睡眠の専門医が伝授! ビジネスパーソンのための"睡眠負債"解消術【前編】

PRの力で5年間で年商を120倍に推移させた実績を持つ、ikunoPR代表・笹木郁乃さん。SNSを駆使したビジネス戦略でも注目を集める笹木さんが、日々仕事をするなかで「もしビジネスパーソンにこんなスキルが備わっていたら、役立つのでは……⁉」と感じたことを、実際にその道のプロにインタビューするシリーズ。第2回は、睡眠を研究して30年、世界で活躍するプロアスリートも診察に訪れるという、太田睡眠科学センター所長、千葉伸太郎先生に、なぜビジネスパーソンにとって良質な睡眠が必要不可欠なのか、語ってもらった。


良質な睡眠をとるために、普段から気をつけるべきこととは

笹木郁乃(以下、笹木) 私の周りでは、眠れないために、睡眠薬を使用している方もいます。やはり、眠らないよりは睡眠薬を使ってでも、強制的に眠ったほうがよいのでしょうか?

千葉伸太郎先生(以下、千葉) 眠れないという場合、それは睡眠障害の可能性があります。睡眠障害と診断を受けた場合は、睡眠薬を含めた適切な治療を行う必要がありますね。ですが、健康な方の場合、睡眠薬を使う必要はありません。むしろ、健康的な睡眠をとっているとは言えないことになります。基本的に、睡眠薬での睡眠は、私たちが自然に入眠する仕組みとは違います。健康な人は、睡眠薬には頼らないようにしましょう。

笹木 自然に眠りにつく、ということがポイントなのですね。では、よく言う"寝だめ"は効果的なのでしょうか? 平日、睡眠時間が足りない方が、土日に睡眠をしっかりとることで、平日の睡眠時間を補えるのでしょうか?

千葉 ある程度は補えると思います。というのも、例えば毎日本当は8時間の睡眠が必要な人が、通勤や残業で6時間しか睡眠がとれないとします。すると毎日2時間、睡眠時間が足りないわけですから、平日5日間で合計10時間分、睡眠時間が不足していることになります。それを土曜日と日曜日で各5時間ずつ、普段の時間に加えて多く眠らないと補いきれない。もともと必要な睡眠時間が8時間だとすると、土日は13時間眠らないといけません。これは、現実的には難しいことですね。実際に、必要な睡眠時間を必ず取ることができるという人はあまりいないので、ほとんどの方が何らかの形で睡眠時間が足りない状態を積み重ねていくことになります。

笹木 なるほど。そういえば、この間「毎日3時間睡眠で平気です」というショートスリーパーの方にお会いしたんです。それを聞いて、いいなぁ、と思ったのですが。ショートスリーパーになれる方法はあるのでしょうか。

千葉 それは難しいと思います。必要な睡眠時間というのは遺伝子レベルで決まっていますので、変えることはできません。成長と共に必要な睡眠時間は変わっていきますが、基本的には微々たるもの。ショートスリーパーは、もともと生まれ持った才能です。一般的には、睡眠時間を満足にとれない日々が続いていくと、日々のパフォーマンスも徐々に低下していきます。恐ろしいことに、私たちは、寝不足が原因でパフォーマンスが下がっているということに、気がつかずに過ごしていることがほとんど。それが、"睡眠負債"と呼ばれる状態です。

知らぬ間にパフォーマンスが低下する! 侮れない"睡眠負債"の恐怖

笹木 睡眠不足が蓄積されていく現象を指す、"睡眠負債"って本当に怖いな、と思います。睡眠負債をため続けると、ビジネスパーソンにとって、どのような悪影響が出るのでしょうか。

千葉 ビジネスパーソンの皆さんは、忙しさゆえ、つい睡眠時間を削りがちだと思います。ところが、睡眠不足の状態が続き、"睡眠負債"が貯まっていくと、集中力の低下から、ミスを引き起こしやすくなってしまいます。せっかく寝る間を惜しんで頑張っていても、睡眠不足のせいで本来の力が発揮できていないかもしれないということです。

笹木 仕事の効率を上げるために頑張っていても、睡眠不足のせいでパフォーマンスが低下してしまっているとしたら、恐ろしいですね……。

千葉 興味深い実験があります。睡眠時間と、反応時間・パフォーマンスの程度の関係性を調査したものです。徹夜を2日間した人、4時間睡眠の人、6時間睡眠の人、8時間睡眠の人で、徹夜の人以外は2週間、実験を続けました。そうすると、毎日8時間睡眠の人はミスの量が初日から大きく増えることはありません。ところが、4時間睡眠の人は、日に日にミスが増えていく。

笹木 なるほど……。 徐々に、睡眠不足がパフォーマンスに影響を及ぼしていくのですね。

千葉 はい。注目すべきは、6時間睡眠の人。実は、6時間睡眠の人たちもミスが徐々に増えていったのです。そして、2週間経つと6時間睡眠の人でも、徹夜をした人と同等レベルのミスを起こすようになりました。

笹木 ええ! でも、6時間睡眠って平均的だと思うのですが。

千葉 そうですね。問題は、6時間睡眠の人は自分が睡眠不足だと自覚していないということなんです。

笹木 たしかに、十分寝たと感じている人も多そうです。

千葉 先ほどの実験でも、4時間睡眠の人は、ミスが増えてきた原因に睡眠不足が関係していることを認識できます。ところが、6時間睡眠の人は自分が睡眠不足だと認識するのはなかなか難しいのです。もし、6時間睡眠でも、パフォーマンスが落ちなければその人にとって6時間睡眠がベストだということになります。ところが、2週間続けて、だんだんミスが増えていったということは、その人にとって必要な睡眠時間は6時間ではなかったということになりますね。このように、睡眠不足のせいで、自分が本来持っている最大限の力を存分に発揮できていない人たち、そして、そのことを自分自身で認識できない人たちも多いのではないか、と思います。

笹木 それは、特にビジネスパーソンの方たちにとっては寝耳に水だと思います。睡眠不足だという認識がないのに、実は自身に必要な睡眠が十分でないため、仕事のパフォーマンスが下がっているのだとしたら、もったいないですね。

後半では、具体的な改善法を紹介します!

Shintaro Chiba
医学博士。太田総合病院記念研究所太田睡眠科学センター所長をはじめ、慈恵医大客員教授、日本睡眠学会睡眠医療認定医、日本睡眠学会理事(事務局長)、一般社団法人 良質睡眠研究機構(iSSS)の常務理事を務める。睡眠について30年以上、研究を行ってきた日本の睡眠学の第一人者。

Text=雨野千晴 Photograph=坂田貴広

笹木郁乃
笹木郁乃
宮城県出身。ikunoPR代表。「エアウィーヴ」、「バーミキュラ」2社の飛躍にPRで大きく貢献した後、2016年2月に独立。2年で、約600名の経営者・起業家に対して、PRについて直接指導。 日本唯一の「PR塾」主宰。1期〜11期(定員30名)まで毎回満席・キャンセル待ちの人気に。その他、メディアとのアカデミー設立、企業や政府支援団体のPRプロデュースなどに力を入れる。
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