女優・松本まりか「旅も仕事も、自分がどういう思いを持って挑むかですべては変わる」

8月25日発売の表紙を飾ったのは、女優、松本まりか。遅咲きだが、際立つ個性と確かな実力でドラマに映画にと引っ張りだ。旅はライフワークのひとつだという彼女に今回提案したのが、心身をリフレッシュするための、近場で非日常を味わう旅。「自分へのご褒美みたい!」と彼女が訪れたのは高層ビルが建ち並ぶ大手町に凛と佇む「星のや東京」だったーー。

女優 松本まりかにとって“旅”の目的とは?

2019年の春、彼女は2ヵ月ほどの休みを捻出し、韓国、インド、ベトナム、タイを訪れた。以来1年以上、旅には出ていないという。

「自分にとって一番重要なのは仕事だから、忙しいのはものすごくいいことです。でも、忙しすぎて頭の中に余白がなくなると、旅に出たくなりますよね。だから今回の撮影は、ご褒美のようなお仕事だなって。仕事に支障のない範囲でパッと行ける東京のホテルで、旅と同じ非日常を体験できることにびっくりしています。昨日の現場では、みんなに『星のや東京に泊まるんだ!』って自慢しちゃいました(笑)」

彼女の旅の目的は、見知らぬ価値観に触れ、自分の枠を広げ、進化すること。旅先の宿は初日だけ予約して、その後は現地で出会った人から情報を集めて、流動的に旅をプランニングしていく。ベトナムでは仲よくなった女性の父親と、漁にも出たというから驚きだ。

「新しい感性を得て進化したいと思ったら、直感で選んだ本を2〜3冊旅行鞄に入れて、すぐに旅に出ます。好奇心の赴くままに行動したいから、今はひとり旅のほうが気楽でいいかな。旅で得たものが栄養となって、そのあとの仕事にプラスになるので、定期的に休みをいただくようにしています」

旅の効果か、仕事は絶好調だ。現在は、尊大な性格の令嬢役を演じる『竜の道 二つの顔の復讐者』と、お岩さん役でコメディに初挑戦した『妖怪シェアハウス』という2本のドラマがオンエア中。女性誌やバラエティ番組、音楽番組などからもオファーが続き、世間の松本まりかへの興味の大きさがうかがえる。ということは、必然的に、旅に出る時間がなくなってしまうわけだが。

「今は毎日、いろんな仕事の現場で旅をしている感覚です」

旅と同様に、新しいジャンルでの仕事は、自身を進化させてくれるものだという。

「私が知らなかった自分を、いろんなメディアで発見してもらえることが本当にありがたいので、皆さんからたくさん求めていただくのにふさわしい人間でありたい。そのために、今は自分個人の楽しみや快楽をすべて断っています。そうすることで仕事への欲望の質が高まって、自分自身が成長できると思うんです。漫然と、楽に、緩んだ生き方をしていたら、私が理想とする、心から美しい人間にはなれないので。今はすごく楽しい半面、必死に走っているという感覚ですね」

ストイックな彼女は、デビュー20周年に当たる2020年を「女優としての始まりの年」と捉え、新たに3つの日課をスタートさせた。それは、生まれて初めての日記と、韓国語の勉強と、身体をつくるためのトレーニングだ。

「東京に住んでたくさんのお仕事をしていると、どうしても感性が濁ってきてしまう。それをクリアにするもののひとつが旅ですが、今はできないので、日常的に自分に負荷をかけて、自分を律しています。そうすることで、ラッキーが巡ってくると思うんです。こういうご褒美を当たり前だと思わずに、心から幸せだと感じて、思いっきり楽しみたい。そのためには、自分の感性の純度を高めておくことがすごく大事だと思います」

この考えにいたるまでには、長いトンネルがあった。15歳で出演したデビュー作で「自分を唯一表現できるものがお芝居だ」と感じたことで、たとえ周りから評価されなくても、芝居をやめることができなかった。

「自分が求められていないという〈現実〉に自尊心を失くしましたし、いろんなものが壊れていきました。若くてやる気があるのに仕事がなくて、何をやっても退屈で、生きているのに死んでいたような時期もあります。ただ、どんな時でも、お芝居を好きだという自分のなかの〈真実〉だけは侵食されなかった。そこだけはブレることができなかったんです」

『ホリデイラブ』でブレイク後も、役のイメージで消費されないためにもがき続けた。コロナ禍のステイホーム中には自分に徹底的に向き合い、ネガティブな言葉で埋まっていた日記をポジティブな視点で書くようにしたことで、トンネルからようやく脱出できたという。

「例えば反省点だったら、『だから私はダメなんだ』ではなく、『気づけてよかった』と角度を変えることで、マインドが変わったんです。環境を変えなくても意志や思いがあれば、旅をした時のように自分が進化できるんだなと実感しました」

因果関係は不明だが、気づきを得たステイホームが明けてから、仕事のオファーが殺到しているという。

「旅も仕事もそうですが、『自分がどういう思いを持って挑むかですべては変わるよ』『頑張ればミラクルが待っているよ』と、昔の自分に言ってあげたいです。これからも、見たことのない世界を見続けていきたいと思っています」

恋人がもし全部を計画してくれる人だったら、されるがままに乗っかってみます。でもそのなかで、かなりの自由行動をするとは思いますけど(笑)。


Marika Matsumoto

1984年東京都生まれ。2000年、テレビドラマ『六番目の小夜子』でデビュー。’18年、ドラマ『ホリデイラブ』で演じたヒロインの夫の浮気相手役で注目を浴びる。現在は『竜の道 二つの顔の復讐者』(フジテレビ系・毎週火曜21:00~)と『妖怪シェアハウス』(テレビ朝日系・毎週土曜23:15~)に出演している。

星のや東京
住所:東京都千代田区大手町1-9-1
TEL:0570-073-066
客室数:84室
料金:¥84,000~(1室あたり、税サ別)
施設:ダイニング、温泉、スパほか
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Text=須永貴子 Photograph=前田 晃 Styling=後藤仁子 Hair&Make-up=千吉良恵子