【社長インタビュー】日本エレクトライク松波太郎社長 EV三輪車でアジアを制す

2030年までに内燃機関(エンジン)自動車の販売を禁止する。今年5月、ドイツ連邦議会で採択された決議案は、ショッキングなものだった。オランダやノルウェーなどもドイツに近い内容の法制化を進めるなど、ドイツ発のこの動きはヨーロッパ全体へ波及しつつある。EV化の波が加速するこの時代にあって、日本の企業はどのように対応するのだろうか? 


電気で走るEV三輪車に特化したユニークな企業

内燃機関が禁止ということになると、注目が集まるのはEV(電気自動車)とFC(燃料電池車)だ。燃料電池は「電池」とあるから誤解を受けやすいが、正しくは発電装置。水素を燃料にして発電しながらその電気で走る、一種の電気自動車だ。ただし発電を行うぶん仕組みが複雑になるので、近距離移動のコミューターはEVが主流になると目される。

そこで注目を集めるのが、2008年に設立された日本エレクトライクだ。トライクとは三輪車の意味で、電気で走るEV三輪車に特化したユニークな企業である。昨年秋、創業者である松波登氏からバトンを受けて社長に就任した松波太郎氏に、日本エレクトライクの戦略をうかがった。

昨年秋、創業者である松波登氏からバトンを受けて社長に就任した松波太郎氏

——今年の夏のこの暑さ(註:取材日は都内で最高気温38度を記録)、地球温暖化の主犯と目されるCO2のうち、自動車が排出するのが全体の2割だという統計もあります。やはり、EVシフトは避けられないと考えますか。

松波 はい、その通りで、弊社では配達などに用いる三輪車をEVにすることで、環境負荷低減に取り組んでいます。

——現状での課題は何でしょうか?

松波 現時点で需要の小さい日本で作るのはコストがかかるということです。そこで、実際に三輪車の需要がある東南アジアに拠点を構え、そこで部品を調達して生産、そのうちの一定数を日本に逆輸入する方針に転換しました。

——確かに、アジアの町ではいまだにエンジン付きの三輪車が煙を吐きながら走り回っています。あれがすべて、静かで排出ガスのないEV三輪車に取って代わったら町が静かになり、排出ガスで覆われた空も青く晴れます。アジアのどこが拠点になる予定でしょうか。

松波 現在、何カ国かでパートナーシップをどのように結ぶかについて交渉中で、近いうちに発表できるはずです。以前はインドのタタと提携していましたが、インドの企業とも連携して部品調達をしていますが、適度な数量の部品を安く調達するという点においては、日本は圧倒的に不利です。

——日本では、不安定だったかつてのオート三輪のイメージも残っていますね。

松波 はい、われわれのEV三輪車は、後ろの2輪で駆動しますが、コーナーでは内輪差を考慮して、内側の駆動を弱め、外側を強くしてスムーズにカーブを曲がります。またEV化によって重い電池を荷室の床下に積むことになり、重心が低くなり安定性が増しました。ふたつの意味で、安定性は昔のオート三輪とは比べものにならないほど向上しています。

昨年からヤマト運輸でテスト運用中。トラックでの輸送よりも駐車で困ることはなく、狭い道でも対応できる。

——宅配用にEV三輪車を使うことの利点は何でしょうか?

松波 日本でライバルになるのは軽自動車のバンです。比べると、まず無音なので住宅街でも騒音で迷惑をかけることがありません。ランニングコストも現状では電気のほうが圧倒的に安い。扱いとしては250cc未満の二輪と同じなので車庫証明が不要で車検もありません。付け加えると、普通免許で運転することができます。

——アジアのパートナーが決まると、価格はいくらぐらいになるでしょうか?

松波 いま主力として扱っているのが160万円のモデルです。これが100万円を切るようになると、宅配ピザで使われているエンジンの三輪スクーターが60〜70万円なので、競争力が出てくると思っています。こういう時代なので、無音で排出ガスゼロのわれわれの商品は、企業のイメージアップにもつながるはずです。

——コスト面でネックになっている部品は何でしょう?

松波 やはりバッテリーが高いですね。弊社では日産自動車や三菱自動車出身の方に技術開発の指揮を執っていただいていまして、そのツテで国産のバッテリーを入手していますが、中国製のバッテリーも力を付けています。

——中国に負けないように開発しないといけない?

松波 逆です。中国がいいバッテリーを作ったら、それを利用してコストを下げようということも考えています。敵に回しても中国は人口もEVの数もケタ違いに多いので、勝ち目はない。どう提携していくかがポイントだと思います。

——中国に負けるな、ではなくて、中国と上手に提携する。その考えは非常に新鮮に感じました。

松波 バッテリーは内燃機関と違ってまだ伸びしろが大きいし、宅配用の車両は決まったエリアを走り、使わない時は決まった保管場所に駐車するから充電もしやすい。これから、大いなる可能性があると思っています。

移動書店としてEV三輪車を使用する企業もある。
Taro Matsunami
1985年生まれ。トラック用のバックモニターで成功を収めた父、松波登氏を父に持つ。父の影響で幼少からクルマ好き。大学卒業後はホンダの関連会社で3年勤務し、家業に入る。2017年9月、日本エレクトライクの社長に就任。

取材を終えて、中国やアジア諸国と競うのではなくて、上手に提携して共存していこうという姿勢がしたたかだと感じた。そして生産と販売の拠点を築いてから、日本にも逆輸出する。まずアジアを制するというビジネスモデルがどう動いていくのか、今後も注目していきたい。

Text=サトータケシ