【吉川晃司インタビュー】「ストイックだとは思わない。最低限のことをやっているだけ」

まもなくデビュー 35 周年を迎え、昨今は役者としての存在感も際立っているロックミュージシャンの吉川晃司。「見得を切りながら突っ張ってきた」という言葉には、ぶれることなく自分の美学を貫く男の生き様がある。


摩擦の多い人生を送ってきた

美しい立ち姿から、一転、しなやかに躍動する肉体。「静」と「動」の両方で、これほど絵になる男もいないだろう。ドラマ『下町ロケット』の"財前部長"の頼もしさと、ロックミュージシャンとしての華やかさが、吉川晃司というひとつの身体から見事に放たれている。

ステージでの激しいパフォーマンスを完璧にこなすべく、今も日々のトレーニングを欠かさない吉川。取材当日も、スポーツクラブで泳いだ後、撮影スタジオまで歩いてやってきた。

主演を務めた時代劇『黒書院の六兵衛』の撮影では、伝統ある「弓馬術礼法小笠原流」を学び、流鏑馬のシーンなども自らこなした。そんなことができるのも、絶えず自身を鍛え続けてきたからに他ならない。だが本人は、「特別なことをやっている意識はない」と平然と語るのだ。

「だって周りには僕より年上で、もっとキツいメニューをこなしている人も少なからずいらっしゃいますよ。自分がやっているのは、あくまで最低限。ストイックだとか記事で書かれることも多いけど、全然そんなことはないんです(笑)。

ただ、見得を切りながら突っ張って生きてきたから、つい余計なことを言って後に引けなくなることが多い。『尻に火がつく』っていう言葉がありますけど、僕の場合は自分で火をつけてしまっているんです(笑)。そうやって逃げられなくなると、もう迷う必要がなくなる。やるしかないんだって」

トップ画面:ジャケット¥240,000[スーツ価格]、ネクタイ¥25,000、ベルト¥39,000(すべてジョルジオ アルマーニ) ニット¥140,000(イザベル・ベネナート/ユニット& ゲストTEL:03・5725・1160)、T シャツ¥13,700(ラペルラ/ラペルラジャパンTEL:03・6438・9700)、パンツ¥29,000(エンポリオ アルマーニ/すべてジョルジオ アルマーニ ジャパンTEL:03・6274・7070) 時計はともに¥3,250,000(ピアジェ/ピアジェ コンタクトセンターTEL:0120・73・1874)

ありふれた言葉に換えれば、「自分を追いこむ」という状況が、吉川の場合は日常になっているのだろう。そんな吉川が人生で最も投資をしたものは、やはり"フィジカル"ということになるようだ。

「ステージに立ち続けるために、というのはもちろんだけど、今日みたいな撮影の時にも服に恥ずかしくない肉体じゃないといけない。"本物"を纏わせていただくんだから、それに見合った中身でありたいじゃないですか」

一方で読書家としても知られ、とりわけ中国古典など、歴史物への造詣は深い。

「本を読んで得た知識っていうのは誰にも盗めないもの。ただ、知識は知恵に変換できた時、初めて武器になるのではないか。単に読むだけじゃ意味がないし、もったいないですよね。そういう意味では、僕は形がないものへの投資が多いんだと思います」

間もなく、デビュー35周年。決して平坦ではない芸能生活を送ってきた。

「失敗は数え切れないほど、してきましたよ。でも、失敗をたくさん乗り越えてきた者、そのほうがきっと強いと思っている。履歴書にも『失敗歴』という欄をつくったほうがいいんじゃないかというのが持論なんですけど、この意見、ほとんど賛同を得たことがないんです(笑)」

本人曰く「摩擦の多い」人生を歩み続ける吉川晃司。彼にとっては苦い失敗や多くの傷もまた、自己への投資なのだろう。

Koji Kikkawa
1965年生まれ。’84年に映画『すかんぴんウォーク』で主演デビューし、同時に主題歌「モニカ」で歌手デビュー。以来、現在までロックミュージシャンとして第一線で活躍。俳優としても数々の作品に出演し、唯一無二の存在感を示している。2019年2月1、2日に、日本武道館にてデビュー35周年記念ライヴを
開催。

Text=用田邦憲 Photograph=秦 淳司 Styling=黒田 領 Hair & Make-up=MAKOTO(juice)