勝者の思考回路を育てる方法とは? ブランドプロデューサー柴田陽子『勝者の思考回路』②

営業を一切していないのに数年先まで仕事の依頼が詰まっているという「柴田陽子事務所」、通称「シバジム」。その代表であり、 今年2月に『勝者の思考回路』を刊行したブランドプロデューサーの柴田陽子さんは、「今の成功は、思考回路のおかげ」と語る。そして、「この思考回路を身につければ、どんな人も今よりもっと仕事ができるようになり、成功に近づくはず。頑張っているのにイマイチうまくいかなくて、それを会社や他人のせいにしている人や、社員をもっと成長させたいと考えている経営者の方に手にとってほしい。自己啓発セミナーに参加するより、ずっとおトクだと思いますよ(笑)」と。その真意とは――。

勝者の思考回路第一歩は「感想を持つ」こと

出口に設定しているのは、失敗や諦めるではなく、成功をはじめ“前向きなもの”。そんな「勝者の思考回路」を育てる第一歩は、「感想を持つこと」だと、柴田さん。

「経験が人を育てるとよく言われますし、私自身、ピンチを含めさまざまな経験をし、そこから得たものは多々あります。かといって、特殊な経験がなければ今の自分はないかと問われれば、答えはNO。勝者の思考回路を身につけられるかどうかは、経験の多寡ではなく、『何を思い、何を感じるか』。むしろ、感想のない経験など無意味だとすら言えます」

彼女が、感想を持つことの意味に気づいたのは20歳の時。三宿のイタリアンを訪れた際、友人が発した「空いているね」という言葉がきっかけだった。それを聞いた柴田さんの頭には、「なぜ空いているんだろう?」という疑問が浮かび、それが引き金となり、「それはメニューが高すぎるからかも」、「入り口が暗いからかな」と続き、「入り口を明るくするには、どうしたらいいんだろう?」、「改装するとしたら、どのくらいの期間がかかるのかな」「改装費用はいくら必要?」「改装したことで、お客さんはどれくらい増える?」と、1分間で21もの“?”が生まれた。

「友人のひとつの“気づき”を発展させていったら、21もの“気づき”や“感想”が出てきたのです。それは、雷に打たれたような衝撃でした。その時一緒にいた友人たちは、私よりずっと成績が良かった人ばかりだったけれど、一生懸命頑張れば、平凡な私にだって、こんなにたくさん気づくことができ、感想を持つことができるんだって」

「?」と「!」をつなぎ、思考を途切れさせない訓練を

これを毎日1回、365日続ければ、きっと自分は成長できるはず。そう思った柴田さんは、以来ずっとこれを習慣にしているという。ポイントは、「?」と「!」をつなぎ合わせ、気づきと感想を途切れさせないようにすること。

たとえば、ひとたび声を発すれば、その場にいる誰もが注目するようなカリスマ的人物についてなら。「なぜ、この人がしゃべると、みんなが注目するんだろう?」と疑問を持つ。そこから、「どんな特徴があるんだろう?」、「声にハリがあって、明るい印象があるからだ!」「わかりやすい言葉を使っているからだ!」、「どうすれば、そういう声が出るのかな?」、「どういう言葉だと、わかりやすいのかな?」、「発声練習をすれば、効果があるかも!」「カタカナや熟語ではなく、話し言葉を使えばいいんだ!」、「発声練習は、どこで学べるのかな?」、「こういう言葉なら、どう言い変えればいいのかな?」といった具合だ。

「もしも自分の考えが途中でつきてしまったら、自分が尊敬したり、憧れている誰かに成り代わったつもりで考えてください。『経営者なら、コストのことを気にするだろうな。その会話教室に通うことで、どれだけ費用対効果が見込めるんだろう?』。ほら、これでもうひとつ生まれたでしょう? そうやっていくと、“私”という限られた経験しか積んでいないひとりの人間から、いくらでも気づきや感想、考えが引っ張り出せる。それに、これを続けていくと、『今日は、“気づき”が少ないな。なぜだろう?』と、自分を客観視し、今抱えている問題を見つけ、改善することにも役立つようになります」

「もし私だったら~」という発想が、仕事も人間関係にも生きてくる

あるものに対して、「?」と「!」をつなぎ合わせ、答えを導き出す。それは、柴田さんが手がけているブランディングそのものにも思える。そう考えると、まさに天職だ。

「ブランディングとは、クライアントが『こういうイメージを持たれたい、こういう感想を持って欲しい』というリクエストに応じて、世の人々にそう思ってもらえるように仕向ける仕事。企業やプロダクツに“感想”をとりつける道筋を考えることですから、私が最も得意としていることかもしれませんね。

思い返せば、子どもの頃から『私だったら~』と考えていました。たとえば、『私がマリー・アントワネットだったら、どうやって処刑を免れたか。革命家ともっと話をすれば良かったのかとか、国民の反発を買わないように贅沢をがまんすればよかったのか』なんて(笑)。

今、私には8歳と10歳の息子がいますが、彼らにもいつも問いかけています。『今、新型コロナウイルスのせいで、外出自粛が叫ばれているよね。みんなが外に出ないと、どんなことが起きると思う?』とか。どんなことも、当事者意識を持ってほしいと思っているからです。これが身につくと、世の中のニーズをつかみやすくなりますし、何より、人の心を想像できるようになれば、仕事はもちろん、人間関係にもプラスになりますから」

そう、柴田さんはふたりの子どもを持つ母でもある。最終回は、母として、妻としての生き方についても語ってもらおう。

③に続く

Yoko Shibata
1972年、神奈川県生まれ。大学卒業後、外食企業での新規業態開発担当や化粧品会社でのやサロン業態開発などを経て、2004年「柴田陽子事務所」を設立。ブランドプロデューサーとして、コーポレートブランディング・店舗プロデュース・商品開発など、さまざまなコンサルティング業務を請け負う。携わった仕事に、2015年ミラノ国際博覧会における日本館レストラン、パレスホテル東京の7料飲施設、ローソン「Uchi Café SWEETS」、東急プラザ渋谷などがある。自身で立ち上げたアパレルブランド「BORDERS at BALCONY」のディレクターも務める。


勝者の思考回路 成功率100%のブランド・プロデューサーの秘密 
柴田陽子 著
¥1,650 幻冬舎 


Text=村上早苗 Photograph=江藤義典