだよね』なんて会話をしてくれるところまで浸透したら嬉しいです。どうすれば番組を見た人の間で話題になるのか、インターネット上で拡散するのか、こちらからその仕組みをどんどん考えないと」

いついかなるときも、ユーザー目線でサービスを考え続けている。そんな彼女の仕事ぶりを見て、藤田社長は彼女のことを「プロデューサーの鑑」と称した。プロデューサーは天職だろうか?

「自分で天職と言っていいものかどうか……。でも、ユーザーと同じ感覚でコンテンツをつくっていくことだけは、これからもきっと変わりませんね」


Yuka Yokoyama
2008年、新卒で入社。プロデューサーとして企画・運営したモバイルゲーム「私のホストちゃん」が人気を博す。その後、スマホゲーム「ガールフレンド(仮)」をヒットさせ、29歳で同社初の女性執行役員に就任。’16年より「AbemaTV」の制作部門へ異動、プロデューサーに。自身が企画した「オオカミくんには騙されない」などの番組が大ヒット。著書に「フツーの女子社員が29歳で執行役員になるまで (仮)」がある。

Text=山内宏泰 Photograph=太田隆生


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