今こそ耳を傾けたい! “勝負師”岡田武史・元日本代表監督の言葉~ビジネスパーソンの言語学91

最近、説明や謝罪時の、違和感のある言葉遣いが話題になりがちだ。当コラムでは、実際の発言を例にとり、公私の場で失敗しない言葉の用い方を考える。ビジネスパーソンのための実践言語学講座91、いざ開講!

「試合の勝ち負けを分けるのは『たった一回ぐらい』『俺一人ぐらい』という小さなゆるみであることがほとんどです」ーーー元サッカー日本代表監督の岡田武史氏

こうなってしまっては、どんなに嘆いても、誰かを批判していても仕方がない。いまはただじっと治療薬やワクチンの完成を待ちながら、感染を抑えるための努力を続けていくしかない。元サッカー日本代表監督の岡田武史氏は、自身がオーナーを務めるFC今治のHPでコメント。世界と戦ってきた“勝負師”らしい言葉で、今という時代との向き合い方を説いた。

「こういう危機に際しては、いろいろなことを考えず、シンプルに一番大切なことを全うするべきだと考えます。つまり、命を守ることです。そのためには、感染しない、感染させない。ワクチンができるまでは我々にできることはこれしかないと思います」

「『勝負の神様は細部に宿る』、試合の勝ち負けを分けるのは『たった一回ぐらい』『俺一人ぐらい』という小さなゆるみであることがほとんどです。新型コロナとの戦いも同じです」

サッカーに例えるなら、いまの日本は試合開始後にいきなり2点先制されたような状態だろう。このままいけば負け戦だ。でも戦いはまだ始まったばかりだ。大切なのは、次の1点を失わないことだ。我慢して耐えていれば、やがてチャンスも訪れるだろう。それまではチームの意識を徹底して、ゴールを守り抜くしかない。

緊急事態宣言が出て以降、繁華街からは人がいなくなった。だが、住宅街に近い商店街などには、「ここならいいだろう」とばかりに人が溢れている。もちろん多くの人は、危機感を持って外出を自粛しているだろう。だが、少ない人数でも、サッカーでいうなら11分の1であっても、そこに穴があれば、失点のリスクが大きく高まる。まさに「たった一回ぐらい」「俺一人ぐらい」が致命的な事態を招きかねないのだ。

もしこのままずるずるとパンデミックが広がっていくことを許したら、この国はすべてが崩壊してしまいかねない。経済が大切なのは、理解できる。だがいったん不況に陥ってしまうと、その回復には不況期間の3倍かかると言われている。事態が2ヶ月長引けば半年、半年長引けば1年半、苦しむ期間が伸びていくのだ。つまり、アフターコロナを考えるならば、とにかくいまは我慢して一刻も早く、この危機を脱することに集中したほうが得策なのだ。戦犯探し、責任のなすり合いは、すべてが終わってからやればいいことだ。苦しいのも、つらいのも、自分ひとりではない。とにかくいまは自分と他人の命を守る行動に徹するしかないのだ。

Text=星野三千雄