日清食品の3代目・安藤徳隆社長が登場ー滝川クリステル いま、一番気になる仕事

8月25日は元祖インスタントラーメンと言われる「チキンラーメン」58歳の誕生日。3代目のその胸には、脈々と受け継がれる遊び心と現状に対する危機感が共存していた。今は非常識だと思われる食文化を、常識に変え、伝統にするべく奮闘する姿に迫る。

即席的な判断が命!いいと感じるものに大胆に振り切る

左:滝川クリステル ドレス¥130,000(シーエイチ キャロリーナ ヘレラ/シーエイチ キャロリーナ ヘレラ銀座店TEL:03-6274-6957)、ピアス¥1,680,000、リング¥970,000、時計¥2,680,000(すべてブルガリ/ブルガリ ジャパンTEL:03-6362-0100)、右:日清食品 代表取締役社長 安藤徳隆

潰される前に自ら壊し、次世代の食文化を創造する

滝川 今日は日清食品の社員食堂「KABUTERIA(カブテリア)」にお邪魔しています。株価によってメニューが変わるんですよね。昨年37歳で社長に就任されてから、ユニークな取り組みが続々発表されていますね。

安藤 もともと10年ほど前からCMやブランディングの責任者をやってきました。年配の役員に「理解できない」と怒られながら常に新しいコミュニケーションを模索してきて、ここ数年でだんだん成果が形になってきたところですね

滝川 今年でチキンラーメンが発売されてから58年。カップヌードルは45年。それだけの伝統を持ちながら、築き上げたブランドイメージを自ら率先して壊す社風であることを、意外に思われることも多いのでは。

安藤 そうですね。創業者である祖父(安藤百福氏)がまず、「クリエイティブこそすべて」という人間でした。市場競争に晒(さら)されて潰される前に自分が壊して新しいものをつくっていけ、と。ですから社内でもブランドファイティングを推奨しています。社内競争で勝てないものが市場で通用するわけないので、チキンラーメンやカップヌードルの足を引っ張るような新商品をつくるのが目標のひとつです。

滝川 株価連動型社食をつくったのも、社員に株価を意識してもらうためとうかがいました。

安藤 2020年に「時価総額1兆円」を目指す中期経営計画を発表しました。達成のためには、社員ひとりひとりが株価を意識し、企業価値を高めるために何をすべきか自ら考え、行動することが必要なのです。祖父も父も非常に危機感の強い人間で、甘えの構造が一番危ない、現状に甘んじるな、と常に言ってきたのですが、強いブランドがあるとどうしても甘えが出てしまう。自分も含め全員がもっと闘争心を持たなければ生き残れないと思います。

滝川 お父様とはもちろんのこと、お祖父様とも長い間、仕事で同行されていたのですよね。

安藤 亡くなる直前まで3年間カバン持ちで、起きてから寝るまで一緒にいました。96歳で亡くなったんですが、前日も会社にいましたし、その前の日は一緒にゴルフ。心筋梗塞でいわゆるピンピンコロリでしたから。

祖父から影響を受けたことば「細心大胆」

「CRAZY MAKES the FUTURE.」という理念は徳隆さんらしい合言葉。

滝川 ずっと一緒にいらして、大変だったことはありますか?

安藤 一日中とにかくずっと喋っているんですよ。自分の経験や苦労、思いのすべてを。脳みそをコピーしたい、と言っていたくらいで、それを黙って聞いているのが実は正直、一番苦痛でした(笑)。もちろん学びは大きかったのですが。

滝川 それだけ思いがあったということですよね。特に印象に残っている言葉はありますか?

安藤 繰り返しの話のなかで強く感じたのは「細心大胆」です。綿密に考え抜いて、行動は普通の人が考えもつかないところまで振り切って大胆に、いっさいの妥協なく。そうでなければ大きなことは動かせない。祖父が好んで書にも書いた言葉です。それから「仕事を戯(たわむ)れ化する」。
子供が遊ぶように、仕事を無我夢中で楽しむ方向に自ら持っていけ、という言葉も好きで影響を受けています。

死ぬまでにかなえたい人生夢のリスト

1.20年後の食文化を創造する
2.幼なじみのサッカーチームで国立競技場で試合をする
3.妻とスコットランドへ行き、愛するスコッチの蒸留所を巡る
4.ラジオの構成作家に転職
5.シャチの棲息地である、カナダのジョンストン海峡に移住

即席的なクリエイティブな閃き

滝川 インタビュー記事で読んだのですが、安藤社長はデザインも重視されていますね。

安藤 経営自体もデザインだと捉えているんですよ。一般的に社長業というとひとつの事業会社をマネジメントするイメージですが、僕はどちらかというとクリエイティブチェアマンみたいなイメージで仕事をしています。プロダクトから会社の組織、ブランドイメージまで、すべてをデザイン、コントロールするのが社長の仕事。そしてもちろん、面白くなければ意味がない。

滝川 ちなみにクリエイティブなアイデアって、どういう時に閃(ひらめ)くんですか?

安藤 誰かに話をすると、ストーリーとして考えが整理されたり、足りない要素に気づいたりすることが多いです。あとは何かを見聞きして面白いと感じた時、何が自分の琴線に触れたのかしっかり解析しますね。そうすることで思考が振られて、アイデアが降りてくる。

滝川 情報はノートか何かに記録したりされるんですか?

安藤 いえ、何十冊のアイデアノートを見返してる時間はないですし、そもそも自分の頭に残らない程度では通用しないじゃないですか。瞬発力という意味で即席的であることが、一番強いと思うんですよ。

滝川 やはり即席的であることが大事なんですね(笑)。

安藤 好きなスタイルなんでしょうね(笑)。

熱狂的なファンを獲得する新手法とは? 創業60周年記念を目前に、ハードボイルドコミックス社史「SAMURAI NOODLES」を製作中。創業者の安藤百福氏がサムライとして描かれる。日本発のブランドであることを意識してもらいたいという狙いどおり、イメージビデオが公開された途端、海外で反響を呼んでいる。

今非常識だと思われても、未来の食文化を築くミッション

滝川 クリエイティブチェアマン的な経営者って今後、増えていく予感があります。例えばスティーブ・ジョブズ氏も近いイメージですよね。ただアップルと違って、日清食品には伝統という強みもあります。そのあたりはどうお考えですか?

安藤 「今あるブランド価値の極大化」と「今はない新しい価値の創造」という、このふたつは分けて考えています。ロングセラーだから安心ということはなく、一般的に50年60年もすればブランドは衰退していくものです。100年生き続けるブランドであるためには、新規層へのアプローチが当然必要になってくる。CMなどの展開はかなり若年層を意識しています。

滝川 守りつつ、進化を続ける。

安藤 一方で、20年後の食文化を生み出すチャレンジも水面下で動いています。実は技術オリエンテッドな会社なので、食品の加工技術は競争力のひとつ。その強みを活かし、今あるインスタントフーズの概念や価値を超えていく。今非常識だと思われるような、未来の食文化を築き上げるというミッションで、僕の存在意義はどちらかというとそちらにあると思っています。

滝川 前代未聞の大きなプロジェクトが、着々と......。

安藤 はい、水面下で。20年後、もう一度対談してください。あの時、お話しした食文化はこれのことですよと、お伝えできるようにしておきますから。

滝川 20年後かぁ。きっと予想もつかないものなんでしょうね。発表を楽しみにしています。


Noritaka Ando
1977年大阪府生まれ。2002年慶應義塾大学大学院理工学研究科修了。07年日清食品(現・日清食品HD)入社。12年日清食品HDグループ経営戦略責任者などを経て、15年日清食品代表取締役社長に就任。元ラクロス19歳以下日本代表の経歴を持ち、錦織圭選手との契約を始め、スポーツマーケティングにも手腕を発揮。
滝川クリステル
滝川クリステル
Christel Takigawa 1977年フランス生まれ。WWFジャパン 顧問。東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会 顧問。一般財団法人クリステル・ヴィ・アンサンブル代表。現在、『教えてもらう前と後』(TBS系)でMCを務める。2018年、2度目となるフランス国家功労勲章「シュヴァリエ」を受章。インスタグラム:@christeltakigawa
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